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私は、LINEの着信音が嫌いだった。


毎日のように聞かされるその音に、
恐怖すら覚えたことがある。



一週間前は満開に咲いていたのに
すっかり葉桜になってしまった。

日常の色が、
人々の暮らしが、
一日一日大きく変わっていた。

天気は、曇り。
少しだけ肌寒い。
夜から雨が降るらしい。


朝起きてからずっと、
静かな部屋のベッドの上で過ごしていた。


夕方、16時頃だった。

iPhoneから、あの着信音が鳴る。
一瞬、胃がヒュンっとなる。



好きな人からの電話だった。



普段は電話なんてかけてこない。
こちらからかけても、決まって数時間後に
「ごめん、寝てた」
とメッセージがくるくらいだ。



電話に出ると、向こう側は電車の音がして、
外を歩いているようだった。



私は、今日見た映画の話をした。
好きな人は、その映画を見たことがあると話してくれた。

好きな人は、見たい映画の話をしてくれた。
私は、その映画を見たことがあると伝えた。


早く会いたいね。
一緒にあの映画を見よう。
それから天気の良い日に一緒に海に行こう。
昔から行ってる思い出の海岸があるんだよ。


iPhoneから流れてくる言葉を聞きながら、

私は頷いていた。


夜またかけるね、またあとでね。
そう言って電話が切られた。


通話履歴の17分をしばらく眺めた。


気が付くと、
また静かな部屋で、ひとりに戻っていた。


好きな人と同じ時間を過ごせるのは、
幸せだと思った。



夜、真っ暗な部屋で、目を閉じる時

好きな人から発せられた言葉を思い返して、
もう一度飲み込んだ。

そういえばあの話もこの話もしたかったな
そんなことばかり考えていた。


あの着信音も、
好きな人からの言葉の一部ならいいな。


おやすみ、
風邪ひかないようにね



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