「その他」という「私」

「初めまして」

昔から、自己紹介というものが苦手だった。

いつだって、好きなものはそれなりにあったけど、冷めやすい私はすぐに飽きてしまうから、なんだか言いづらかった。

何より、初めて会った自分の好きなものの話をして、もし、笑われでもしたら立ち直れない。・・・たぶん、それが1番怖かったのかもしれない。

それは、大人になった今も変わらない。

いや、大人になったからこそ、余計に苦手になってしまったのかもしれない。なんの特徴もない中途半端な私。

31歳。
女。独身。
趣味。特になし。
身長。体重はフツー。
年収。そこそこ。

そして、職業は・・・「その他」

正社員でもなく、パートでもない。もちろん経営者でもない。公式の書類上では「フリーター」にでも振り分けられるのだろうか。

きちんと調べれば、自分が何に分類されるのかわかるのだろうけど、いまいちそんな気分になれなくて、ずっと調べていない。


「ご職業は?」


そう聞かれる度に私の心はざわつく。「その他」という私の職業名は、なんだかまるで「価値がない」と言われているような気がして、たまらなくなる。

だけど、自分で選んだ道。

変えようと思えばいくらでも変えることができるのに、変えるという選択をしてこなかった。

そして、明日もまた私は仕事に行く。

変えようと思えば変えることができるのに、変えようとしないということって結局、本当は、そんなに気にしてないってことなのかもしれない。

いつか笑って、こう答える日が来るような気がしてる。


「初めまして。え、仕事ですか?「その他」です」



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