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【連載小説】1989 From far east #1-1 ブルガリア・ソフィア

かすみ、っていいます。

霞を食って生きてるとはよく言ったもの。というほど大したことではないけど。
立派な企業に勤めているわけでもなく、色んなお仕事を転々として、ちょっとお金が貯まっては仕事休むか辞めるかして、旅に出てた。

でも英語は全然できない。もはやミステリー。

フランスが好きだったから、フランス語はちょっぴり。
以前はフランスばっかり行ってた。

そうそう。フランス人の友達が私の名前を発音する時に、微かに「キャスミ」ってなるアクセント「Ka」の発音が好き。ふふ。

私、誕生日が1989年11月9日。
そう、ベルリンの壁が壊れた日。
だから…だからってわけでもないけど、東欧はなんだか惹かれてる。

今回もいくつか仕事を掛け持ちして貯めたお金で、しばらく旅に出ることにした。

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「ブルガリアってヨーグルトの? 他に何かあるんだっけ」

バックパックに荷造りする私の背中で弟が言う。

「バラじゃない? バラ有名みたい。あと元大関琴欧州」
「えっ?姉貴ってスモジョだったっけ?」

相撲、嫌いじゃないよ。力士って割とかわいい人多いじゃない?
まぁ、実際はチャラい人が多いってことも、相撲部屋の近所に住んでいたことあるから知ってるけどね。

弟は海外には全く興味がない。だからブルガリア=ヨーグルトでしかない。
私はそれプラス、バラと琴欧州ってことは知ってるよ。

成田からカタール航空でドーハ経由、ソフィア行き。
東欧~中欧を周る旅。あ、もちろんベルリンの壁にも挨拶しにね。

今回はさらに、東欧革命について自作したプチノートを持っていく。

ブルガリア。
1989年11月10日、政権交代。
1954年にジフコフが共産党書記長となり、以降35年に渡る長期政権を担ってきた。
ベルリンの壁崩壊後、ゴルバチョフと連携したムラデノフ外相がジフコフを辞任に追い込み、一種のクーデターが成功。
1989年の東欧革命においては他の国と違い、民衆の力によって民主化に至ったわけではない。[1][2]

そのせいか、革命史においては、ちょっと地味かもね。
とりま、ヨーグルトとバラと琴欧州の故郷として楽しむことにする。

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ソフィア空港。Летище София.
ソフィアは盆地で、空港からはПланина Витоша(ヴィトシャ山)の美しい嶺が見える。
というか、田舎だね…。

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空港から市内へはメトロが直結している。なんて便利。

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空港の床には色分けされた、とてもわかりやすいナビゲータがあるので、そのとおりに進んでいけばOK。なんて素晴らしい。
日本以外でこんなに親切で見やすくてわかりやすくてきれいなナビゲーションのある国があることに驚いた。

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しかもブルガリアですよ、ここは。

一旦外に出て、すぐ左手にメトロの入口がある。

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「Един ден билети моля(一日券ください)」とキオスクに告げる。
ブルガリア語なんて初めて発音したけど、ちゃんと通じた。
M1号線でСердика(セルディカ)駅まで行き、M2号線に乗り換え(Сердика2と駅名が変わる)、ホステルのあるНДК(エンデカ)駅までは1駅。

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メトロ自体新しいのか、どこもきれいな駅だった。

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НДК駅を出ると、南北にбул.Витоша(ヴィトシャ大通り)が貫いている。メインストリートのようで、通り沿いにはカフェやレストラン、ショップが並んでいる。
中でもカフェは「おっ」と思うオシャレな店が多かった。

なんだソフィア、垢抜けてるじゃないですか。

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市内は英語表記もそこそこあるので、それほど心配しなくても大丈夫そう。ただ余裕があれば、キリル文字の読み方は覚えておいて損はないかな。
発音してみて「あぁそういうことね」ってことはある。
キリル文字を使う国は意外と多い。
まぁ今回の旅ではブルガリアだけだけど。
いつか偉大なるロシアも絶対行くだろうしね。

通りの北にはКатедрален Храм"Св.Неделя"(聖ネデリャ教会)があり、南には駅名にもなっているНДК(Национален Дворец на Културата・国立文化宮殿)がある。
НДКは近代的な建物。

ま、ソフィア市内観光は最終日を予定しているので、初日は移動の疲れを癒やすためにさっさと宿に籠もる。

ホステルはこの通りから少し脇道に入ったところ。

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右手の門から入って奥に入口だったんだけど、わかりずらかった…。

ひとまず荷物を下ろして、今夜はスーパーで惣菜で済ますことにする。日が暮れると街灯は派手な明るさがなく、まぁちょっと女一人では、しかも初めての国では、ちょっと警戒しておこうと思い。

あぁ、ブルガリアにも私の大好きなайран(アイリャンまたはアイラン)がある。
嬉しい。日本では売ってない(が簡単に作ることは出来る)から。
要は塩味の飲むヨーグルト。初めて飲んだのは…イラン大使館がやってたバザールに行った時だったかな。

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私は海外の、ちょっと「え・・・」っていう食べ物や飲み物が比較的好きだ。
例えば北欧の、お肉にジャムとか。そういうの。
ただしゲテモノはアウト。
あと臭いものと虫もアウト。
実はお腹が弱いっていう…。

惣菜を食べながら部屋のTVを付ける(たまたま1人部屋が空いていた)。
TVはTOSHIBAだ。
海外でTVって行ったらSAMSUNGなイメージだったので、ちょっと嬉しくなったせいもある。
3人のキャラ濃い男性が、エラそうな態度で出演者が作った料理を食べてなんだかんだしている(ブルガリア語はさっぱりわからないが、少し耳に馴染んでいるスラブ語の発音が聞こえる)。
しかしキャラが濃い&お料理とあって、言葉はわからなくてもなんだかすごく面白い。

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ネットで調べたら「Master Chef Bulgaria」という番組らしい。へぇ。Youtubeに上がってないかな。
また観たい。

さて、明日は朝から、ここじゃない別のホステルから出発する、リラの僧院 One day tripに参加する。
普段は朝は激弱だけど、旅行中は平気。とはいえそこそこ気力も体力も使うだろうから、今日はここで。

おやすみ。



#1-2へつづく

[訪問時期]

2016.05.02~05.05

[参考資料]

  1.  世界史の窓・ブルガリア

  2.  Wikipedia 東欧革命・ブルガリア

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