本音と建前
なんとなく気乗りしない月曜日。
春物のブルゾンを羽織って軽快に駆け出す女の子を横目に、
私はからし色のタートルネックに顔を埋める。
なんだか、自分だけ冬に、取り残されたみたいだ。
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特になにがあったわけでもないのに、
何もしたくないし、
誰とも話したくない。
授業だってしたくないし、
子どもが別に好きなわけじゃないし、
好きなアイドルだとか
好きなものだとか
正直、興味はない。
なんでこの仕事、してるんだっけ?
無駄にうるさい革靴の音も、
生徒たちの大きな笑い声も、
上司のおもしろくない冗談も、
あぁ、もうなんだか全てが煩わしい。
そんな冷えっ切ったホンネを、授業というタテマエで隠しながら、
今日も私は、授業をする。
誰かと話したい日だってあるし、
誰とも話したくない日だってある。
たぶん、
人が生徒が、好きだと思っているけど
ずっといるのは、正直しんどい。
そんな矛盾だらけの自分に気付く度、
恐ろしく冷え切った自分のホンネに触れる度、
なんで私は一貫性がないんだろうと、自分が嫌になる。
けど、ずっと何かを続けられる人もいれば、
そうでない人もいる。
どっちがいいとか、
どっちが悪いとか、
そういうんじゃないのかもしれない。
無理をする必要なんてないし、
そんな自分を否定する必要はもっとない。
だって、全部「私」だ。
どんなホンネだろうと受けとめていけばいい。
それに自分が思っている以上に、
そんな私を周りは受けとめてくれいるのかもしれない。
***
「冷たいのが飲みたかったのに、持ったら熱くてー!」
「いや、ほんとバカですよね??」
アイスコーヒーとホットコーヒーのボタンを
押し間違えた話を無邪気にしている生徒たちの背中を見送りながら
自然と、笑みがこぼれた。
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