TOEICの凋落?
TOEICの受験者数減少が止まらない
ここでは特にTOEIC Programの受験者数の大半を占めるL&R テストを取り上げるが、2015年度をピークに受験者数の減少が止まらない。
団体受験となるIPは受験者数は企業、学校とも横ばい、ないしは微増であるが、公開テストの凋落ぶりは明白である。コロナ後に多少戻ったが、2021年を境に、学生で8万人、社会人で6万人減少している(以下、グラフ参照のこと)。なお、データはTOEIC Program DATA ANALYSIS 2021から2024年版を元に私自身が集計している。
なぜなのか。この点、正直分析が進んでいないが、「TOEIC離れ」が静かに進行している気配は確かである。
ビジネス英語テストは利便性と受験料の闘いか?
別の視点からこの事象を考えようと、ビジネス英語テスト市場で蠢くプレーヤーの状況を調査した。具体的には、VERSANT, プロゴス, リンガスキルビジネス、GCAS, TOEICである。TOEIC以外は、どのテストも受験者数を具体的に公表していない。しかし、各社テストの仕様をみると、TOEICと真逆の戦略を取り、勝負をかけようとする姿が見えてくる。ポイントは利便性と受験料ではないか。
ここでいう「利便性」とは、
・24時間いつでもどこでも受験可能か(わざわざ試験会場に出向くのか)
・PC,スマホ、タブレット等どのメディアでも受験可能か
・テスト時間は適切か
・結果通知は迅速か(1週間、2週間も待たせるつもり?)
「受験料」はあえて定義する必要もないだろう。別の言い方をするならば、重厚長大か、思い立った時にサクッと受けられるテストなのかの違いかもしれない。
以下、詳細なデータの提示、分析の詳細は割愛するが、「利便性」と「受験料」を軸に、各社テストをマトリクスで私なりに比較すると、以下のようになる。
TOEICの受験者数が復活する積極的な理由は見つからない
TOEICは「利便性」と「受験料」の2軸で他社テストと比較すると、とても分が悪い。TOEICはわざわざ試験会場に赴かねばならない。ないしは会社で決められた時間に受ける必要がある(他のテストはオンライン24時間)。
また、受験料は2技能同士、4技能同士で比較すれば割高、1技能同士でも明確な優位性はない。しかし、これだけでは「公開テスト」の減少者数は説明しきれないのが辛い点だが、上記の点を考えると、次の一手がない限り、TOEICの受験者数が復活する積極的な理由は見つからないとも言える。
VERSANTなどは、4技能で9900円のVERSANT English Certificateを新サービスとして展開している。TOEIC L&R(2技能)の7810円に2000円足せば受験でき、正直お得である。しかも、オンライン24時間受験可能である。TOEICの悩みは尽きないであろう。
しかし、TOEICを運営するiibcの財務状況を確認したところ、盤石である。この2年は利益が出ており、資産も増加傾向にある。なんといっても、資産の70%は現金・預金だ。万が一、大災害が今起きて収益が入らなくなっても、9か月~10か月程度は職員を食わしていける団体である。私なら次の一手のために投資を考えるが、ETSとの調整も難しいのかなあ・・・
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