その日は台風が接近していて 昼間から雨が降っていた。 ある日曜日、 いつもの友人と飲んで恋愛話になる。 連絡しちゃいなよ! というやりとりの中で 彼に連絡を取った。 飲みに行こうよ! 5分足らずで返事がくる。 いいよ!来週はどう?忙しいかな? そんなスムーズなやりとりで あっさりとその日は決まった。 お店は彼が予約してくれた 和食のお店。 待ち合わせは雨が降る都心の19時。 改まって会うのは8年振りだった。 相変わらず歩くのが早い。 あの頃もいつだっ
親友が、この秋に結婚します。 私にとって彼女は、 ある意味私の人生を変え ある意味私の人生を変えないでくれた人。 彼女がいなかった人生なんて、 想像できません。 想像したくありません。 出会いは高校生の時。 彼女はとにかく目立つダンス部で、 一年生の時からなんとなく名前は知っていて、 私の数少ない中学生の時からの知り合いと 夏の2ヶ月だけ付き合ってるらしいよと 風の噂で聞いた子でした。 高校3年生の時に同じクラスになりました。 彼女は、ダンス部のイケイケな
ずいぶん前に長い間片思いしていた人から、 突然連絡がきた。 『突然連絡してごめんね。 元気にしてるかなと思って。』 彼との出会いは、高校に入学してすぐの頃。 同じ学習塾の同じクラスだった。 初めて彼を認識したのは、 たしか高校一年生、4月の寒い雨の日 塾の教室、一番奥の前から二番目に座っていた。 金髪で(ノリで先輩と染めたんだと後から聞いた)、 それを隠すためにグレーのパーカーのフードを深く被っていた。 先生に「お前頭どうしたんだー」とか言われて、 みんなで笑っ
私は、LINEの着信音が嫌いだった。 毎日のように聞かされるその音に、 恐怖すら覚えたことがある。 一週間前は満開に咲いていたのに すっかり葉桜になってしまった。 日常の色が、 人々の暮らしが、 一日一日大きく変わっていた。 天気は、曇り。 少しだけ肌寒い。 夜から雨が降るらしい。 朝起きてからずっと、 静かな部屋のベッドの上で過ごしていた。 夕方、16時頃だった。 iPhoneから、あの着信音が鳴る。 一瞬、胃がヒュンっとなる。 好きな人からの電話だ
自分が好きな人を大切にするんじゃなくて 自分を好きでいてくれる人を大切にする。 どこかの誰かが言っていた、 これは恋愛において重要らしい。 自分を好きになってくれた人は、 たしかにいた。 今までに何人かいた、と思う。 本当に好いてくれていたかは分からないけれど、 少なくとも『好きだから付き合ってほしい』とか そういう類の言葉を彼らはこんな私にかけてくれた。 それから付き合った人もいれば、 そうならなかった人達もいた。 私は元来はっきりものを言えない性格で (こ
世界一好きな人と過ごす夜は、 世界一幸せな時間と知った日。 風の強い、春の陽がとても眩しい、暖かい日 田舎の、広くもない、きれいでもない、 海の近くの、天井の高い、アパートの1階 一緒に適当な料理をして食べて 一緒にテレビを見て笑って 一緒にYouTubeを見て 一番に同じゲームをして いつかここ行きたいね、なんて話して 一緒にホラー映画を見て 怖いからって言い訳して手を繋いで寝て 寝ている彼の背中に向かって 好きだよ、なんて言ってみたりして 気付いてるんだろう
うわ、寝坊した、と思って慌てて起きる。 時計を見ると、アラームが鳴る時間まであと1時間あった。 ひどい、おそろしい、仕事の夢を見ていた。 でも、あながち間違った内容ではなかった。 朝の電車の中で、ずっと好きな人のことを考えた。 何をそんなに考えることがあるのか。 次のデートや約束があるわけでもないのに。 苦しくて、一人で泣きながら歩いた道を思い出した。 寂しい女だ、と 隙だらけな女だ、と 変な男に攫われちゃうから 絶対に外で一人で泣いたらだめだよと 別れた彼氏に言わ