富士山登頂ツアー1人で参加してみた vol.2
プシューっとドアが閉まって、バスが動きだす。
ハキハキと喋る添乗員さんの挨拶が始まっていたのだが、私は内心それどころではなかった。
頭の中が整理できず混乱していた。
何故、会社の上司がここにいるんだ?
もし、偶然ならば、
こちらに気付かないで欲しいと強く願った。
このツアーのバスは2台に別れて出発している。
百歩譲って偶然であっても、どうして同じ車両なんだ??などといろいろと考えていたら、既にバスはPAに到着したようだった。
私は上司が降りたのを確認してから、恐る恐るバスから降りた。
周りを見渡しても、上司はいない。
よし!いまだ!
トイレを済ませ、何かお腹を満たしておこうと買い物を済ませ、バスに戻ろうとしたところ・・・
後ろから声をかけられた。
聞き覚えのある声にギクっとし、私は声のする方に顔を向ける。
なんか買ったの??
と上司は何食わ顔で私に尋ねてきた。
その話し出しから、私がいる事を最初から知っていたようだと悟った。
いや、、、何故ここにいるんですか?と私は問いかけてみた。
俺も富士山、登りたくなってさぁ〜と、上司はあっけらかんと答えた。
私の気持ちを逆撫でしてくるようにズケズケとものを言ってくるところが本当に苦手だ。
いや、なぜ同じツアーなんですか?
他にもあるでしょうに。
と私は少し苛立って言った。
だってこれしか空いてなかったんだもん。
と上司がいう。
開いた口が塞がらなかった。
あの時私から聞き出したのはそのためだったのか・・・
すみませんが、プライベートですので・・・
と、さすがに話しかけないでとは言えなかったが一方的に会話を終わらせ、ササっとバスに乗り込んだ。
とまぁ、こんな感じにツアーが始まった。
最悪のスタートである。
バスはPAを出発し、富士山五合目のPAに向けて走りだした。
いやいや、せっかく富士山に登るんだから、と、必死に平常心を保ちつつ、私は隣の席の人との会話を楽しんだ。
いないものだと思えばいいのだ。
と自分に言い聞かせた。
バスは富士山五合目のPAに到着。
やまどうぐレンタル屋でウエアなどを予約していたものを取りにいき、着替えを済ませる。
よし、頑張ろう!と気合いを入れた。
ようやく登山開始である。
ツアー総勢40人ほどで列になり登っていく。
私はバスの隣の席の人と仲良くなり、隣同士で登る事にした。
他愛もない会話をしながら、写真を撮りつつも非日常の景色を楽しんだ。
なんて楽しいんだろう。
と思っていたのも束の間、6合目を過ぎ、7合目あたりよりだんだんと息が上がってきた。
道が険しくなってきたのである。
ゆっくりと陽が落ち、辺りは真っ暗の中、山道を登っていく。
登山ガイドさんが山の説明をしながらも、ペースを計算しながら登ってくれているのがとてもありがたく、私は必死についていった。
こまめに休憩があるものの、上をみて息を整えながら星をみるので精一杯で、写真を撮る余裕もなかった。
途中、天候が悪くなり、雨が降ってきたので
雨ガッパを着用し、雨に打たれながらも、黙々と歩いていく。
五合目とはまるで季節が変わったかと思えるほど気温差があり、持ってきていたフリースを重ね着し、冷えないように注意しながら進む。
上司の存在もほとんど忘れていた。
途中、何度か話しかけられたけれど疲れてたので適当にあしらいつつ、そのあとも黙々と歩き、ようやく八合目の山小屋に到着!!
たくさんの登山客が吸い寄せられるように山小屋へ入っていく。
やっと休める!!
へとへとだった。
夕食はハンバーグカレーだった。
お腹は空いてたので、食欲はある。ペロリと、平らげた。
幸い、私は高山病の症状はなかったが、一緒に登っていた隣の席の人は食欲がないと夕食を残していた。
時刻は夜の8時頃で、あと約4時間後には出発しなければならない。
とりあえず早く寝ようとダンゴのように山小屋の就寝スペースに潜り込む。
そう、一人ひとりのスペースが限られていて、とても狭いのだ。
ぎゅうぎゅうに押し込められながらも眠りについた。というか、気がついたら寝ていた。
〜つづく〜
⚠️これはノンフィクションです⚠️
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