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言葉について【コロナの頃】

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言葉について書いたことはこちらに。
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2020年4月の記事一覧

コミュニティの問題で重要なのは。

コミュニティの問題で重要なのは。

平野啓一郎さんの『私とは何か 「個人」から「分人」へ』を読み返しました。

いま、本当に時間があるので、自宅にある本の積読を読み進めたり、過去に読んだ本の再読をしたりしています。

出版元の講談社のホームページに行くと、この本の内容説明は「嫌いな自分を肯定するには? 自分らしさはどう生まれるのか? 他者との距離をいかに取るか? 恋愛・職場・家族……人間関係に悩むすべての人へ。小説と格闘する中で生ま

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そこに「自分」はあるか。

そこに「自分」はあるか。

大正生まれの思想家に鶴見俊輔という人がいます。

官僚で政治家だった後藤新平を祖父、政治家の鶴見祐輔を父に持ち、15歳で渡米。日本にアメリカのプラグマティズムという考え方を紹介し、「ベトナムに平和を!市民連合」(ベ平連)の発足メンバーでもありました。24歳で創刊した雑誌に『思想の科学』があります。

自身がフリーランス、奥様が大学で働いていた時期は「主夫」の立場でもあったため、肩書に「主夫」「主夫

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ぼくがきみに手紙を出した。

ぼくがきみに手紙を出した。

小学校の国語の教科書に採用されたことで、ある世代以下の子どもたちに広く知られた『おてがみ』(アーノルド・ローベル)は、『ふたりはともだち』に収載されています。

「だれも ぼくに おてがみなんか くれた ことが ないんだ。」と悲しくつぶやく、がまがえるくん。

いつも一緒に過ごす親友・かえるくんに、一度ももらったことがない手紙を待つ時間の悲しみを訴えます。

今日も来るはずがない、やっぱり来なかっ

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言葉を友人に持とう。

言葉を友人に持とう。

ロングセラーの文庫は、ときどきカバーが変わります。

『ポケットに名言を』(寺山修司/角川文庫)も、そう。

現在(2020年)のカバーは、ピンクとグレーのすっきりとした縦じまカバーですが、私が持っている版は江原利子さんのイラストカバーです。

林静一さんのイラストだったときもあるし、着物姿の女優さんの写真だったときもあります。

どれもすてき。気分によってカバーだけ付け替えて読みたいと思えるくら

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風たちぬ

風たちぬ

新緑が目にまぶしい、ツバメが飛び交う季節になりました。

ただ、今年はどこにも出かけられそうにないですね。

このゴールデンウィークは、各地方の方がご近所の画像をアップしてくださるインターネット上の写真を見て、季節を感じることにしましょう。

今日は東福寺の新緑を拝見し、京都の風を想像していました。

新緑の間を心地よい風が抜けていくこの季節になると、堀辰雄の『風立ちぬ』を思い出します。正確には、

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誰かの言葉で生きている。

誰かの言葉で生きている。

「おお、これは!」と思った言葉を、やたらあちこちに書き溜める習慣があります。

書き溜めているノートや、端々に書き散らかしている過去のスケジュール帳を開いて眺めてみました。これも時間だけがある今だからできること。

「喋るように書くと必ず伝わる」(上阪徹『超スピード文章術』)のように、過去の自分が出典まで書いておいてくれるといいのですが、だいたいは言葉だけ。

「年をとるとメンタルとフィジカルが合

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ガンバレ

ガンバレ

10代の頃に出会ってしまったものは、もう、しょうがない。

暇に飽かせて、書斎というか、仕事部屋というか、物置のような部屋を整理しています。JICCって、宝島社の前身ね。

カセットレコーダーと、カセットテープが出てきたので、聞いてみました。

ヒロトが、小さい頃の話をしていました。

ああ、娘がジャニーズのインスタライブを見ているのと同じか、と思いました。

ブルーハーツを初めて聞いたのは、ラジ

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古い船を動かせるのは

古い船を動かせるのは

時代が急速に変わっていっている実感があります。

非常事態宣言が出てから2週間の間に、Web講座、Web飲み会、Web会議、Web面接、Web取材、Webピラティスを経験しました。子供たちはweb授業も。

デジタルネイティブの人たちが、実質的に社会を動かし始めていると感じます。数年前から一部で進んでいたことが、今回の蟄居で私たちの”生活”にまで到達したような。若干古めの分類になる私は、ワクワクし

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贅沢貧乏

贅沢貧乏

これからの暮らしについてボーっと考えていました。

この状況が長くなったら、どうやって生きていくのが正しいのか。

ボーっと考えていたら、森茉莉の『贅沢貧乏』が浮かんできました。

森茉莉は、森鷗外の長女なのですが、「そこらのお嬢様とはお嬢様が違う」だけあって、頭に”赤”がつくような貧しさの中、安アパートで暮らす境遇にあっても、王侯貴族のような気概で暮らしていたようです。

室生犀星が哀しみを感じ

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哀れな存在だ、と考えることをやめる

哀れな存在だ、と考えることをやめる

非常事態宣言下、雨も降っていて、仕事もなく、家で本を読んでいます。

幾度となく読み返してきた『かもめのジョナサン』(リチャード・バック)を、また読み返しています。

こんな日は、好きなこと「だけ」をするに限ります。

何度読んでも心躍るジョナサンの<限界突破>。

群れから離れひとりで生きることを決めたジョナサン。瞬間移動の方法について教えを乞うた長老チャンには、「カモメの肉体に心をとらわれるな

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おふろに入ろう

おふろに入ろう

寝ているしかないほど心身ともに疲れてしまった時期がありました。

おふろに入るのも面倒くさい。もう、どうでもいいっていうときに、たぶんウェブのどこかで出会った言葉です。

同じような気持ちの方に届けば。

おふろに入ることをどんなに「面倒くさい」と思っても、お風呂から出た後に「面倒くさかった」と言う人はいない(作者不詳)

おふろに入りましょう。

後ろ向きで、いい。

後ろ向きで、いい。

前向きな人が好きです。自分がすぐ後ろを向いてしまうから。でも、それでもいいか、と思える本のご紹介。

本棚のスペースに限りがあるので、読んだ本はだいたい古書店に持って行くか、段ボールにしまい込んでしまうか、寄附するか、場合によっては古紙にしてしまいます。

だから、本棚に残るのは、辞書類と資料本、積読(まだ読んでいない本)と、また読みなおす本くらいです。

『勇気をくれる後ろ向き名言』は、いわゆる

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小さき者へ

小さき者へ

2020年4月16日 、親を亡くした子供たちに経済的な援助を行っている「あしなが育英会」が、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、奨学金を利用する人1人当たり15万円を支援金するというニュースを目にしました。

うちの子供たちが小さいとき、私が死んだらこの子たちはどうなるのだろうと考えたことがあります。たぶん「親になった人」なら、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。

そのころ知ったあしなが

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ふりむくな ふりむくな

ふりむくな ふりむくな

本棚を整理していたら、古いファイルが出てきました。

すでに遅れてきた子供だった私は、寺山修司の作品にある”青森”を知りたくて、恐山まで行ってみたことがあります。

そのときの切符や、宿坊に宿泊を許可されたときのハガキなんかも出てきて、「おまえ、ここにいたのか」という気持ちになりました。

ファイルの中に一枚、当時の角川文庫にかかっていた帯が入っていました。

この言葉は、寺山修司が書いた『さらば

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