Maki Ueda / 上田麻希 嗅覚のアーティスト

嗅覚芸術家/アーティスト。沖縄県石垣島にアトリエを構えています。ニュースやエッセイ、嗅…

Maki Ueda / 上田麻希 嗅覚のアーティスト

嗅覚芸術家/アーティスト。沖縄県石垣島にアトリエを構えています。ニュースやエッセイ、嗅覚アートの教科書的な記事を投稿します。 作家ポートフォリオ: www.ueda.nl 調香師やアーティストのための香りの学校「香りソムリエアカデミー」: www.pepe.okinawa

マガジン

最近の記事

第10回アート・アンド・オルファクション・アワードにて、審査員を務めました

記念すべき第10回アート・アンド・オルファクション・アワード。24年6月7日に、古都リスボンにて開催されました。例年以上に、映画のセットのような美しいロケーションとひとときでした。私は光栄にもサダキチアワードの審査員を務めさせていただき、同僚のアンドレアス・ケラーと共に壇上でウィナーを発表。 このカテゴリーは開催9回目。嗅覚アートだけでなく、学術発表や先進的な商品、香りのシネマや上演など、実験的な香りの応用であればなんでも、ここに投入される、いわばごった煮。共通の価値基準で

    • リスボンにて発表!『源氏物語』に描かれた嗅覚コミュニケーションへの挑戦

      リスボンで開催された「実験的な香りのサミット2024」 において、「香りのメタコミュニケーションの可能性: 日本文学『源氏物語』に描かれたコミュニケーションへの挑戦」を発表しました。 IAOよりちょうど発刊された嗅覚文化ジャーナル「アラバストロン」に書いた、源氏物語に登場する香りと、その香りを使って人々がどのようにコミュニケーションをとったかについてでした。1000年にわたって受け継がれてきたレシピに従って香りを再現し、小さなパフォーマンスを行い、香りに込められたメタ的な意

      • 嗅覚アートの歴史 (1)

        これまで日本語では語られてこなかった、嗅覚アートの歴史とその成り立ち。独断と偏見で、わかりやすく簡単に、シリーズで紐解いていきたいと思います。本日は初回ですので、アートの文脈で辿れる限り、いちばん昔のお話です。 19世紀末のヨーロッパ。近代化学の発展に支えられ、香水産業が花開いていました。イギリス人化学者セプティマス·ピエス(Septimus Piesse)によって1857年に書かれた「The Art of Perfumery」1は、多くの人にインスピレーションを与えたと考

        • 女性が家事育児でキャリアアップするには

          先日、オランダ時代に息子をベビーシッティングしてくれていた女性が日本に遊びに来ていたので、うちでのディナーにお誘いしました。 息子は当時、小学校中学年。わたしにとってとても苦しい時代でした。わたしはアレルギーや喘息からくる虚弱により、日本にたびたび長期避難していたのでした。元夫はフリーランスですがフルタイムに近い仕事があったし、わたしが息子のお迎えに行けないのは申し訳なく(オランダではセキュリティー上、小学生であればお迎えが必要)、それゆえベビーシッターが必要な状況に対して

        第10回アート・アンド・オルファクション・アワードにて、審査員を務めました

        マガジン

        • 香りの枕草子
          18本
        • 嗅覚アートの歴史
          1本
        • 女の本能
          7本
        • 石垣島の楽しみ方
          4本
        • 嗅覚思考
          8本
          ¥800
        • World Perfumery Congress レポート
          6本
          ¥3,000

        記事

          香る食卓 〜香り文化協会〜

          先月は新年会の名目で、香りの料理をたくさん作り、たくさんの方々と試食会。プラナカン料理という、マレー・インドネシア圏にまたがる中華系少数民族の伝統料理を作りました。 - Peranakan curry ayam(chicken curry チキンカレー) - Peranakan udang goreng chili garam (hot-frgrant shrimp 海老の甘辛香り炒め) - Peranakan achar (野菜の香りマリネ) レシピ通りに作るも、プ

