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「環境も観察の対象である」ということ

今日は『植物は<未来>を知っている 9つの能力から芽生えるテクノロジー革命』(著:ステファノ・マンクーゾ 他)から「イギリスの貴族を魅了したオオオニバス」を読みました。

植物は自身が置かれた環境に適応する。動物は自ら動くことができるから、問題に直面したときには「回避」という形で対処ができる。一方、植物は自ら動けないため、「適応」という形で直面した問題解決に注力します。

今回紹介されている「オオオニバス(大鬼蓮)」は、適応的な進化により、巨大さ・頑丈さを兼ね備えました。

オオオニバスの葉は水面を覆い尽くして水上植物が生える隙間をなくし、水中の植物に降り注ぐ光を遮ります。また人が葉の上に乗っても全く沈まないのです。

その画像は、布地や書物や壁紙にも印刷され、この花の蝋製の複製品も流行する。巨大な葉の上に子どもが乗っている写真は、このエキゾチックな水生植物への好奇心をさらに刺激した。途方もない重量に耐えられる葉の構造が専門家の注目を集めたことはいうまでもない。重さが四五キロもあるものをのせても、破れたり変形したりすることなしに葉一枚で支えることができるなんて、いったいどうやって? この驚きの特徴を人工的に再現できるかどうかに、とりわけ関心が集まった。

重さが四五キロあるものをのせても、破れたり変形することがない。にわかに信じ難いですが、事実なのです。その原理が分かれば、応用が可能です。重たいものを支える…どのような場面が思い浮かぶでしょうか。

水に浮かんでいるということは「浮力」が働いているわけですが、それほどまでに大きな力を生み出すことができるのは、ただただ驚きです。

オオオニバスの葉は、縁が反り返った大きな丸いトレイのような形で、直径が二メートル半になることもある。静かな水面の下のほうにまで長い茎が伸び、茎は泥のなかに埋まっている。葉の表面はワックスでコートされ、水に濡れると水滴がすべり落ちる。裏側の葉身は赤紫色で、棘が生え、捕食者の魚や哺乳類のアマゾンマナティなどから葉を守るのに役立っている。葉脈のあいだに溜まった空気によって、葉は水面に浮かぶ。

「葉脈のあいだに溜まった空気によって、葉は水面に浮かぶ」

浮力は「物体の重さに関係なく、(水圧の差として)体積だけで決まる」わけですが、それだけで人間の重さを支えることは難しいと思いました。空気の力も使って葉を支えているのは面白いですね。目に見えない部分に秘密が隠されている。

葉に水が溜まったら下に沈む力が増しますから、水がたまらず流れてゆくようにする。生物からの捕食に耐えるために棘を生やす。

雨風などにさらされても簡単には沈まない。「水面が穏やかな状況で浮かびさえすればよい」ということではなく、撹乱が生じても耐え抜くために進化したとすれば、とても合理的です。

「ある対象だけでなく、その対象を取り巻く環境も観察の対象なのだな」とふと思ったのでした。

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