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七夕の思い出〜きょうだいの願いごと〜
今年は早々と梅雨明けになったものの、七夕の頃はいつも雨模様。
ピンクや紫や白や、色とりどりの大輪の紫陽花と、紫陽花を囲む葉っぱの瑞々しさ。
私はこの季節の雨が、とても好きだ。
この頃になると、私の住む街の商店街にはいっぱいに七夕飾りが飾られる。
金や銀のかわいらしい飾りに混じって、たくさんの願いごとの短冊。
まだ小さな子が一生懸命書いた願いごとを目にするたび、私の胸の中で鮮明によみがえる切ないほろ苦い思い出がある。
息子が保育園に2歳で入園した時、上のお姉ちゃんは年長さんだった。
お姉ちゃんのアオちゃんは、弟が入園することをとても楽しみにしていた。
入園してからも何かと弟の部屋の様子を伺ってくれていた。
親の私がいうのも何だが、アオは周りの様子をよく察することのできる、繊細で、とてもとても優しい子だ。
そのアオの優しさは、まだ小さかった弟へもたくさん向けられていた。
保育園に入園してようやく3ヶ月の頃の息子はみんなに手厚くケアされていた。
園や療育の先生方、家族、みんなが試行錯誤で息子の対応について力を注いでいた。
そんな中、お姉ちゃんのアオは先生を困らせることなく、家でも無茶をいうわけでもなく、淡々と自分の力で成長していった。
その雨の日も、私はいそいそと保育園へ2人を迎えに行った。
頭の中はソワソワしながら
”今日はコウちゃん少しは食べられたかな..."
なんて息子の1日を思っていた。
そんな私の目に飛び込んできた、1枚の短冊
「こうちゃんがしゃべれるようになりますように」
それは、先に迎えにいったアオの担任の先生から差し出された、ピンクの折り紙にはみ出さんばかりに書かれた、覚えたての文字だった。
アオの担任の先生が大事そうに手のひらに乗せて、私に披露してくれた。
「今日みんなで短冊に願いごとを書いたんですけど...。
みんなそれぞれ自分のことでたくさん願いごとがあって。
短冊を1人で何枚も欲しいっていう子もいて。
でも、アオちゃん、たった1枚、それも自分のことじゃなくて、こうちゃんのこと、書いたんです」
当時のアオの担任の先生はアオのことをいつも丁寧に見てくれる、とても信頼のできる保育士さんだった。
「ほんっとに、なんていうか、アオちゃん、いじらしくて。
アオちゃんの願い、届くといいですね」
先生はそう言って、目を潤ませた。
帰り道、アオに向かって短冊のことのお礼を言った。
もじもじニコニコ、弟の横に座って優しいアオ。
でも、今になって思う。
あの時アオはきっと自分の願いごとも書きたかったんじゃないのかなって。それでも、弟のことを願ってくれたアオ。
アオはこの夏20歳になる。
今さらだけど、ごめんね、ありがとう。
たくさんさみしい想いをさせてたな。
そして不安定な家族と一緒に、よくここまで歩んでくれたな。
今、アオは一人暮らしをしながら大学に通っている。
小さな頃から悩みごとなんて私に言ったりしない子だった。
きっと、弟にかかりきりの両親を見ながら、自分のことは自分で、と自然にそう生きることを選んだんだと思う。
でも本当は相談したいことだって、たくさんあっただろうな。
いつか、コウちゃんが成長して手がかからなくなったら、アオにいろんなことをしてあげたいと思っていた。
でもいつの間にかすっかり大きくなってしまっていた。
私がなーんにもできないまま。
明日は七夕。
私の切ない思い出が蘇る日。
家族みんなが健康で笑っていられますように
私は心の中で、一生懸命そう願う。
あの日の気持ちを思い出しながら。
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ちっちゃな頃のきょうだいの写真です。
よくお姉ちゃんに離乳食を嬉しそうに食べさせてもらっていたなぁ。
懐かしいです。
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