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三浦大知「Everlasting Love 」/天才には、天才のすごさが分からない

makicoo

前回のコルクラボの研究対象は「Showroom」という、主にアイドル志望の子がよく利用する動画配信サイトだった。このサービスについて、コルクラボ内では、賛否両輪。特に「天才」のクリエイターと直に触れたことがある人ほど、「Showroom」でよく放映されている、「未完成な素人芸」に対して嫌悪感があるようにみえた。

確かに「天才」というのは未完成であっても、既に「芸」になっている。たとえば三浦大知だ。彼は1997年、9歳の時に、「Folder」というグループのメンバーとしてデビューした。「Folder」は安室奈美恵やSPEEDを産んだ、沖縄アクターズスクールのメンバーで構成されたグループ。今は女優として活躍する「カルテット」のすずめちゃん役、満島ひかりも、実はこのグループ出身だったりする。

この「Folder」がデビュー当初からなんとも奇妙だったのは、どんなファン層を想定していたのかよく分からないことだ。メンバーは全員で7名。小中学生で構成され、うち5名は将来の安室奈美恵になりえそうな、容姿端麗な女の子。そんな情報だけを聞いたら、誰もがAAAのように、メンバーがかわるがわるボーカルをとる、そんなフォーメーションを想定するんじゃないだろうか。

にも関わらず、Folderのデビュー曲「パラシューター」のPVはそんな期待を大きく裏切る。

一番背の低い三浦大知がセンターという違和感がすごい。
ただ、彼をセンターに据えたかった理由も分かる。抜群に歌が、上手い。

第2シングルはバラード。

2作目にして、他メンバーはコーラスすらない。

第3シングルも同様に三浦大知だけが、ただ歌う。

第4シングルは「ジャカジャカジャンケンポン」という、彼らと同世代である小中生に向けたと思える曲。が彼が歌うと、ソウルフルなナンバーになる。

第5シングルはツインボーカルとなる。が、三浦大知がうますぎて、他ボーカルパートとのバランスがよくない。

そのせいもあってか、第6シングルはまた三浦大知のみが歌い、そして選曲もマイケル・ジャクソンのカバーとずいぶんと振り切る。

そして「Folder」としての最後のシングル、第7シングルにいたっては、アーティスト名が「Folder feat. DAICHI」となり、とうとうMVに登場するのは、三浦大知だけ、となる。

ただなんでこんなMVにしたくなるか分かるように思う。
歌が、最高にいい。
だからそのほかのものは全部、なくていい。

この歌がすごいのは、その「声」にある。この声は、変声期を迎える直前の少年が、人生の本当に短い間にしか出せない声。そしてこの時期の少年は本来歌がそこまで上手くないから、その声で、こんなニュアンスがある歌い方ができないのだ。

三浦大知を除いては。

私は初めてこの曲を聴いた時、「奇跡」だと思った。そして彼しか登場しないMVと「Folder feat. DAICHI」というアーティスト名は、これを世の中に残すために、彼の周囲の人がとった苦渋の策だ、そう感じた。

その後三浦大知は声変わりを理由に「Folder」を脱退。「Folder」はその後「Folder5」となり、再出発をきるも、そこまでぱっとしないまま、しばらくして解散した。

2017年現在、三浦大知は代々木体育館での公演を1分でSOLD OUTにする。

冒頭の話に戻ろう。私は「Showroom」が好きだ。何故なら「Showroom」は天才じゃない人のためのサービスだからだ。天才というのは自らが動画配信なんかしなくても、周囲の人がその才能を広めたい、と勝手に動くのだ。「Everlasting Love」を「Folder Feat. Daichi」として、少しでも多くの人に届けたい、と考えただろう人たちのように。

だけど天才じゃない「ふつうのひと」は、世に出たいと思ったら、工夫するしかない。「未完成な素人芸」を何とか天才に近づけようとして、だけど圧倒的に才能が足りない分、工夫を重ねるしかなくて、そんな人にとって「Showroom」というサービスは希望の星、なのだ。

そして、こうも思う。天才には、天才のすごさは分からない。ただ歌うだけで、ひとを引きつけてしまうことが、どんなにすごいことなのか。

天才じゃないからこそ、天才に魅了されて、心が震える。すごいものをみていると理解することができる。それは「ふつうのひと」の特権。だから天才を羨むだけの人生はやめよう、そう心に誓っている。

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