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【短文朗読】夏色のキミ【文披31題】


大人になってしまった、と思った。

真っ直ぐに受け取れない、この歪みを。


無邪気なキミの笑顔につられて、
つい、忘れてしまうんだ。

それどころではなかった、と。

そして、思い出してしまうんだ。

誰かを恋しく思う感情を。


ボクは、恐れているのだろう。

キミのことばかり考えてしまう日が来ることを。


稲穂が揺れた。

キミの髪が、一緒に揺れた。

夜を含み始めた風だった。



キミと笑い飛ばしてきた
拭いきれない夏の暑さ

見上げた向日葵

待っていてくれた傘

暮れていく空の色


夏色のキミを忘れられないまま

これから、秋が来るなんて。


今日が、夜に染まっていく。

踏み出す勇気を見つけられない
ボクの心を置き去りにして。



END


#文披31題
Day.1「夕涼み」より



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