はじめての仕事
はじめての仕事って何だろう?
はじめてのお使いみたいなことを言い出したらキリがないので、
あくまでも労働の対価としてお金をもらったことにしよう。
だとすると、やはりアルバイトということになる。
僕の育った家は必ずしも裕福ではなかったので、アルバイトをすることは止められなかった。
むしろ、社会経験になるから積極的なやれやれ、という感じだったかもしれない。
最初のアルバイトの記憶はかなり薄くなっているけど、小5か小6の時の新聞配達だった。
これは、本当にお小遣い稼ぎのお遊びみたいなもので、クラスの同級生がやっていて(おそらく、家が新聞配達店舗だったんじゃないかな)、一緒にやってみる?みたいな感じで少しの間やってみたくらいだったと思う。
最初の2日くらいは同級生が受け持っている区域を一緒に回って、要領を覚える感じ。
それから、じゃあ分担してやろうか、みたいになって、記憶に残っているのは、マンモス団地のポストに新聞を差し込んでいる光景。
いくらくらい駄賃でもらっていたのか、どれくらいの期間やっていたのかほとんど記憶にないけど、新聞配達をしていた記憶はしっかりあって、どこの家に配達するのかは意外と覚えてしまうものだということ。
子供は記憶力がよかったのもあるだろうけど。
小学校時代はそれだけで(そもそも小学生がアルバイトなんてしていいの!?)、
次の記憶は中学生時代。
それから高校、浪人、大学と12年間、いろんなアルバイトをした。
いくつか印象に残っているアルバイトについて買いてみようか。
まず、全くコスパが悪くて1日で辞めてしまった仕事は、甲子園球場の売り子。
「おせんにキャラメル、コーヒー、コーラにビールはいかがですかぁ!?」
ていうやつだ。
僕は春のセンバツの売り子の募集に友達と応募して行った。
今の仕組みは知らないけれど、当時はベースの基本賃金が500円だか1,000円だかで、球場までの往復電車賃が含まれていた。
そして、あとは歩合給。
割合も記憶にないが、売った金額の2割か3割くらいだったんじゃないかな。
電車で1時間以上かかるところから通ったので、基本賃金だけだとそもそも赤字なのだけど、
毎日2万円くらい売って、1週間も通えばいいお金になるね、なんて呑気な計算を立てていた。
取らぬ狸の皮算用を絵に描いたみたいな話だけど。
まず、売店でその日の商品を木製の牛乳瓶ケースみたいなものに詰めて、肩から下げていざ出動。
球場内の担当エリアが割り当てられていて、僕は外野の一部だった。
楽勝だろうという考えも、最初の1時間くらいで吹き飛ぶ。
全く売れないのだ。
「おーい、ビールとなんかおつまみ!」
と声がかかるのは、女の子の売り子ばかり。
僕ら男子には全く眼もくれない。
目の前にいても、
「お前とちゃうねん!あのお姉ちゃん呼んだんや」
と邪険にされるだけ。
これは大変だぞと、昼食も食堂で一番安い素うどん一杯で、午後も2時過ぎくらいまでは頑張ったが売れたのはジュースが2本くらいだけ。
一緒に行った友人も同じような感じで、
「これはもうさっぱりや。あかんなぁ。野球でも見てよ」
外野の一番後ろの空いているスペースに行って、最後の試合が終わるまでぼーっと野球を見ていた。
全ての試合が終わったら、清算のため売店に戻る。
何十人といるアルバイトの清算の待ち行列に入って並ぶ。
順番が来たので、その日の商品箱と売上を渡す。
「おや、兄ちゃん全然売れへんかったんやなぁ。あかんやん。はい、今日の分」
と基本給と売上金の分配50円くらいをもらう。
「明日はどないする?もうあかんのとちゃう?」
お前は役立たずやから辞めや、という宣告だ。
「はい、もう今日で十分です」
と言うのが精一杯で、肩を落として売店を立ち去った。
「こんなんで帰ったら、何しに来たか分からへんなぁ。
そうや、1人めっちゃタイプの女の子がおってん、声かけて帰ろか。」
そうだそうだ、と関係者出口で待ってることにした。
しばらくすると、目当ての子が友人3人組で出てきた。
ナンパなんてしたことがないので心臓バクバク。
だけど、本当にこのまま帰ったらもったいない。
友人にも背中を押されて、思い切って声をかける。
「あの、僕らもおんなじバイトやってんけど、この後どうするん?」
あきらに訝しそうにこちらを一瞥して、
「あー、今日はこのまま帰る」
と一言残して、スタスタと行ってしまった。
少し離れて、3人組の爆笑する声が聞こえてきた。
めっちゃ、あかんやつやん。。
最後は相手にもされずに撃沈して、1時間の道のりを肩を落として帰った。
何もせんと、真っ直ぐ帰っといた方が良かった。
これが思い出に残っている情けない仕事だ。
なんだか、これ一つ書いただけで切なくなってきたので、今日はこの辺で終わりにしときます。
しかも、はじめての仕事でもないし。
はじめての(恥ずかしい)仕事、ということでよろしくお願いします。
またの機会に他の仕事のことも書こうかな。
それでは!
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