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金融×ブロックチェーン領域で必要なスキル

はじめに

ビットコイン やイーサリアム のホワイトペーパーを読んで分かる通り、金融領域はブロックチェーンが最も大きいイノベーションを起こす分野の1つである。私は大学卒業後に証券会社で働いていたが、株式の注文を証券会社の担当が受注し、証券取引所を介して取引する仕組みに非効率さを覚えていた。この記事の読者にも、金融領域の非効率さを感じながらUniswapやCompoundを触った時に、今後の金融のイノベーションを確信した人は少なくないと思う。

私自身は国外でDeFi開発を行っており、これまでの過程で必要になったスキルをこのnoteに記すことにより、同領域に進出する読者がより円滑に進められるようになって欲しいと願っている。
金融×ブロックチェーン にフォーカスしているが、非金融のクリプトプロジェクトやブロックチェーン を使わないFinTech企業にも通ずるところはあると思う。また、スキルというワードが嫌いな実務家にとってもどのような人材を採用すべきかの参考になると思うので、ぜひ最後まで目を通して欲しい。

下記が同領域で活躍するため、プロジェクトを推進するために必要なスキル。
・会社法の基礎知識
・SNS力
・クリプト業界の新しい出来事のキャッチアップ力
・ビジネス英語力
・開発力
・プロジェクトマネジメント力
・アライアンス力

上記それぞれのスキルについて、利用シーンや必要なレベルについて見ていこう。

会社法の基礎知識

現代の経済を作るきっかけになったのが株式会社という仕組みであり、そのルールを定めたのが会社法である。今後もしばらくは自社もしくは取引先が会社の枠組みで事業を行うことが多いはずで、そのルールを定めた会社法の前提知識は必須。これはブロックチェーン も金融も関係なく必要な知識であり、ただでグローバルな市場で戦うケースが多い業界で、参照すべき法律が大量にあると頭がパンクしてしまうので、最低限自国の会社法の基礎知識は習得して事業に臨みたい。会社法は979条あるが、株式関連を優先的にキャッチアップすべきだろう。
このキャッチアップができたら、日本では金融商品取引法や資金決済法関連の既存金融と暗号資産あたりの知識を追加でキャッチアップし、それを各国の同様の法律と比較して自社のリーガルストラクチャーを整理することになる。弁護士に丸投げすれば良いという考えではなかなか上手くいかないだろう。なぜなら弁護士の中でも特にブロックチェーン関連の法律に詳しい弁護士とそうでない弁護士で提案の質が全く異なるだけでなく、弁護士資格も司法管轄ごとに定められており、例えば日本の弁護士がドバイの法律に基づいて法的なアドバイスができないといった現象が起きるからである。どの国の法律でどの論点について弁護士に相談するかについて、自身で最新情報を収集して判断する必要があるため、最低限の法律知識が必須である。
(↓のように法解釈が明確になっていないケースが多いので、自分でリスクを見極められなければいけない)


SNS力

ブロックチェーンと金融が好きな人の多くはX(Twitter)に生息している。事業者はLinkedInをやっている場合が多い。彼らの特徴として、革新的なプロジェクトと認知すれば勝手にスレッドや記事が作成されてコミュニティ内に拡散されやすいことが挙げられる。もちろん今後は、現在クリプトを触っていない人たちにも届くようなサービスを目指すプロジェクトが増えてくると思うが、まずはファンになってもらいやすい既存のクリプトユーザーたちに認知されるのが良い打ち手と思われるので、SNSでの拡散力は重要なスキルと言える。

クリプト業界の新しい出来事のキャッチアップ力

インターネットやスマホが普及してからイノベーションのスピードが劇的に上がっているのは言うまでもないが、クリプト業界の変化スピードは異常である。新しいチェーンもDappsも次々とローンチされ、2~3年で時価総額上位が入れ替わるのが普通。このような環境で正しい方向にプロジェクトを導いていくためには、絶え間ない情報収集が必要である。

ビジネス英語力

ブロックチェーンは金融という軸で世界をつなげる性質があり、必然的にグローバルプロジェクトになるケースが多い。マーケティング、資金調達、他社との協業、情報収集などどれを取っても英語を使うことがスタンダードであり、チームに1人はビジネス英語ができる人材を置くか、国内に限定したストラクチャーに変更するかを選ばなければいけない。

開発力

ブロックチェーンの特性上、一度世の中に出したものを何度も修正して再度世に出すというプロセスをとることが難しい。バグを突かれてハッカーに資金を抜き取られることは少なくないため、コードを書き終えたら第三者の監査を受けた後に本格ローンチすることが一般的なフローである。一度バグが見つかってしまったら開発チーム含めそのプロジェクト全体の信用が失われてしまうため、一般的なソフトウェア開発よりも高いレベルの開発力が必要になる。
当該領域の開発経験者の希少性は非常に高いため、採用の難易度・コストが高くなりがち。

プロジェクトマネジメント力

一般的なプロジェクトと比べ、同領域のプロジェクトマネジメントの難易度はかなり高い。繰り返しになるがデプロイしたコードを後から修正することが難しいので、本番リリースをする前に細かく顧客のフィードバックを得つつ、要件をガチガチに決めて開発しきる必要があるのだ。新規事業において開発着手前の顧客ニーズとソリューション特定がマストなのは前提として、バグがあってはいけないし、業界の変化に遅れを取らない開発スピードも必要、後から修正する場合のコストが高いという条件が加わり、スケジュール策定段階でプロジェクトの進め方に関する高い解像度が求められる。

アライアンス力

元々信用がある企業を除き、多くのスタートアップは同領域で信用を勝ち取ることが非常に難しい。既存金融と異なり、秘密鍵をユーザー自身が管理する、誰でもトークンを発行して世界中から資金調達ができる、といった特徴があるため、スキャムが乱立する業界となっている。そんな中でプロジェクトの信用を高めていく打ち手の1つとして他のプロジェクトとのアライアンスが有効な場合がある。
Web2との対比という観点で見ると、同業界のプロジェクトの多くはパートナーシップに対し非常にオープンな姿勢だ。ブロックチェーン 自体がオープンな思想であるのが背景にあるのかもしれない。

以上、金融×ブロックチェーン領域で必要なスキルを列挙した。ただし、これを全て1人でキャッチアップすることが必須がどうかと言われれば必ずしもそうではない。それぞれのスキルセットを持った優秀な人材を巻き込む能力が高ければ、全てのスキルを自分で持つ必要はないのである。


Twitter: https://twitter.com/MakiCrypto0330


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