          丁子染の帯からふわっと香る新年

          謹賀新年。今年は息子の成人式で新年の幕があけました。着物は中古で見繕い、着付けも自前でしたので、なかなかの忙しさ。やめとけばいいのに、ついでにわたしもノってきちゃって自分で和装してしまったりして。若干迷惑な母だったかもしれない笑。写真撮影は、うちの隣にある大田黒公園で。撮影は友人に頼み、祝杯は近所の蕎麦屋さん、本むら庵で。 長着と羽織は、大島紬です。深い藍染の、いいのを見つけました。帯は #八重山ミンサー 。琉球つながりで、とてもよく合う。中古で入手した #福木染 と #丁

          丁子染の帯からふわっと香る新年

          男に養ってもらおう、貢いでもらおう、は田舎にはないコンセプトかも

          いつかの話。アトリエで仕事した後、思い立って、友達誘って街に呑みに行った。 島では友達づきあいをほとんどしてない私だけど、シングルマザーのAちゃんとはときどき遊んだりする。彼女は腹の座った女で、好きな男との間にできた子を産んで、ひとりで育てている。その男は「事情がある」ようで、会わないようにしているし、当然養育費ももらっていない。結婚もしたことない。 世の中には、離婚しても旦那に養育費を要求するのが当然の権利のように思ってる女もいるけど、こんな女もいるのだ。惚れた男の子ど

          男に養ってもらおう、貢いでもらおう、は田舎にはないコンセプトかも

          女は、必然性があれば稼ぎは上がる

          今日は、ひさびさに離婚のお話。 数年前でしょうか、メーンバンクから「資産運用しませんか」としきりにセールスされるようになった時、自分もそんなふうに見えるようになったんだなぁと驚いた。いちおう、旦那の収入に頼っていた「主婦」的な時間も長かったものだから。 思えば息子が7歳のときに別居し、11歳のときに引き取ってから、シングルマザーとしてやみくもに仕事してきた。息子が中学生のころ、難病を発症し(現在は完治)、急遽都会の病院へ転院となり、仕事ができなくなり、お先真っ暗に。高額な

          女は、必然性があれば稼ぎは上がる

          人生の変化を後押しする香り

          なぜだろうか。人生の変化のときに、特に女性は、香りに関わりたがる方が多いように感じる。 たとえば私のアトリエで提供している「パフューム作り体験」では、とにかく好きな香りだけを使ってパフュームを作るのだけど、いらした方たちのその後の人生に劇的な変化が起こることもちらほら。 この現象を方程式化するなら、ふたつの式が考えられる。 1:匂いや香りを好きになると、人生が変化する。 2:人生の変化を求めていると、無意識的に匂いや香りを好きになる ここでざっくり「人生の変化」と表現

          人生の変化を後押しする香り

          南方見聞録 〜東南アジアの香り(観光)ビジネスの今〜

          ひさしぶりに東南アジア遠征してきました。今回は、マレーシアでのワークショップでしたが、シンガポール発着だったため、どちらの国でも香りのネタを探し回りました。 シンガポールは今やASEANのリーダーとしてめざましい発展を遂げ、活気があります。西洋諸国並みに文化・芸術を観光に取り込むことに成功しています。そこに「香り」も含まれます。マレーシアはそれを下支えする陸続きの国。私自身、マレーシアには30年ほど前に語学留学していましたが、クアラルンプール以外はその頃とあまり変わらない、

          ¥300〜

          南方見聞録 〜東南アジアの香り(観光)ビジネスの今〜

          ¥300〜

          World Perfumery Congress レポート (5) パワーゲームと民主化 - マイノリティ、インディー、ギルド -

          文字数:8,092文字 写真:22枚 レファレンスへのリンク多数あり WPCは、基本的にはビジネスにおけるパワーゲームの場。プレゼンテーション枠は、基本は広告&プロモーション(or プロパガンダ)の枠であり、いくらお金を積んでもそこは政治で、なかなか枠が取れないとか。プレゼンテーションは基本的に会社名を背負ったものであり、時には会社同士で作るギルドのような「連盟」によるものもあります。枠が取れなければ、ブースを出したり、プログラムの冊子に広告枠を買うという手段があります。

