Flow(流れ)とSlow(遅さ)。
昨日は『ソーシャル物理学 - 「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学』(著:アレックス・ペントランド)より「社会物理学とは何か」を読みました。
「情報やアイデアの流れ」に意識を向ける。その流れに変化を生み出せば、その変化がネットワーク全体に伝播して大きな変化が生まれる。人間は「社会的な生き物」と言われますが、人間社会は人と人の「つながり」でできている。そのつながりの中で様々な交換が行われます。交換の対象はモノだけではありません。感情や情報など、多岐に渡ります。
物理学というと「物体・物質」を思い浮かべますが、それらを「人間」に置き換えると、どのような世界が見えてくるのでしょうか。
人間は自らが置かれた環境の制約を受けながら、自律的に行動しています。環境との相互作用、力学の中で思考、判断、行動を重ねている。そして、制約条件を自らに望ましいように変えてゆくこともできる。
社会的な相互作用・力学を「情報やアイデアの流れ」を通して捉える視点が非常に興味深いです。
自らの生産性や決断も、自分が埋め込まれたネットワークの力学によって決まっているのかもしれません。高い圧力がかかった状態で何かを判断するのと、リラックスした状態で判断する場合とでは、結果は異なるかもしれません。
あるいは、他者からの情報やアイデアが伝わりにくい関係にあるとすれば、より望ましい判断を下せないかもしれません。(もちろん、他者の意見や情報を何でも受け入れれば良いというものでもありませんが)
株のデイトレーダーの間でSNSを通した情報交換の機会を与えると何が起こるのか。著者がMITラボ主導で実験したそうです。結果、デイトレーダーはお互いの行動に過剰反応し、株の売買で全員が同じ戦略を取りやすくなる(ハーディング現象、群集行動)が起きました。
相手を過剰に模倣してしまう結果、思考・行動の同質化が起こってしまう。「過剰な情報やアイデアはノイズになり得る」ことを反脆弱性の概念の中で学びましたが、自分が触れる情報やアイデアの量を適度に調節しなければ、システムとして脆くなることにも通じているように思います。
流されすぎないように、惑わされないように。自分を取り巻く流れの速さが加速し続ける現代社会において「流れを遅くする」ことに意識を向ける。
Flow(流れ)とSlow(遅さ)。