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世界一好きな人と過ごす夜は、
世界一幸せな時間と知った日。


風の強い、春の陽がとても眩しい、暖かい日

田舎の、広くもない、きれいでもない、
海の近くの、天井の高い、アパートの1階



一緒に適当な料理をして食べて
一緒にテレビを見て笑って
一緒にYouTubeを見て
一番に同じゲームをして
いつかここ行きたいね、なんて話して

一緒にホラー映画を見て
怖いからって言い訳して手を繋いで寝て

寝ている彼の背中に向かって
好きだよ、なんて言ってみたりして
気付いてるんだろうと思いながら
黙ってそっとキスしてみたりして


私たちの関係って?

なんてそんなこと聞いてしまったら
関係が変わってしまうのも目に見えていて

そんなことなら今のままが一番幸せなのか

それとももっともっと
お互いが幸せになれる別の道が待っているのか



歯ブラシ、立てて置いていっていいからね

そんな一言に期待してしまうなんて
なんて愚かな女なんだろう



ありがとうねって数え切れないほど言って


一人で帰る道は、さむくてさむくて

今までよりもずっと
ずっとずっと彼を好きになってしまっていて

愛おしく、思ってしまっていて


帰り道の桜は散り始めていて
空からはお天気雨が降っていて


でもね、
今日は泣かなかったよ

こんなことでも彼は褒めてくれるかなと

考える全てのことに彼が出てきてしまうなんて
なんて愚かな女なんだろう



春は、

風の強い、春の陽がとても眩しい、暖かい日は、

これから何度も訪れてくれるだろうか。






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