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往復書簡/S→N/2022年9月2日

前回の私の投稿から間もなく
家族の事情で、怒涛の夏となりました。
でも、そのおかげで?
ちょーのくんと、もりきょんくん
推しの「てんびん座」の二人が企画した
「ながさき本屋夜話」に参加でき
この繋がりの発端でもあった
小鳥書房の落合さんにも、長崎でお会いできて。

長崎に、実家以外で、行きたいところ
行ける所が出来て
地元の友達以外にも、会いたい人たちが出来て
そんな今だから、受け止めるべき現実と
向き合えるのだと、その存在の有難さと
これまでの経緯を振り返ると
涙が溢れてしまって
ちょっと距離を置いて見ていたら
いつの間にか、保護者みたいになってました・笑

短期間で、あんなに素敵な会を企画した
ちょーのくんの熱量に圧倒されたし
もりきょんくんの寄り添い方とか、立ち位置とか
二人の距離感にも、ほっこりしてしまって。

日常が一変したことで
これまでに、ウニスカさんが抱いてきた
自営業の不安も、手に取るように。
暗いトンネルの中に迷い込んでしまった7月も
makijakuとしての役割や
この先に待ち受けている企画
この往復書簡にも、私の居場所があって
それが、どんなに有難いことなのか。
手にしている「シアワセ」を大切に
今、出来ることをやりたいと
急に、思い立って、提案させてもらった
出張販売も「いいですよ」と
受け入れてくださったことも、有り難かったです。

佐賀の製作室でなくても
私が「makijaku」で居られること
その日だから、出会えたお客さんたちと
いろんな話をさせてもらって
やっぱり、私は「makijaku」で居たいなと
実感できた1日でした。

先日は、往復書簡でウニスカさんが書いた 
「精霊流し」のお話 を読んで、連絡をくれた方が
朗読して下さったとのこと。
そうしたリアクションがあると
細々とでも、こうして続けてきて良かったなと
私まで、嬉しかったです。
ウニスカさんのところは、今年が「初盆」で
これまでとは、また異なる形で
精霊流しを肌で感じられたのでしょうね。
うちは、来年です。

秋の気配を感じるようになって、迎えた9月。
ようやく製作室の見通しも立ってきて、私も大好きな季節に。

ウニスカさんからのお題は、、、
「月見」「食べ物」「残暑」
前回、私が書いた話の「君」サイドで、考えてみました。


既読も付かないから、もう、放っておいた。

3日経って、通知音が鳴り
送られてきた写真に、時が止まった気がした。
あの光景と、瓜二つだった。


カメラのワンポイントの刺繍が入った
青いハンカチを貸してくれたのは、小学5年生の頃。
家庭の事情で、転校することになり
クラスのみんなの前で、挨拶をした後
席に戻ると、溢れる涙に、隣の席の君が
右ポケットから、ハンカチを取り出して、そっと差し出してくれた。
洗濯して、翌朝、返すにも、長崎を発つ時間までに届ける余裕もなく
そのまま、思い出BOXにしまったままになっていた。


大学で写真サークルに入った私は、とある写真展に参加し
会場で1枚の写真に目を奪われた。
セピア色の教室。
窓からは、斜面地に段々と並ぶ家。
その写真の出品者が、君だと知ったのは、それからすぐのことで
展示最終日の搬出の際に、再会することになる。

面影が、あるのか?無いのか?
わからない程、記憶は曖昧だったけれど
口数が少なくて、優しい雰囲気は、変わらず心地よくて
私の一方的なアプローチで、その後も連絡を取るようになった。

高校生になって間も無く、亡くなられたお父さんが
愛用されていたカメラを譲り受け、写真を撮るようになって
あの学校、あの教室を撮影に行ったのは
小学校の廃校が決まったからだったと。


瓜二つの光景は、野母崎の海。
もう行くこともなくなった
私の父方の祖母の家があり
その近くで、撮ったものだった。

ルーティーンで自らを縛りがちな君が
部屋を出て行ったのは、初めてのこと。
強がって、気にしていないふりをして
自分を騙そうとしても、心はザワついていた。
久しぶりの一人の休日も、もて甘し
開いた本の文字を追って、なぞっても、内容は入って来ない。
グラスは、私の手をすり抜けて、落として割ってしまうし
もう帰って来ないんじゃないかと
私と母を置き去りにして、出て行った人のことを思い出しては
不安が暴走する。

大学卒業後、同じ町で就職した私たちは、同棲して5年になる。
お互いに波もあるし、もともと、はっきりした性格の私は
煮え切らない君に、きつい言葉を放ってしまいがち。
PMSの影響と、残暑に嫌気が差し、イライラして
また、やってしまったのだった。

君が、ドMで、私が、ドSなら
もう、ピッタリなんじゃない?

そのままの君で十分だと思ってるのに、うまく伝えられない。
君自身にも、ありのままの自分でいいと、自信を持って欲しいだけなのに。

普段では、あり得ない君の行動に
追いつけない自分が居た。
そうか、私の想いばかりを押し付けて
君を縛っていたのは、私だったのかもしれない。

返信もできないまま、涙は溢れ続け
オレンジ色の写真は、歪んで揺れる。

「明日、帰る」
続く言葉が、追い打ちをかける。

震える指で、「待ってる」と打ち込み
ハンカチで涙を拭った。

影ができる。
海面に浮かぶ海月のように
紺色の楕円は、いくつも繋がって
やがてその海を覆いつくした。

来週の君の誕生日
今年は、中秋の名月なんだって。
お団子も、豪華な料理も作れないけど
お月様みたいな
まあるいパンケーキ作るから
二人でお月見しながら、お祝いしよう。

君が望むなら。


「お話」を考えるのが、楽しみになってきました。
ウニスカさんに「描写が上手い」と言ってもらえたからかな?
あんなにも遠ざけてきた「物語」も、短いものは読めるようになって
その奥深さに、考えさせられるし、昔とは違った視点で見ています。

先のことなんて、わかりませんが
物語の中では、いや、現実でだって、きっと「自由」なはずですね。

次のお題は
「秋空」「おくんち」「柘榴」
今度は、ウニスカさんの頭の中に
どんな世界が広がるのか、楽しみにしてますね☆

makijaku

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