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雨降って地固まる。ストレスにさらされてエンゲージメント高まる。

今日は『ソーシャル物理学 - 「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学』(著:アレックス・ペントランド)より「ストレス下の組織はエンゲージメントを高める」を読みました。

「エンゲージメント」とは「繰り返し行われる協調的交流」を意味します。「エンゲージメント調査」などで耳にすることが多いですが、いざ説明しようとなると難しい言葉かもしれません。

では、エンゲージメントはどのように生まれるのでしょうか。著者は一例として「ストレス環境」を挙げています。「雨降って地固まる」を借りれば「ストレスにさらされてエンゲージメント高まる」と言えるかもしれません。

エンゲージメントのプロセスについて考えてみよう。エンゲージメントによって新たな組織内の習慣が生まれ、その習慣を身につけるよう促す社会的圧力も生じる。何らかの変化に直面した場合には、組織は新たな環境に対応するために、新しい交流の習慣を生み出して定着させなければならない。

定常的に安定的に動いているシステムの中で物事が滞りなく進んでいく状況では、他者と積極的に交流せずとも、システムが情報やアイデアを吸い上げて、半ば自動的に課題が解決されていく。

「積極的に交流しよう」「組織に横串を刺そう」と伝えたとしても目立った効果が得られない気がするのは「どのような環境に置かれているか」という前提条件が捨象されているからのように思います。交流のパターンが変わるように、自らを取り巻く環境を変えること。それがエンゲージメントの秘訣なのかもしれません。

システムが変わる、あるいは崩壊する。これまでの環境に内在していた秩序が乱れるため、安定した動き・流れを取り戻そうと、新しい秩序を作る必要が生じます。新しい秩序の形成を「明示的・暗黙的な合意形成」と考えれば他者との交流は不可欠であり、もし交流がなければ人それぞれがバラバラの判断、行動をとるため無秩序・混乱状態が続いてしまいます。

新製品や新しいコンピューターシステムの導入、社内の組織改編などがあると、皆の仕事に変化が生じる。そして誰と誰が協力して働く必要があるか、各自の仕事の詳細はどうなるのか、仕事をどうやって分担すべきか、改めて考えなくてはならない。つまり迅速に新しい習慣を創造して定着させなければならず、したがって組織内のエンゲージメントを高める必要性がより大きなものになる。

「迅速に新しい習慣を創造して定着させなければならない」

新しいシステムの導入や組織再編の他、離職も新しい交流を促す力になると思います。特に属人化している場合には、離職者の業務内容をマニュアル等に落とし込み、形式知化して誰かが引き継がなければ大きな支障が出ます。

その過程では「何をしているのか」「なぜそうしているのか」「もっとこうすればいいのではないか」等の質疑応答を通して相互理解が進めば、それが新しい交流パターンを生み出す可能性があります。

大きなストレスにさらされると、組織内ではすぐさまエンゲージメントのレベルが上がり、何をすべきかを見出すために人々が会話を始める。そして新たな状況によりふさわしい、新しい交流のパターンをつくり出す作業が始まるのだ。後には、交流のネットワークを変化させることが、ソーシャルネットワーク・インセンティブのように機能する。つまり、ストレスを軽減したいという意識が新しい交流パターンの生成を促すのである。

「ストレスを軽減したいという意識が新しい交流パターンの生成を促す」

この一言、とてもよく分かります。何かの変化があった時、自己解決できることであればよいのですが、えてして自己解決できる範囲を超えている場合は、「何とかしなければならない」という心理的ストレスを軽減・解消するために、他者と問題意識を共有することが重要だと思います。

常にストレス過剰ではネットワーク自体が疲弊、崩壊につながる可能性が高まります。ですので「適度なストレスを付加する」こと、言い換えれば、
「ストレス調整力」が、そのネットワークを持続可能なものとするか否かの分かれ道なのかもしれません。

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