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イエスが、じーっ、と見つめている。

神を愛することは、隣人を愛すること。これは、世界のあらゆるスピリチュアリティに共通していると思う。

人と人が一緒に生きようとするとき、お互いを結び付ける「旗印」が要請されるよね。いろんな旗印があるけど、くくりとして一番大きい最大公約数的旗印は、やっぱり、神のような超越的な存在じゃないかなー。

超越的だからこそ、人種や文化や言語の違いを越えて、人と人を結び合わせられると思うんだ。

仏教では、人を助けるために施しをする主体をダーナ(दान)って言う。これって、英語で「寄付する人」を指すドナー(Donor)と同じだ。ダーナから日本語の「旦那」という言葉が生まれた。。。旦那。。。わたしを養ってくれる人。。。

今日の聖書の言葉。

みなしごや、やもめが困っているときに世話をし、世の汚れに染まらないように自分を守ること、これこそ父である神の御前に清く汚れのない信心です。
ヤコブの手紙 1:27 新共同訳

古代ローマでは、いろんな職業ごとに「コレギウム」という職能団体が組織されていた。これは、守り本尊を中心に同業者があつまって、定期的に食事会をし、会費を積み立てるもの。守り本尊が「旗印」だったわけだけど、何を本尊とするかは、団体によって違った。会費を積み立てて作った資金は、病気の会員をサポートしたり、会員の逝去時に残された妻子をサポートしたりするために拠出された。古代における互助組織だったんだ。

ローマ帝国は、クリスチャンたちを迫害したけど、コンスタンティヌス皇帝がミルヴィウス橋の戦いで、十字架の「旗印」を幻視したことをきっかけに、キリスト教を容認する方向に大転換した。

その結果、じゃあ、教会という組織を、どうやって社会の中に位置づけるか、という課題が生じた。

そこで、帝国の行政が便利につかった概念が、この「コレギウム」だった。クリスチャンたちは、キリストという守り本尊を中心に、毎週日曜にあつまって食事会をし、献金を集め、それを資金に寡婦や孤児を世話するのだから、教会は「コレギウム」の一種だよね、という形で認定されて、帝国法令で免税されたんだ。

ここから、教会が設立した修道院もコレギウム。教会が設立した学校もコレギウム。教会が設立した音楽院もコレギウム。教会の聖職者団体もコレギウム。。。教会系の団体は、なんでかんでもコレギウム、つまり、カレッジ(College)になったんだけど、おおもとには、ローマのコレギウム的な感性があった。

それは、こういう感性だ。

● 生きるには、仲間が必要だ。
● 人と人が結ばれて仲間になるには「旗印」が必要だ。
● 旗印のもとにあつまり、一緒に食事をし、お互いの健康を祝おう!
● それだけじゃなく、持ち物の一部を献げ、資金を作り、病人・寡婦・孤児の世話をしなければいけない。
● なぜなら、それが仲間と生きて行く、ということだから。

こういうローマ的な感性が存在するド真ん中に、第一世紀のクリスチャンたちが現れたわけだけど、情けないことに「自分が救われてさえいれば、それでいい。他人がどうなるかは、関係ない」と言い出すクリスチャンが、いた。

だから、イエスの弟の大長老ヤコブは、いや、いや、いや、いや、そうじゃないでしょ? という「ヤコブの手紙」を書かなきゃいけなかった。

だって、もしクリスチャンが他人を顧みなかったら、異教徒以下になってしまうもの。

ちなみに、教会が設立した学校としてのコレギウムは、中世になって、町の青果商や肉屋がコレギウムに納品する食品価格を不当に釣り上げて来たとき、複数のコレギウムで団結して対抗した。この団結はユニバーシティー(University)と呼ばれたんだけど、大学って、普遍的真理のため、というより、生活防衛のために生まれた、ってとこが面白いよね。

団結して戦うには「旗印」は、ほんと便利。でも、これからの時代、あらゆる属性を持つ人を包含できるインクルーシブな「旗印」が求められると思う。

クリスチャンたちがかかげる「旗印」は、いまも、むかしも、イエス・キリストのみ。

でも、本人のイエスは、どうしているかというと、いつのまにか変身して、貧しい人、飢えている人、旅行中の人、裸の人、病気の人、獄にいる人の中に混じり込んで、同一化している、と新約聖書は言うんだ。

「主よ、いつわたしたちは、あなたが飢えたり、渇いたり、旅をしたり、裸であったり、病気であったり、牢におられたりするのを見て、お世話をしなかったでしょうか」 そこで、王は答える。「はっきり言っておく。この最も小さい者の一人にしなかったのは、わたしにしてくれなかったことなのである」
マタイによる福音書 25:44-45 新共同訳

そのイエスが、じーっ、とわたしたちを見つめている。あなたは、ほんとうは、どういう「旗印」のもとに、生きているのか、って。

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