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『越境バス』


ガイドブックによると日に一本しか出ていないという国境越えのバス

それがちょうどターミナルに停車しているところを見かけ、慌てて飛び乗った

車体に隣国の国旗が大きく描かれていたので間違いないだろう

僕が乗車するとすぐにドアが閉まり、出発した

とりあえず空いていた最前列に腰をおろす

乗客は、後部座席から順に詰め込まれて、現地の男性らが二十数人程

よくみるとそのなかに、僕と同じ日本人の女性がひとり

降りたら声をかけてみようか

砂漠、ステップ、ちょっとした集落、また砂漠

6時間ほど揺られて

ゆるい検問を抜け

バスは大きな駐車場に止まった

ドアは開かず、男性らがその女性を一斉に凝視する

群がるでも襲い掛かるでもなく、沈黙あるのみ

女性は泣きそうな目でうつむいている

誰一人動かない

僕は、どうしようと思った

どうしよう

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