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目的地まで
2年ぶりに
年末年始を地元・長崎で過ごす
帰省は
家族と一緒に
団体行動することが
当たり前だった昨今
今回は
私だけ先に
JRで帰ることに
本当は窓際で
有明海を眺めながら
帰りたかったけど
佐賀から乗車すると
それ以前に乗車されてる方が
いらっしゃるだろうし
今回は
座席を予約する時点で
あえて
通路側を選び
誰かが座っている前を通る
という動作をしない方を優先した
窓際に座っていた女性は
スマホを片手に
時々
窓から見える風景も
撮ったりしていて
ともすれば
それが
私だったかもしれないその光景が
微笑ましかった
この日は
朝から雨で
空は真白な雲に覆われていて
海もまたそれを映し
その境目が分からないほど
そんな風景を横目に
それぞれの目的地が
同じ方向にある
この人たちと共に
同じ車両に居合わせていることが
何処か面白くも感じた
諫早に到着する直前
窓際の女性が
バタバタと
降車の準備を始めたので
私も慌てて 一旦 通路へ
彼女が荷物棚に入れていたものを
取り出すのに
むしろ邪魔になりそうだったので
座席に戻り窓際で待機する
駅に到着すると
一瞬
はっとして
「浦上だと思いました」と呟いた
一駅
勘違いされてたよう
会釈して微笑むと
私に
そのまま
窓側に座ることを促した
思いがけず
2駅分だけ窓際に座る
海は
もう見えないけど
霧がかった街並みや田畑
いくつかのトンネルを抜ける
真白な世界は
途端に真っ黒になる
その瞬間
窓に映る自分の横顔が
より鮮明になって
ドキっとする
明るくて
見えにくいもの
暗いから
はっきりするもの
そんなものも
あるのかと
考えてるうちに
浦上
そして終点
長崎
噂通り
そこには
私が知る駅の面影は無かった
雨は
弱くは
あるものの
確かに降り続けていて
鞄に入れていた
折り畳み傘を広げる
私の体と荷物は
はみ出てしまう小さな屋根
でも
無いよりは断然良い
電停へ向かい
蛍茶屋行の電車に乗った
新大工に着くころには
貸切状態
さっきの彼女みたいに
私もスマホを取り出して
窓からの風景を撮った
懐かしい街並みに
ところどころ
新しい建造物
一人での
電車での移動
全てが新鮮過ぎて
これが現実なのか?
わからなくなる
この先に待ち受けている
試みもまた
初めてのこと
少し浮足立ちながら
でもしっかりと
一歩一歩
ここに私が居ることを
確かめながら
目的地へ向かった
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