見出し画像

混迷する障害者手帳

 障害者手帳は、障害年金や各種制度を利用するときに必要です。
しかも、障がい者にとっては、一種の身分証明書の代わりにもなる。
だから、本人も支援者も取り扱いに慎重になっています。


 4年くらい前のこと、とある精神障がい者(30代後半)の利用者から相談があった。

「療育手帳(知的障がい者の手帳)の申請がしたい。」

・・・・・・・えっ、何で?

 というのが最初。

 だって、今は精神障害者保健福祉手帳(以下「精神障害者手帳」)を持ってるよね。それじゃあ、ダメなの?

「療育手帳と精神障害者手帳を2つ持っていると、障害年金が多くもらえるって聞いたから」

????????????

 あまり聞いたことがない。だから、調べてみた。
 でも、あまり分からない、というか調べても「絶対多くもらえることはない」と思うんだけど・・・。

 ということは本人にも伝えたが、納得せず。

 ちなみに、療育手帳は基本的に「18歳未満の児童が申請するもの」。
18歳以上の場合は以下のようになっていることが多いです。
(都道府県によって違いはあると思います。)

療育手帳について(18歳以上の方 新たに手帳を取得する場合)
 対象者が18歳以上で、新しく療育手帳を取得する場合に申請が必要となります。

交付対象者としては次の要件をすべて満たす方です。
①概ね18歳以前に知的障害が認められ、それが持続している方
②標準化された知能指数(ビネー)によって測定されたIQが75以下の方
③日常生活に支障が生じるため、医療・福祉・教育・就職等の面で特別な援助を必要とする状態の方

交付までの手続きの流れは次のとおりです。

1 次の書類を用意し、福祉課の窓口までお越しください。
・療育手帳交付申請
・交付申請資料
・写真
・概ね18歳以前に知的障害が認められたことを証明する資料 
 →この資料としては、次のものが挙げられますので、いずれかのものを各自ご用意ください。
  注意1 成績証明書(小学校4年生及び中学校2年生時のもの)
  注意2 特殊学級、または知的障害者を対象とした養護学校の在籍証明書
  注意3 担任教師、民生委員等18歳以前の本人を知る「第三者」が、本人の学業の遅れの程度等について記述したもの
・認め印
2 申請時に児童・障害者相談センターでの面接の予約を行います。
3 市から児童・障害者相談センターへ資料を送付します。
4 事前に設定した予約日において、児童・障害者相談センターで面接を受けてください。
5 児童・障害者相談センターから判定結果及び手帳が市に送られてきます。
6 窓口までお越しいただき、手帳を交付します。

 本人からは「小学校高学年のときに、もう発達の遅れがあり、通知表にも書かれていた」とのこと。

 うーん、そこまで言うのなら、申請してみようか。

 ここからが混迷の始まり。

 申請するからには、市役所行こうか。窓口にて本人と共に、担当者と話をする。

「知的の遅れがあったことを確認できる書類はありますか?」

「通知表があったけど、火事で失くしてしまった」

・・・・・・・はい?

「そこには(発達の遅れ、学習能力の遅れについて)書いてあった」
「遅れがあったので、校長室で個別に指導してくれていた」←本人談

 その後の担当者の話はこうだ。
(もっと細かいところを言っていたはずだけど、ところどころ頭がフリーズしてました)
①申請書②医師の診断書③児童相談所での判定④学生時代の先生の意見書(2人分)
 が必要とのこと。

 帰りの車の中で、また気になることを聞いてみた。

「だったら、なんで小学校の時に申請しなかったの」
→父親が手帳を申請することを拒んでいた。

 まずは、本人とどのように進めるかを確認する。
申請書・・・本人記入して、あとで相談員が確認
医師の意見書、先生の意見書・・・本人がまず連絡して、後で相談員が説明
児童相談所での判定・・・相談員が児童相談所へ連絡を取りながら、日程を調整する
 といった感じにしました。

