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『吉田達也+スガダイロー/ROOT』 フリージャズ?否、最強のインプロヴァイズミュージックで元気をもらおう

5月のGWに新宿ピットインでスガダイロートリオを観て感激し、早速何か音源買おうとamazonをチェックしてCDを買った。
1枚は『2021 スガダイロートリオ・ライヴ・アット・新宿ピットイン』
そして、もう1枚が吉田達也さんとのデュオ『ROOT』

この吉田達也&スガダイローのアルバムが何者か分からないまま、まずこの2人なら出てくる音は間違いないだろうと注文した。

吉田達也さんといえば、泣く子も黙るインプロヴィゼーションの鬼。
フリー・ジャズというよりは、やっぱり印象はプログレ〜ロックの人だな。

Youtubeで「吉田達也 時報」で検索してみて欲しい。
ディスクユニオンの店内にドラムセットを広げ、ディスクユニオンおなじみのエプロンを着た吉田達也がROLAND SP404サンプラーを鳴らしながら叩きまくっている動画が出てくる。
2014年か。東京にいたけど、観たことなかったな。残念。


その吉田達也をドラムに対峙するピアノがスガダイロー。
先日のトリオのライブでも時々テーマから外れてフリーにアウトしていく様が心地よかった。

その2人の演奏なのだから当然フリーなものになるだろうとは想像に難くないが、さてどうだろう。

それにしてもこのCD、輸入盤のような簡素さ。
ジャケット見開きに簡単なクレジットのみ記載されている。

「recorded on 15th Decempber, 2020 at 7th Floor, Shibuya」
と記載されている。
「All songs improvised by Yoshida & Suga」
ともある。
なるほど、ライブハウスでのインプロヴァイズ一発勝負か!

1曲目、ピアノの"ポーン"という一音から、ドラムが足元を確かめるようにゆっくりと入ってきて、それに合わせてピアノもアルペジオのパッセージを繰り返し、そして段々とテンポアップしてゆく。
そして、1分30秒あたりからは雪崩のようにフリーへと突入。
しかし、最後はピタリと息を合わせて終わるのがスゴい。

続く2曲めも同様だ。
基本的にはかろうじてメロディらしきものを担っているピアノがテーマとなる旋律を最初に提示し、それに合わせてドラムが入り、フォームが崩れていき、「行ったろかーい!」と行き着くところまで行く、そんな感じだろうか。
それで思い出したが、もうすぐ岡田准一が主演で韓国映画リメイクの「最後まで行く」という映画が公開予定だな。
関係ないけど。

そんな具合に
「どこまで行ける?オラ、どうや?!」
そんな演奏が続く。
いや、しんどい。
2曲続けて聴くのもキツイ。
ましてや演っている方は凄まじい集中力と体力ではないだろうか。

よく、フリー・ジャズというと
「メチャクチャやっているだけでしょ?」
みたいな事を言う人がいる。
デレク・ベイリーのギターを最初に聴くとそう言わんとするのも分かる。
だけど、一度演ってみればいいが、楽器を弾けない人がメチャクチャやって5分も6分も続けられるわけがない。
30秒だって難しいと思う。
あれは、しっかりと演奏技術をマスターした人が、いったんそれを全部リセットしているから出来る曲芸みたいなものだと思っている。

それにしても、これは一般的に言われるフリー・ジャズなのだろうか?
確かにスガダイローさんはジャズ・ピアニストと呼んでも構わないかもしれないが、もはやこれはフリー・ジャズではなく、やっぱり吉田達也さんのドラム、強靭なヒットが入ることでやはりロックと呼びたくなる。

ていうか、ジャズもフリーの方向に振り切れると、もやはノイズミュージックもそしてハードコアパンクも同じところに行き着くんではないか。
ジョン・ゾーン然り、サーストン・ムーアしかり。

それが「フリー・ジャズ」と呼ばれるのは、メンツがジャズ・ミュージシャンかどうかだけという話で。
不思議なことに伝統的なジャズを壊すためにジャズのミュージシャンがフリーフォームで演奏しても、そこはかとなくジャズの香りがする。
無意識に一瞬出てくるイディオムがジャズのそれだからかもしれない。

そう、このアルバムはもはや「フリー◯◯」のジャンルも軽々と飛び越えてしまった紛れもないインプロヴィゼーション・ミュージックに他ならない。
いや、格好良すぎる。
ちょっと気分が乗らないな、そんな時はランダムに選んで1曲だけでいいので聴いてみて欲しい。
力が漲ってくるから。
だけど、くれぐれも体力のある時に聴かないとやられてしまうので連続視聴は注意して欲しい。


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