          ¥1,000〜

          World Perfumery Congress レポート (5) パワーゲームと民主化 - マイノリティ、インディー、ギルド -

          ¥1,000〜

          World Perfumery Congress レポート(4) あたらしいナチュラル - サステナブル、トレーサビリティ、バイオテック -

          文字数:6,758字 写真37枚 録音へのリンクあり サンプルフォーミュラあり 「ナチュラル・ジレンマ」というステートメントからの始まり ここまでのレポートを読まれた方なら、もしかしたら想像つくかもしれません。もし世界中のみんながウェルネスや癒しの香りを必要とし、天然香料ばかり使ったら世界がどうなるか、、、 天然香料は採油率が低いため、それは自然にも負荷が高く、グリーンやらサステナブルやらといったトレンドとは矛盾する。これを「ナチュラル・ジレンマ」という言葉で表現した冒

          ¥1,000〜

          World Perfumery Congress レポート(4) あたらしいナチュラル - サステナブル、トレーサビリティ、バイオテック -

          ¥1,000〜

          World Perfumery Congress レポート (3) 香りの未来 - AI、Z世代、メタバース、アノスミア -

          文字数:4044字 写真:22枚 録音へのリンクあり 確かな未来のフレグランスとは: Z世代とミレニアル世代 Future-proofing Fragrance: Impacts of Gen Z & Millennials Samantha Mane, General Manager EMEA, MANE Alex Lee, Perfumer, MANE Mane社(マーン社)の若手によるパワフルなプレゼン。この左の女性はラストネームがManeなので、おそらくMan

          ¥1,000〜

          World Perfumery Congress レポート (3) 香りの未来 - AI、Z世代、メタバース、アノスミア -

          ¥1,000〜

          World Perfumery Congress レポート (2) アフターコロナにおけるトレンド - ウェルネスとウェルビーイング -

          文字 4665字 写真 45枚 録音へのリンクあり フレグランスは、特に戦後、歴史的にはファッションの一部に取り入れられ、発展してきました。シャネルやアルマーニなどの大きなファッションブランドは、そのブランドイメージとしてフレグランス・ラインを持つのが当然で、よくよく考えてみれば服装の会社が香水を売るのはおかしな話なのですが、お互いの利害が一致して現在のようなエコノミーになっています。 ですがこれも当然、時代の流れによって変わりうる。特にコロナ禍という未曾有の自体が起きる

          ¥1,000〜

          World Perfumery Congress レポート (2) アフターコロナにおけるトレンド - ウェルネスとウェルビーイング -

          ¥1,000〜

          World Perfumery Congress レポート (1) はじめに & 概況まとめ

          はじめに これからレポートするのは、World Perfumery Congress (以下 WPC) 2022。世界的に有名なパフューマリーの3日間のカンファレンスです。今年はマイアミで開催され、3日間に渡るプレゼンテーションと数百社の展示、そしていくつかのパーティから構成されました。 カンファレンス自体は完全にビジネス寄りで、最新の技術や商品、そしてトレンドを知る最高の機会となります。 私自身はWPCのフィナーレと位置付けられるアワードセレモニーにて、Art and

          ¥500〜

          World Perfumery Congress レポート (1) はじめに & 概況まとめ

          ¥500〜

          World Perfumery Congress (マイアミ)に行ってきます! マイアミレポートの予告編

          現在、ロサンゼルス行きの機内の中からこれを書いています。 今回の出張で向かうのは、World Perfumery Congress (以下 WPC)。世界的に有名なパフューマリーの3日間のカンファレンスです。 その最後のイベントとして、私の作品 Viral Perfume が表彰されるとのことで、表彰式に行ってきます。 わたしが毎年参加している嗅覚アートのアワード、Art and Olfaction Awards(以下 AO Awards)。例年は自主開催で、主にヨーロ

          World Perfumery Congress (マイアミ)に行ってきます! マイアミレポートの予告編