「お薬」の魅惑

 まず、最初に書いておく。
 このコラムでは薬の専門的な知識を書くものではありません。そして、このコラムでは「飲み薬」について書こうと思っています。

 体調が悪くなったら、薬を飲む。それはだれでも同じ。ただ、これまでの経験では、福祉の利用者には色んなタイプがあると思う。

(1)薬大好き
 薬があることで安心する。薬を飲まないと不安になる。だから、色んな薬を欲しがり、溜まってしまうことがある。
 そして、溜まってしまった薬がどうなっているか分からなくなることもありうる。本人もそうだが、家族や支援者も分からなくなる。飲みすぎではないか、と伝えたときには必死に否定する。
 薬が欲しいに時は「無くなった」とウソをつくかもしれない。でも、本人の薬の状況を分かっているから、そう簡単には処方しない。「どうしても」と懇願されたときにはラムネ(お菓子)を渡し「これは効くからね。他の人に言っちゃダメだよ」と言うかもね。(プラシーボ効果という)
 また、薬の副作用や飲み合わせが悪く、もともと悪くないところも、調子が悪くなることもあり得る。でも、薬のせいとは言えない。言ってしまうともらえなくなってしまうからね。

(2)薬大嫌い
 どうしてかは教えてくれないが、薬を飲むことに拒否がある。飲んでもらおうと試して、飲んだと思っても吐き出してしまうこともある。
 また、薬を飲まずに隠したり、捨ててしまうこともある。
 薬のアレルギー(薬疹)があることもあるので薬剤師さんにも相談してみましょう。

薬をきちんと飲まない人
 医師が処方した薬を、なんらかの理由で飲み残した人は、各種の調査を平均すると30~40%にのぼると報告されています。
 薬を飲み残す理由は、①病気が治ったと自己判断した、②仕事が忙しい、③食事をしなかったから、④医師・薬剤師の説明不足、⑤薬の種類が多い、⑥薬が飲みにくい、⑦年のせいで忘れる、⑧副作用があるからなど、様々でした。
 薬を指示通り飲まない(ノンコンプライアンスという)と、病気が再発・悪化したり、場合によっては有害なこともおこります。薬に疑問や不安があったり、飲みにくい薬や飲み方がむずかしい薬があったら、医師・薬剤師に相談して飲みやすい薬に代えてもらい、正しく服用するようにしてください。医師の指示を守ること(コンプライアンス)、それが回復への近道なのです。(「病院でもらった薬が分かる 薬の手引き」より)

(3)薬なんか信じない
 飲んではくれるけれど、飲んでも体調がよくならないと思っており、別の方法で対処しようとすることもある。
 テレビや週刊誌に書かれていることを信じて、知ったかぶりをしていることもあるかな?

 僕がこれまで服薬の介助をする時に気をつけていることは「その薬は本人が納得して飲んでいるのだろうか」ということ。主治医や薬剤師と、効能・飲みやすさ(錠剤、粉薬、カプセルなど)・病歴などをちゃんと話し合っていくことだと思う。

 薬とは関係ないかもしれないが、テレビや広告で宣伝されている「健康(補助)食品」をあまり信用していない。すべてが効果がないとは思ってはいないが、頼りすぎてしまうことはある。というか、祖母が通信販売で注文しすぎて、そればかり飲んでいたら、通常の食事がおろそかになってしまって、栄養が偏ってしまったらしい。ちゃんと毎日の食事を3食とれていれば、健康食品に頼ることはしなくても良いと思っている。

 でも、もっと気をつけるのは、医者や薬剤師でない他人が薬についてとやかく言って本人を混乱させてしまうこと。例えば「その薬は効かない」「こっちのほうが良い」など。というか、そんなことをしたら主治医との信頼関係が崩れてしまう。
 人の言葉も「薬」になってしまうのか。でも逆に、人の言葉は「毒」にもなりうる(=毒舌)。聞くだけで良くなったり、悪くなったりする。

 こんなことを簡単には判断しにくいが、ふと考えた。

 主治医から「この薬は毒が入っていますが、あなたには必要です」と言われたら、利用者は飲むだろうか?

 主治医の意見をそのまま信じて「飲んで」毒に侵されるか、
 主治医の意見を信じないで「飲まない」で病気になるか。

 うーーん、困った、

 それとも、毒の種類を聞きまくり、解毒剤を用意して飲むか。でも、それは主治医を信じていないことにもつながる。また、解毒剤も「別の毒のある解毒剤」だとすると・・・。

 うーーーん、変なことを考えているね。

 でも、薬はある意味、身体にとっては「異物」になるから「毒」なのかな。  

 ・・・・・

 最後のまとめとしては、
 とにかく困ったときには薬剤師に相談!

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