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「実現可能性」だけ見ていても、ものづくりのイノベーションには繋がらない。

株式会社スリーハイでは、神奈川県立綾瀬高校の「総合的な探究の時間」の授業協力をしています。

この授業は約半年という比較的長期間、私たちスリーハイが抱える5つの経営課題を「スリーハイ綾瀬高校支店」の2年生社員323人に解決してもらおうというものです。2023年度中実施予定の全9回の授業予定のうち、今回は第7回目の授業の様子をお伝えします。

これまでの授業と全体の流れ

第1回〜第3回までの授業では、探究学習全体の概要説明やスリーハイの事業や商品の説明、マーケティング基礎などの基本的情報をインプット。第4回はスリーハイ担当社員5名が各部署にて詳しい説明を実施。第5回はその内容について各班にて他社事例などをまとめる「現状把握」。第6回は「ワールド・カフェ」という方法を用いて「現状把握」の結果でてきたアイディアを発散させる取り組みをしました。

◆2023年11月27日の第1回目授業のレポートはこちら(体育館での全校集会スタイル。登壇者:NPO法人SoELa岡部さん、株式会社スリーハイ代表男澤)

◆2023年12月11日の第2回目授業のレポートはこちら(体育館での全校集会スタイル。登壇者:株式会社スリーハイ代表男澤)

◆2023年12月18日の第3回目授業はマーケティング講座(オンライン開催。登壇者:NPO法人SoELa 佐藤さん)

◆2024年1月15日の第4回目授業は現状把握(株式会社スリーハイ担当社員が5名来校し、5つの部署ごとにクラスに分かれ課題を解説)

◆2024年1月22日の第5回目授業は、生徒と先生による現状把握

◆2024年1月29日の第6回目授業は、生徒と先生によるアイディアの発散

第7回の授業の内容はこちら。※2月5日は大雪の影響で授業が休講になったため、1回ずつ日程がずれることになりました。

第7回授業「アイデアの収束」

2月5日は大雪の影響で授業が休講、さらに高校入試期間を挟んだことにより、前回第6回の授業から、約1ヶ月間あいての再開になりました。

生徒さんたちも、久しぶりに模造紙を前にして「今まで何をやっていたっけ・・・?」と、思い出すのが少々大変そう。しかし、授業が始まれば活発な議論がスタートしていました!

私が教室にはいると「あ!社長!」「こんにちは!」と生徒さんたちから元気な挨拶が。

今回の授業は、前回拡散させたアイディアを「収束」させ、実現可能なアイディアに落とし込む取り組む「KJ法」の実践が行われました。

アイデアの収束「KJ法」

KJ法は、断片的な情報やアイデアを効率よく整理する際に使われる手法のことです。 50年以上前に川喜田二郎さんによって提唱された考え方ですが、今でもビジネス現場で頻繁に使われています。

Shoo for Business

今日の授業は2つのフェーズに分けて議論を深めていました。

①アイディアを文章にする
これまで模造紙と付箋に広げていたのは「単語の集まり」であり、アイディアの断片でしかありません。そこで、複数のアイディアをつなげたりしながら、有効だと思われるアイディアを「〜をする。」といった文章の形に直します。

まだアイディアは断片の状態。単語の集まりであるアイディアを
「〜をする」という文章の形に整えます

②2×2法(2×2マトリクス法)を使って、有効なアイディアかそうでないアイディアか分類する

次に、文章にしたそれぞれのアイディアが「有効かそうでないか」を見極めます。フレームワークとして「2×2法(2×2マトリクス法)」を使いました。

マトリクス法とは、あるテーマについて、関連する情報を縦軸と横軸に分類して、それらの相関関係やポジショニングを考える方法です。(中略)2×2マトリクスは、シンプルですが情報整理や考えを整理するのにとても役に立つ方法で、現状の分析や今後の方向性や考え方などに使うことができます。

継続的改善B2Bマーケティング戦略


例えば、こちらは「商品開発部」の教室の黒板。模造紙の裏面を4つの区分に区切り、縦軸を「実現可能性」、横軸を「新しさ・魅力」として分類してみよう!と先生からレクチャーがありました。

商品開発部での2×2マトリックスの様子。商品開発部では実現可能性の一つの軸として「工業用かどうか=ある程度の発注数が見込めるかどうか」も考えるように先生から申し伝えがありました。
【広報部】廃材を使ったイベントの開催について。
考えたイベントアイディアを実現可能性の軸で整理し直していく。

例えば新商品開発部のクラスでは、〇〇×ヒーターという枠組みで拡散された様々なアイディアの付箋が、2×2に分類されたマトリックスにそれぞれ貼られていました。生徒さんたちも「これは採用!」「これはどうかなあ??いまいち??」とチームで賑やかに話しながら、ペタペタ付箋を貼っていっていて、楽しそう。

「テニスラケットの柄の部分にヒーターをつけたい!」という意見があり、目をひきました。その生徒さんに話を聞いてみると「私はテニス部で、冬は手がかじかんてテニスラケットがうまくにぎれないんです」とのこと。

テニスラケットにヒーター!?テニスに打ち込む高校生ならではの視点。

このアイディアはテニスラケットだけでなく、他の柄を握るスポーツにも応用できそうですよね。それに「私がテニス部だから」という、まさにユーザーそのものの人からの意見はユーザーニーズの原点であり、大事にしたい視点です!

「テニスラケットの柄のヒーター」は本当に実現できるかどうかわかりませんが、このような「アイディアを広げる」突き抜けた視点は、スリーハイのものづくりでも大切にしている点です。その視点に高校生のみなさんが自ら気がついている点に嬉しさを感じました。

(実は、スリーハイでは「ピアノの鍵盤を事前にあたためておくヒーター」はすでに商品開発済で、今回の生徒さんのように、冬場に手がかじかんでしまうピアニストのみなさんに評判です。)

アイディアを出すだけでなく、「実現可能性」を視野にいれて分類するというのは、私達大人がやるときも難しいテーマです。今回も50分の授業ギリギリまでつかって、生徒さんたちのなかで議論がされていました。

次回は「アイディアの具現化」として、今回収束したアイディアを、さらに実現可能なアイディアに昇華させる取り組みをする予定です。

これからの授業の流れ

私達大人は、狭い範囲での仕事ばかりをしているので、どうしても常識の範囲内といいますか、実現可能かどうかで物事を判断してしまいます。

そこで今回の綾瀬高校の生徒さんたちのように「産業用ヒーターとはなにか」を全く知らない人たち、無知だからこその突飛なアイディアがでることで、その「実現可能かどうか」という狭い範囲からしかでなかったアイディアが、大きく揺さぶられます。これがイノベーションに必要な視点ではないかと、私自身も改めて学びになった授業でした。

3月中に綾瀬高校支店のみなさんから現段階での提案書を出してもらい、スリーハイの各部長5人で確認することになりました。それをもとに年度がかわった4月、今の2年生は3年生になりますが、最初の探究の授業でスリーハイの各部長からフィードバックを行うことになりそうです。

さあ、今回と次回で収束させるアイディア、どのような形になるのでしょうか…。私も、5人の部長たちも楽しみにしています。

神奈川県立綾瀬高等学校

株式会社スリーハイ


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