 本音を言うと、とても面倒くさそうなので、本人に任せることを増やせば、手帳の取得を諦めるかな、とちょっと思っていましたが、本人は張り切っていました。

申請書について

 まずは、申請書原本をコピーして、本人へコピーしたものを渡し、下書きしてもらいました。
 1週間後・・・いや、3日後だったっけ。
 本人の下書きを見て、確認する。サービスを利用するために、一人で色んな書類を書いてきただけあって、要点や抑えている。自分の状況を自分の言葉で(不都合なことは書かず)書いてある。
 ただ、誤字脱字や読みにくかったり、文脈がおかしかったり、分かりにくい書き方をしているところを修正。

 何とかOKで、本人が清書。

先生とのやりとり

 まずは、本人にどの先生に連絡を取るのかピックアップしてもらいました。
 しばらくして、本人のメモを見ると、たぶん担任の先生の名前がビッシリ書かれている。ただ、名前の隣に「×」も書かれている。連絡が取れなかったり、連絡は取ったが拒否されたり、で数人に絞れている感じ。
 そして、最終的に2人に依頼するようになり、相談員がら電話する。
 案の定、本人の説明不足で改めて説明する。
 「◯◯君は、今どんな風なの?」
 「いきなり電話があってビックリしたけど、何かあったの?」
 「通知表は?」から始まり、学生時代のことを書いて欲しいと伝えるも、
「30年くらい前のことだから、覚えていないし、詳しくは書けない」
「確かにそんなような感じだったと思うけど・・・」と。
 そんなやりとりを行い、なんとか先生からの意見書も用意ができた。
 ただ、2つの意見書が届いて中身を見ても、学業の遅れのことはちょっとしか書かれていなかった(ような)。
 もちろん、先生にはお礼の電話を相談員から入れました。

児童・障害者相談センターでの判定

 相談員が日程調整をした後、訪問する。担当者の説明後、判定のため別の部屋へ。1時間くらい。
 内容はどんなものかは、教えてはくれなかったが、本人いわく「意外と難しかった」とのこと。そして、判定の後にも医師の診断があったが、ここにも同席はできなかった。
 なんとか判定も終わる。

医師の診断書について

 一番最初に書いた通り、この方は「精神障害者手帳」を所持しているので、主治医はいる。なので、その先生に事情を説明して診断書を書いてもらえればいい、と思っていた。

 が、その主治医が「拒否」。理由はというと、僕が最初感じていた疑問にも似ていた。
「療育手帳を取得する意味がない。(本人の利益にならない)」
 で、別の医師への依頼をしていくことになった。

 面倒なことをしたくなかったというか、本人の言葉で説明した方が良いと思い、医療機関の選択も本人にお任せ。

 Aクリニック・・・主治医からの紹介をしてもらったところだが、拒否
 Bクリニック・・・本人が自分で調べて連絡を取ったけど、場所が遠いのと、数回受診する必要があるため、辞退。
 そして、最後には、
 C大学病院に2,3日検査入院して、診断書を書いてもらう。
となりました。
 もちろん、大学病院の相談員さんにも事前に連絡。
 だいたい伝わっているかと思ったけど「なんで療育手帳がいるのか」は伝わっておらず、補足説明をしておきました。
 入院費等は、本人の年金から出せるから問題はなかったけれど、交通費は、本人のおこづかいから出すようにとのこと。(往復3000円くらい)
 退院と共に、診断書ももらってきたので、中身を確認。
 簡単には「知的の遅れがあるのは確かだか、軽度である」みたいなことが書かれていた。

そして、ここから・・・

 すべての書類を揃えて、市役所に提出!!
 最初に申請に行ってから、市役所に出すまで4か月くらい。
 本人も頑張った!!
 判定が出るまで、約2ヶ月くらい。

 結果はどうだったのか!

 本人宛に届いた手紙を確認すると「C判定(軽度)」とのこと。

 やっぱり・・・と思った。

 じゃあ、最初に言っていたように、年金の手続きはしたのか、
 というと本人は、結果が届いてしばらくして、サービスを辞めて、別の事業所へ行ってしまった。

 ということは、相談員はただ使われていただけ?とも思ったが、今となっては、いい勉強をさせてもらったと思っています。

 未熟だったというか、利用者の言いなりになってしまったというか、もう少し慎重になった方が良かったな。

 長文になりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?