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日本一の自治会長、内田大造

総務省の調査によれば、全国には30万にのぼる自治会・町内会が存在しているそうです。

私は相当な数の自治会長に出会ってきましたが、あえて一番すごい人を選ぶならば、兵庫県尼崎市の猪名寺自治会の内田大造さんです。

内田さんとは猪名寺自治会が令和元年度「ふるさとづくり大賞」を受賞された4年前に初めて取材でお会いし、その後もメールのやりとりを通じて、活動に注目していました。

今週、大阪に出張した帰りに、猪名寺まで足を伸ばして、久しぶりに内田さんとお会いすることができました。ラッキーです。

一般的に、いまは多くの自治会があまり機能していません。形式的に役員会を開いては雑談ばかりで、議題がない。役員には誰もなりたがらず、1年交替。盆踊りや年末警戒があればかなりいい方ではないでしょうか。これは少子高齢化、ライフスタイルの変化による影響が大きく、仕方ないところあります。

15年前、内田さんが自治会長になった頃、猪名寺は「尼崎の僻地」と言われていて、住民の地域への愛着はほとんどなかったそうです。それは全戸アンケートを行ったことで明らかになりました。

そこで、内田さんは住民が誇りと愛着が持てるまちづくりを始めました。ただ、あまりに熱心すぎたため、17名いた役員の11名が辞めました。それでも心が折れることなく自治会改革を行ったことはすごいです。

主な実績の一つが、猪名寺駅にエレベーターを設置するよう一万人の署名を集めて、JRに要望し、実現させたことです。これは10年前からの住民の悲願でした。

JR宝塚線では猪名寺駅だけがエレベーターがなかった

また、荒廃していた森を再生し、子どもたちの遊び場に変えたことも、特筆すべき実績です。

猪名寺は1300年前の奈良時代に「猪名の笹原」と詠われた景勝地で、多くの人が詩情をそそられ、和歌を残しました。一番有名なのは百人一首に掲載されている紫式部の娘の大弐三位のこの歌です。

有馬山 猪名の笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする
(有馬山に近い猪名の笹原で、風がそよそよと音をたてるように、あなたは私の心変わりを心配しますが、なぜ私が忘れるでしょうか)

現在の猪名寺には「万葉の森」と住民が親しんでいる森がありますが、内田さんが自治会長になる以前は長く放置されていたため、不法投棄であふれかえり、誰も近づかない鬱蒼とした暗い森でした。

この森をきれいにして、活用しようと立ち上がったのが内田さんでした。行政をはじめ、100人以上の協力のもと、森は見事再生され、散策道ができました。

内田さん(左)と万葉の森で

おもしろいことがあります。この森は「忍者学校」という地元小学生を対象にしたイベントに使われていますが、猪名寺に忍者がいたという歴史はありません。

実はアニメ「忍たま乱太郎」の作者が尼崎市出身で、主人公の名前が猪名寺乱太郎であることに、内田さんが目をつけたのです。忍者学校については以前私が作成した動画で詳しく紹介しています。

内田さんは自治会以外の個人活動として「農あるまちづくり」に力を入れています。

地域のコミュニティ農園を複数管理し、それらを拠点に地元伝統野菜「田能の里芋」のブランド化、子どもの農業体験、地元企業で働く障がい者を受け入れる農福連携などに取り組まれています。

内田さんのコミュニティファーム いわゆる都市農園
無農薬野菜を販売。お客さんの多くは若い人。

内田さんは農業と自治会長の二足の草鞋、まさに「半農半自治」の生き方を実践されています。どちらも一流だからすごい!

内田さんにお会いするといつも元気がもらえます。

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