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「すずめの戸締まり」について語る(ネタバレあり)

※この記事には現在公開中の映画「すずめの戸締まり」のストーリーについてのネタバレを含みます。ご注意ください。
※震災についても言及しております。ご注意ください。

あらすじ紹介は割愛。

「すずめの戸締まり」は、「君の名は。」とも「天気の子」とも違う世界線なのだろうと、僕は考えている。
「君の名は。」と「天気の子」は世界が繋がっているから、「天気の子」には瀧や三葉をはじめとする「君の名は。」の人物たちが成長した姿で登場する。
でも「すずめの戸締まり」にはそれらしき人物は確認できない。(もしかしたら本当に端の方とかで出ていた可能性はあるが)
とはいえ、それぞれの作品には「災害と人間」という共通テーマがある。
「君の名は。」では、彗星が落下するという災害に対して、瀧と三葉が時を超えて入れ替わりながら災害で亡くなってしまうはずの町民を救っている。
災害で失われるはずの命を救う物語だ。
「天気の子」では、世界に異常気象が戻ってきてしまうことをわかっていながら、帆高は人柱である陽菜を空の上から連れ戻してきている。
災害を受け入れ生きていく物語だ。
「すずめの戸締まり」では、震災で母を亡くしたばかりの過去の自分自身へ「あなたはちゃんと大きくなる」と、辛くても悲しくても生きていれば未来へはたどり着くと、鈴芽は伝えている。
災害の後も人生は続いていくという物語だ。
こうしてみてみると、「すずめの戸締まり」はずいぶん現実的な災害への向き合い方をしている。

鈴芽の死生観は、もはや17歳のそれではない。
「生きるか死ぬかなんて運なんだ」
きっとそれは、多くの人の死を目の当たりにし、自分自身の母を災害で亡くし、人間の命がどれだけ儚いものなのかを知っているからだろう。
死ぬことを恐れて自分にとっての大切なものを失ってしまうことの方が、彼女にとっては辛いことなのだろう。
実際、生きるか死ぬかは運だというのは、本当にその通りだ。
かの有名な飛行機墜落事故でも、事故に遭った飛行機に搭乗予定だったが予定が変更となり難を逃れた著名人もいる。
命が儚いものであるからこそ、あまり心配し過ぎず、自分の大切と思うものに向かって全力で生きることが大切なのかもしれない。
と言っても、もちろん死ぬことが容易いことであってはならない。
命は大切に。

新海誠監督の作品は、映像作品として本当に素晴らしい。
作品に込められた思いやテーマを抜きにしても、本当に表現が非常に優れている作品だ。
背景の美しさ、描写の細やかさ、そういったところに注目してみるのもよいだろう。
そして、どことなく、スピリチュアルなものを感じる。
鈴芽が実家の庭から掘り出した日記帳のシーン。
3月11日の真っ黒に塗りつぶされたページ。
あのシーンには、本当に得も言われぬ「力」のようなものを感じて、気づいたら涙が頬を伝っていた。
僕自身はあの震災で何かを失った経験はない。
家はかなり揺れ、本棚は倒れたが、僕にとっての東日本大震災は、同じ日本国内でも行ったこともないような遠い県の災害だった。
それでも、ニュースで流れていた現地の惨状や被災者の方々の悲痛な声は忘れられない。
そんなニュースの映像よりも「力」を持ったワンシーンだった。
新海誠監督の表現力のなせる業なのだろう。


ちなみにアニメーション作品にとって大切な「声」の話をすると、「すずめの戸締まり」に出てくる芹沢と「君の名は。」の主人公・瀧はどちらも神木隆之介さんが声を当てている。
鈴芽のお母さん・椿芽は、「言の葉の庭」や「君の名は。」で古典の先生として登場した雪野先生に声を当てていた花澤香菜さんだ。
やはり餅は餅屋、声優は声優、と思わなくもないが、神木隆之介さんは本当によく表現ができていると感じる。

最初はあれも語りたい、これも語りたい、と書き始めたこの記事だったが、思ったよりもうまくまとまらないので、このあたりで終わりにしておきたい。
脈絡もなく語ってしまったが、他にも頭の中にはいろいろとごちゃごちゃしている思いがある。
機を見てアウトプットしていこうと思っている。
「すずめの戸締まり」は本当にいい作品だし、いろいろと考えさせられる作品だった。
おそらくここまで読んでいる人はすでに作品を観ている人だろうと思うが、もう一度、もう二度、観て理解が深まると、一度目より一層心に刻まれる作品になると思う。
ぜひ、何度か観てみてほしい。

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