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『清く貧しく美しく』石田衣良著 感想

今月読んだ七冊目の本。
またまた、石田衣良さんの小説。
こちらも恋愛小説に分類されるのだろうが、別のテーマも気になり、なんとなく手に取ってみた。

恋愛の部分では、主人公たちはまだ30歳手前ということで、54歳の自分にとっては、初々しさがただただ眩しかった。
だから、”共感”や”胸キュン”は皆無であったのは仕方がない。

一方、この本のもう一つのテーマである〈働き方〉については、身につまされるものがあった。
大きな組織で働くことに不向きな性格であるところが、この二人の共通点で、二人とも非正規労働者だ。
生きづらさを抱えるお互いを励まし合いながら同棲している。

しかし、男の方に正社員登用の話が舞い込むことで、二人の関係性の均衡が崩れようとしていく。。。

ざっくりひと言で言うと、〈お金の安定〉か〈心の安定〉の二者択一、となるのだろうか。
現代の若者だけに限らず、このような悩みを抱えている人は少なくないだろう。自分もその一人だ。

主人公の最後の決断には、心から共感はできなかった。難しい選択だったとは思うが、自分ならそうはしなかったと思う。

あと、個人的に、彼女の方には苛立ちが募った。心が純粋で、ある意味強い人なのだろうが、個人的には性格が合わなそうと感じる。
内気で人見知りな人が、自分の殻にこもりがちなのは、自分もそういうところがあるのでわかるのだが、そこから少しの勇気を出して殻を破ろうとしないところに苛立ってしまう。
ん~~、ここは自分自身に、共感力や寛容さが足りないからだろう。

〈お金の安定〉か〈心の安定〉。
でもきっと、それ以外の〈第三の選択〉があるはず。
この本は、それについて考えを深めるきっかけを読者に与えてくれている気がする。

『清く貧しく美しく』石田衣良





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