アイトラッキングを使ったマーケティングリサーチ
近年、MRIやVR、アイトラッキングなど、様々な機器を使った研究成果が発表されています。今回は、そうした最新技術を駆使したマーケティングリサーチの中でも、アイトラッキングに関する事例・研究を紹介していきます。
アイトラッキングとは?
まず、アイトラッキングとは、どういったものなのでしょうか?
株式会社NeUのホームページでは、以下のように簡潔に説明してくださっています。
アイトラッキングとは、ヒトの眼球運動を分析し、視覚的注意などを明らかにする生体計測手法です。ヒトの視線の場所(注視点)や動きを、アイトラッカーと呼ばれる専門の機械で計測。取得したデータを分析し、よく見られていた場所や、見る順序、反対に全く見られていなかった場所などを明らかにします(※1)。
非常に端的に表すと、特殊な眼鏡などを使い、人の視線の動きを追うことで、様々な分析に活用する手法が、アイトラッキングとなります。
実務での事例
では、アイトラッキングの技術は、マーケティングにおいてどのような場面で活用されているのでしょうか?
まずは、実務での事例として、ダイドードリンコの例を紹介していきます(※2)。
ダイドードリンコは、自動販売機で有名な会社ですが、自動販売機業界では「Zの法則」に基づいて、左上に人の視線が集まると信じられていました。
当然ながら、人の視線が集まるところに売れる製品を置いた方がいいため、主力製品を左上に置くことが良い製品配置とされていました。
しかし、アイトラッキングを使ってデータを集めたところ・・・
人の視線は左上ではなく、一番下の列に集中していたことが分かりました(※3)。
すなわち、Zの法則は企業の思い込みであり、消費者の視線が集まるのは一番下の列であることが判明したことになります。
この調査を基に、製品の陳列を見直したところ、売上は増加したそうです。
研究での事例
研究活動においても、アイトラッキングを用いた研究成果がいくつも発表されています。
例えば、2020年に発表された研究として、子供を対象に、インフルエンサーによるビデオ広告の効果を検証したものがあります(※4)。この研究では、広告を流すタイミングによって、子供たちの注意や態度が異なることを分析しました。
マーケティング研究において、子供を対象にした研究はあまり見たことがなく、そういった意味でも新鮮な研究でした。分析内容としても、インフルエンサーマーケティングに関して、非常に興味深い示唆を提示していると思います。
他にも、広告の効果を検証した論文や、意思決定プロセスを検証した論文などを中心に、国内外の研究者から様々な研究が発表されています。
2020年代においても論文が発表されており、今後もこうした研究は発表されていくかもしれません。
※1: 株式会社NeUホームページより
※2: 詳しくは、ITmediaビジネスオンラインの記事を参照ください
※3:画像は、ダイドードリンコホームページより
※4:van Reijmersdal, E. A., Rozendaal, E., Hudders, L., Vanwesenbeeck, I., Cauberghe, V., & van Berlo, Z. M. (2020). Effects of disclosing influencer marketing in videos: An eye tracking study among children in early adolescence. Journal of Interactive Marketing, 49, 94-106.
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