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初めてのオーロラ アラスカ旅行記3

あっちに見えるよ、と教えてもらった方を見ると、遠くの山の木々が黒い影になっていた。その上に、うっすら雲がかかったような緑色が見えた。あれがオーロラか。初めて見た想像していたカーテンのようなダイナミックさはなく、薄く、ようやく見える、くらいのものだった。たまに少し濃い色になって、来るかな、と思うとまた薄くなってしまう。

目をこらしてみていたら、すぐに消えてしまった。その時間はもう出てこないようだったので、部屋に戻った。その日はそれで終わりだった。

次の日の朝、起きてもまだ外は暗かった。まだ早朝かな、と思ったら、8時は過ぎている。12月のアラスカは夜が長い。9時過ぎてようやくだんだん明るくなってくるくらい。暗い中、ダイニングで他のお客さんたちとパンケーキとベーコンと卵の朝ごはんを食べた。コーヒーと紅茶、牛乳、シリアル、オレンジジュースもある。アメリカでの初めてのごはん。パンケーキも卵もおいしかったけれど、ベーコンは硬くて脂がたっぷりで、脂身が苦手な私には合わず、残してしまった。部屋の隅にある大きな冷蔵庫は自由に使えるので、その日の午後にはスーパーでサラダとヨーグルトを買ってきた。野菜があるだけで朝ごはんが充実して嬉しい。

食べ終わって窓から外を見ると、遠くの空が少しずつ明るくなってきていて、ロッジの入り口の階段の手すりに並べられたいちごを、小鳥が食べていた。こんなに寒いのに小さな鳥が元気に飛びまわっている。しばらく小鳥を眺めてから部屋に戻り、身じたくをして出かけることにした。

明るくなってきても、まだ日は出ていない。車を走らせるうちにどんどん明るくなり、太陽の光を感じられるようになった。雪が降っていないのに、風が吹かないからか、気温が低くて溶けないからか、木は真っ白。その木に積もった雪に光が反射し、すべてがきらきらと輝いている。夜の時間が長かったから、朝が来た!という太陽の有難さがすごい。そして、長い朝からそのまま夕方になる。朝と夕方の空が好きな私には、オレンジ、青、水色、紫、ピンク、グレーが時間によって絶妙に混ざり方を変えていくアラスカの空は、いつでもどこでも絶景だった。長く続く夕方の空の色は、ボリビアで見たウユニ塩湖の明け方の空とも似ていた。

その日はビジターセンターやスーパーに行ったのだと思う。写真を見返してみても、マメに写真を撮る習慣がなくてあまり思い出せない。スーパーで売っている肉の量とか、シリアルの袋が大きすぎて犬のエサかと思ったこと、夕食を食べる場所をうまく探せなくて味がまあまあなギリシャ料理のお店に入ったことは覚えている。(その時はちょっと残念な気がしたけれど、過ぎてみればそれもよい思い出。)スーパーにはお土産コーナーもあって面白かったし、朝ごはんのサラダや飲み物も調達するため、毎日数軒をはしごした。


さて、2夜目のオーロラは。


夜、部屋にいるとオーロラコールが来た。暖かくして外に出る。

昨日の夜と同じ、遠くの木の影の上に、昨日よりも濃くはっきりした緑のもやもやが。と思ったら、それがぐーんと伸びてきて、みるみるうちに私たちの頭の上まで広がった。空いっぱいのオーロラ。すごい、こんな風に出てくるんだ!

もっとはっきり、もっと明るく、と思うと、ぼんやり霞んできてしまう。期待しないように、ニュートラルな心でいようと思うけれど、難しい。もう今日はこんな感じかな、昨日よりもダイナミックなオーロラが見られたからよかった、と諦めるとまた少し濃くなったりする。オーロラとの駆け引き。

そのうちに煙のようなオーロラは夜空に溶けていき、見えなくなった。





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