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テレビやゲームが脳に与える影響「ゲーム障害」という新たな病。

『ADHDの正体―その診断は正しいのか』を読みました。


子どもの脳に加えられる情報環境の影響。それが原因で【疑似ADHD】を生じているケースがあるそうです。

子どもの脳に加えられる情報環境の影響…

▶つまりテレビやゲームなど。

テレビやゲームが脳に与える影響は大きく、将来大人になったときの注意力の問題にもつながります。

気付いた時には「(大人の)ADHDです」と診断されているかも・・・。


ちなみにゲーム障害という病気があるのを最近知りました。


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今回の文献はこちら『ADHDの正体―その診断は正しいのか』精神科医、岡田尊司氏の著書です。

本書に書かれていた「テレビやゲームが脳に与える影響」の部分を簡単にまとめます。


テレビが映らなかった村にテレビケーブルが引かれた結果

ブリティッシュコロンビア大学のタニア・ウイリアムスの比較研究。

<研究内容>
電波障害のためテレビが映らなかった村にケーブルテレビが引かれました。そこで引かれる前と引かれてからの二年間で、村民たちの状態や能力を比較した研究。


<結果>
・テレビが来る前には、読解力や創造的な能力において全国平均を大きく上回っていたが、一年後には全国平均と変わらないレベルに低下した。

・攻撃的な言葉遣いが目立つようになった。

・ケンカや暴力も増え、身体的な暴力は2.6倍になった。


<ポイント>
・顕著な変化が認められたのは、大人よりも子どもであった。

・もっとも著しい変化が見られたのは行動面であった。


ごく幼い時期に長時間画面を見た結果

アメリカで行われたコホート研究。

<研究内容>
875名を対象に、1977年から22年間、8歳児が30歳になるまでを追った調査。


<結果>
8歳の時点で長時間テレビを見ていた人ほど、30歳の時点で攻撃性や犯罪歴、子どもへの身体的虐待など、問題を抱えやすくなっていた。


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"こうした影響は、テレビに他の活動の時間を奪われることや行動の模倣・学習による面もあるかもしれないが、テレビを多く見る子どもたちは、親が忙しく、愛着の面でも不安定な要素を抱えていたのかもしれない。"


加えて、近年、ごく幼い時期に長時間画面を見ると、中枢神経系の発達に直接影響し、行動抑制や注意力の問題が起きる可能性も示唆されています。


1歳半の時点でテレビを見る時間が長い幼児のその後の行動および社会的結果

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日本にある社会技術研究開発センターの推進プロジェクトとして行われた研究。(出典:PMID: 20179364

<研究内容>
18か月および30か月の子供の初期のテレビへの露出と、30か月の年齢での行動および感情の結果との関連を調査。


<結果>
・1歳半の時点でテレビを見る時間が長い幼児は、2歳半の時点で不注意や多動が強まる。

・一方で、向社会性(他の子と仲良く遊んだり、困っている人を助けたりする傾向)が低下する。


興味深いのは、2歳半の時点での不注意や多動、向社会性が、その時点でどれだけテレビを見ているかよりも、1歳半の時点でどれだけテレビを見ていたかに左右されるということ。

---<ポイント>---
神経発達の活発な幼い頃ほど、テレビの与える影響が大きい!
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この研究によると、1日4時間以上テレビを見る1歳半の幼児は29.4%もいるそう。2歳半の幼児では24.5%。


もう少し年齢が上がれば、ゲームやスマホなどに熱中する子どもが多くなります。

”ゲームやスマホもテレビと同様に、長時間の使用が高じると、注意力や行動抑制、向社会性などに影響することが明らかとなっている。”出典『インターネット・ゲーム依存症』岡田尊司


さらに、トータルで画面を見る時間が子どもの時点だけでなく、将来大人になったときの注意力の問題につながるという研究結果も示されています。

出典:"Television and video game exposure and the development of attention problems" PMID: 20603258


「ゲーム障害」がWHOの診断基準に正式な疾病として認められた

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2018年に「ゲーム障害」がWHOの診断基準に正式な疾病として認められたとの事。

そんな病気があったなんて…。

非常に大きな影響を脳に直接及ぼすようになっているのが情報メディア環境。

▶つまり、テレビやスマートフォン、ゲームなど。


様々な研究から、特に幼い頃の影響が大きいということが分かりました。

でも皆さん当たり前のように子供に、テレビやスマートフォンを見せていますよね・・・。

小学生なんかはもう当たり前のようにゲームに依存しまくってるのでは?


筆者は、脳が発達段階にある子どもが長時間ゲーム漬けとなり、麻薬に匹敵するような強い依存性の虜になってしまったら、どうなるのか・・・。という内容の事を『脳内汚染』でも語っています。

そして、

ゲームやネットへの依存を防ぐ方策の一つは、「使用の開始を少しでも遅らせることだ!」と言っています。

”幼児期はできるだけ使用せず、学童期になってからも、しっかりとしたルールを作って短時間だけに限ることが重要である。”

とはいえ、時間を制限すれば片付くというほど単純ではなく、そこには他の依存症同様、もっと別の問題がかかわっているといいます。


ではすぐにゲームを取り上げてしまおう!

って、なりそうですが、ちょっとお待ちください。


▶依存の背景には不安定な愛着があるかも…


著者は実際、依存症だからと、無理に止めさせたり、取り上げたりしても、事態は改善するどころか悪化してしまうそうです。


なぜなら、ゲームやネットに依存するのは、多くの場合、現実の生活に居場所をなくし、現実の世界で味わうべき喜びを見いだせないからでもあるからだと、著者は言います。


▶不安定な愛着がゲームやネット依存のリスクを高めてしまうことも裏付けられている!


では必要なのは…

”必要なのは、家庭の安全基地機能を回復させ、愛着の安定化をはかることだ。それができれば、ゲームやネットに逃げ場所を求める必要性も薄らぎ、自分が本当になすべきことは何かを考えるようになっていく。”


さらに詳しいことが著書に書かれているので興味のある方はこちらをどうぞ。

↓ ↓ ↓

ADHDの正体―その診断は正しいのか
岡田尊司

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