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㉜ユニークなアクセサリーのクリエーター達

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アクセサリーに強い興味があって過ごしてきたわけではなく、
むしろ、面倒くさがりで、あまり装飾品に関心を持ってこなかったのに、
こうしてアクセサリーのクリエーターさん達と仕事をしているのは、
実は、他ならぬ私が、かなり不思議な気がしています。

思春期の頃、
皆がまだ世界の名著をきちんと読破していた時期に、
これがフランス人の感性というものか、
と背伸びをしてサガンやコレットを
わかった気になって読んでいました。

そのサガンの翻訳者である憧れの朝吹登水子さんが
ジュエリーに関する本の序章で
このように書いていたのを、最近見つけました。

「つねに人間に関心をもっている私は、
人間が感じたり、考えたり、創ったりしたこれらのものに深い愛着を感じる。

シュメールの、エジプトの金属細工師たちは、どんな人間たちだったのであろう。

彼らの創ったジュエリーは、創った職人の額や体を飾らなかったかもしれないが、
それらを身に付けた王たちの肉体が滅びた後も、彼らのジュエリーは、
ロンドン、カイロ、ルーブルなどの博物館の中で今日もなお生き続けている。

-中略-

私が長い歳月にわたって住んだパリという都(まち)の、香りと感触を持った宝石は、
ささやかなものでも、私の心に近い。」

この一節に、私自身の心も近い、かもしれない。

光り輝くジュエリーそのものよりも、
それに関わった人、物語、歴史に興味があります。

それが宝石や金などの貴金属をほどこしたジュエリーでも
所謂コスチューム・ジュエリーでも。

そして、制作している作家さんとのコミュニケーションに心を動かされます。

(注釈:
コスチューム・ジュエリーとは
貴金属、金、プラチナ、宝石などの高価な材料を使って作るジュエリーと区別されるもので
ファッション性を重視して作られた装身具を指す。
金属、布、ガラス、ゴムなど表現にふさわしい素材がなんでも使われ、
その時代の流行や世相に合ったものが、次々と打ち出されてくるのが
コスチューム・ジュエリーの特徴である」
「コスチューム・ジュエリーの世界」田中元子 より

シャネル、スキャパレリ、トリファリ等、ファッションブランドのアクセサリーというと
イメージし易いですね)


パリの服飾アーティストから紹介されたSégolène(セゴレン)は、
出会った当時、パリのグラン・メゾン「ピアジェ」を一旦辞め、
自分のブランドを立ち上げて創作活動を開始したばかりでした。

自分の資金で、できる範囲で加工費を捻出していたので
世界観の追求と販路獲得は彼女の大きな課題でした。

彼女のテーマは自然の織り成す美。

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素材はホワイトゴールドと宝石、というわけにはいかず、
シルバーと乳白色がかったアクアマリン・タイガーアイ・モンガナイトなど
半貴石でしたが、十分に伝わるものがありました。

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しばらくして、自分のブランド活動を休止し、
今はパリのリッツホテルの向い、
高級宝飾店が並ぶヴァンドーム広場にある
名前を言えば誰もが知っているグラン・メゾンD**rの
デザイナーの一人として経験を積んでいます。

今は彼女の契約上の制限があり、
時々SNSで近況報告をしあうにとどまっていますが、
彼女ともまたいつか一緒に仕事をしたいね、と話しています。

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ImmanaParisさんは
単身パリに渡り、フランス人に混ざって学校を卒業し刺繍のディプロムを取り、
普段は服飾の世界でオートクチュールのドレスを飾る刺繡を施しています。

並行して自身のブランドを立ち上げて、
アクセサリー制作活動を続けています。

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ジョエルはセーブル フランス国立陶磁器製作所の
金つけのアーティストで
受講していた西洋美術史講座の先生から紹介を受けました。

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セーブルの仕事と並行して、
自身のブランドでアクセサリーやオブジェを
制作しています。


各分野のトップクラスの現場で仕事をしてはいても、
そこの方針に合わせて制作をせざるを得ず、
葛藤が生れるのでしょう。

彼女達は
どんなにハードスケジュールであっても
制作がなにより好きであり、
基本的には、そこに時間とエネルギーを使いたいと考えています。

その真摯な制作姿勢に感銘を受けた私ができることは
やはり
「商品を魅力的に紹介し、
販路を作る、
信頼できる紹介役」

であること、
なのだと思っています。

ちょっと話はそれますが、
私が今パリに仕事で行くときは、Neuilly(ヌイイ)との境界近く
アメリカン・ホスピタルまで徒歩5分のLevallois(ルヴァロア)のアパルトマンに
滞在しています。

Neuillyは私が2年余り住み、
サルコジ氏が市長を務めたことのある、パリ市に隣接する街です。

メトロの1番線でルーブル美術館まで20分、
ブローニュの森も徒歩圏内、
パリの良さと緑の多い郊外の良さを併せ持つ、
私に最高のフランス在住期間を提供してくれた場所でした。

その自分のテリトリーに滞在できるのは、
利便性・安全性をはじめ、あらゆる意味で恵まれていると思います。

この仕事を始めてすぐの頃、
持ち主の方が、このアパルトマンの使用を申し出てくれました。
彼は大学の講師をしていらっしゃるので3月と9月にパリに滞在しますが、
その期間を除き、
本当に有難いことに、
私の渡仏の際の仕事の拠点として使っては、と提案してくださったのです。

「私にお礼をなどと考えないでください。
貴方ができる時に、応援してあげたい人に、できることをしてあげてください」
と、なにか謝礼をという私の申し出を固辞されます。

いまだそんな器ではないですし、
誰にでも、というわけにはいかないですが、

仕事でもプライべートでも、そう思える相手には
自分のできうる限りのことを尽くせたら、
気持ちに添えたら、
と思っています。

Giftを最初から期待して、行動するわけではないのですが、
目の前の「今の課題」に心を尽くすと、
自然と、自分の周りも
ポジティヴに物事が循環していく。
感謝とともに実感している今日この頃です。

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