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書評『オプションB 逆境、レジリエンス、そして喜び』シェリル・サンドバーグ著

この著者と同じ体験をしたので、読んでみたくなった。

著者は夫を急死で亡くし、その後の苦しみを乗り越えていったプロセスと、他の多くの、喪失による悲嘆から立ち直った人々にインタビューした内容をまとめている。

人は漠然と、今の当たり前の状況が続くと言う想定で生きていることが多い。自分も結婚し子供ができて、何となく、子供が独立したあと、2人でどんな生活になるのか、など考えていたものだ。自分が選択してきた「オプションA]だ。

でも、ある日突然状況は一変した。夫はいなくなり未亡人になった。1人で子育てすることになり、老後も彼はいない。
そうやって強制的に「オプションB」を選択させられた。

でも、この「オプションB」の中身は、自分で決められる。もちろん、当時は「こうする!」と明確に決め前向きに進んだわけではなく、悲嘆に暮れながらも1日1日を何とか生きるために必死だっただけだ。だけど、少しずつ立ち直る中で、次の選択肢を自分で決めていっていいんだと気づくことができ、随分生きやすくなった。

そんな自分のこれまでの過程と、この著者の体験にはリンクすることがたくさんあった。
そして、この本を読んで再確認したことが3つある。

1つ目は、

悲劇は自分のせいではなく、全てに及ぶわけでもなく、ずっと続くものでもない

ということ。もちろん、完全に消え去るものではないけれど、最初の激しい苦しみは少しずつ和らいでいく。

2つ目は、

悲劇を体験した人の周りにいる友人や職場の人たちが醸し出す、「何と声をかけたらいいのかわからない。」「そっとしておこう」 という”見て見ぬふりをする”対応からくる、ぎこちない空気の存在が当人を苦しめているということ。
当人は、腫れ物に触るような扱いをされるより、「気持ちを聞いてもらいたい」と思っているかもしれない。
そう想定して、あえて「気分はどう?」などの優しい一声をかけてみてほしいし、自分も逆の立場になったらそうしたい。

3つ目は、
悲嘆に暮れている人に、暗にタブー視されている「笑い」と、伴侶を亡くした人の場合の「新たな恋愛」について。
これらは、初めは当人だって想像もできないことだし、してはいけないことだとも思う。
しかし、ユーモアには「レジリエンス」を高める効果があるという実験報告もあるし、新たな恋愛は癒し効果、生きる希望を与えてくれる。
喪失したものは蘇らない。
大切なのは生き残った自分が元気になること、残りの人生を生き抜くことであって、「悲しんでいる姿を見せ続ける」ことではない。
だから、そういうチャンスに巡り合ったら周りの目に臆することなく、積極的に自分の人生、生活に取り入れたい。

著者は最後に書いている。

「死者を取り戻すことができるなら、この経験を通して得た成長を捨てられるか?」と聞かれれば、「当たり前だ!」と答える。

と。
誰も好き好んでこのオプションBを選んだわけではない。全くその通り。
しかし、人は失うこともあるし、得るものもある。前を向くしか道がないなら、この「オプションB」を歩いていこう。もしかしたらまだこの先「オプションC」もあるかもしれない。そんな事も念頭に置きながら。。。

家族や大切な友人など、喪失の悲嘆に苦しんでいる人にはご一読をおススメします。


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