『雲　※18禁※』

晴天の日

空を見上げては

夢想に耽った

性への目覚めとほとんど同時に

空に浮かぶ雲を

その対象として見るようになった

雨天や曇天が憎かった

"雲ひとつない"快晴もまたしかり

飛行機に乗ってみたいな

子供らしい率直な要望を親に訴えてみた

動機などバレるはずがない

夏の入道雲はやりすぎで

春のうららかな青空に

ぽつんぽつんと浮かんでいるのが

僕の好み

ある年の連休に

家族旅行で飛行機に乗れることが決まった

あのときほど両親へ感謝したことがあるかな

それからというもの

毎日

僕自身の夢想は捗り

ソワソワと落ち着かなかった記憶がある

旅行当日

それは"僕好みの"晴天だった

飛行機は

電車やバスと違って

飛び立つまでに色々とやることがあるみたいで

ちょっと苛ついたのも覚えている

僕は急いでるんだよ

早く飛び立ちたいんだ

ようやく離陸

安定飛行に入ると

眼下にぽつぽつと見える

雲

雲

なんか違う

雲

雲

パイロットになれば

どれだけ素敵な毎日だろうと

膨らみ続けていた僕の夢想は

雲

雲

シュンと萎んだ

雲

雲

僕が夢想してたのは

これじゃない

雲は

地上から見上げるのが一番だな