「使える知識」はどうすれば身につくか 〜『私たちはどう学んでいるのか ー 創発から見る認知の変化』を読んだ
『私たちはどう学んでいるのか ー 創発から見る認知の変化』を読んだ.「使える知識はどうすれば身につくんだろう」という点について,認知科学の専門家が知見をまとめてくれており,大変参考になった.教える人も教わる人も参考になる内容だと思う.
ざっと要約すると,「知識は属人化するものだし文脈依存性があるものなので,簡単に教えたり教わったりできるものではないよ.だから,受動的な学びだけでなく対話や試行錯誤をとおして身につけよう」って感じ.
知識は,簡単に教えたり教わったりできない
知識は簡単に教えたり教わったりできるものではない.これは,知識というものが本質的に属人化するものだから.知識は個人の身体性をともなう体験により生まれる.ドリアンを食べたことがない人に,ドリアンの味や臭いを伝えることは難しい.わかったという経験もその人ならではの経験のため,わからない人に教えることは難しい.よって,受動的に教わるより,都度わからないことを質問できる,対話形式のほうが学びが深まりやすい.
知識は,簡単に応用できない
知識には文脈依存性がある.知識は使う場面や状況とセットであるということだ.英語の読み書きができても話せないのは,知識を使う文脈が違うためにおきる.これは相手の発話というトリガーと文章作成が結びついていないためと考えられる.このように,書くと話すという,似たスキルでも応用が効かないのが知識の性質である.そのため,本番に近い環境で知識を使うようにしないと,使える知識は身につかない.「習うより慣れよ」は,知識の本質を捉えている.
学校教育と徒弟制のどちらが「使える知識」が身につくか
「現在の学校教育」と「徒弟性」の比較はとても興味深い.学校教育が教えることを細分化して教えるのに対し,徒弟制では師匠は最終成果物の良し悪しのフィードバックだけで,細かい指導はしないそうだ.細かい部分は,師匠との生活を通して,自分の肌身で感じて,課題を発見して,試行錯誤することで身につけるそうだ.
ただ,徒弟制のような「発見学習」のスタイルはどうしても知識に偏りや穴できてしまう(R).そのため,「細分化して体系的に教えるスタイル」と「肌身で課題を発見して試行錯誤するスタイル」の特徴を理解しバランス良く活用することが大事そう.
おわりに
「わかりやすい文章」を書けるようになりたいと思っている.けど,「わかりやすい文章」は,読者にとってはあまり役に立たないのかもしれない.「わかりにくい文章」を,自分の言葉に翻訳しながら理解するほうが,使える知識が身につきそうだ.わかりやすさを犠牲にして,自分に属人化した言葉で表現したほうが,かえって読者の役に立つのかも知れない.
以上です.最後まで読んでくれてありがとう.
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