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社会人学生が修士課程で学ぶ場合の留意点②(博士課程への進学)

社会人学生が修士課程で学ぶ場合の2点目の留意点は、博士を目指す場合です。

専門職大学院は、研究というよりも、実学が中心になります。
このため、社会人にとって、学びやすいカリキュラム構成になっています。
ケーススタディの授業が重視されるのが、よい例だと思います。

勤務経験がある学生が中心のため、具体的な事例を交えた、内容の濃いディスカッションが進みやすく、MBAの修了者などは授業でのディスカッションを、在学中で印象に残った学びとして紹介しているのを、大学院の募集パンフレットなどで目にすることも多いと思います。

また、2年間の学びの集大成である修士論文も、自身の仕事の内容をテーマにしたものが中心になっているようです。

一方で、博士課程での取り組みは、研究が柱(というか、研究がすべて)になります。
博士課程の研究は、新規性、有用性、信頼性が求められ、修士課程でその前段の訓練を受けておくことが前提になります。

訓練の場は、学会発表であり、査読論文の投稿でしょう。
しかし、専門職大学院では、学会発表や査読論文の投稿は求められません。
なので、通常の大学院に比べて、ある意味、楽かもしれません。
(ただし、座学や、課題のボリュームが尋常ではなく、別の意味での大変さはあります。これが、鍛えの場になり、修了すると、一皮剥けた状態になるということになります。)

このため、同じ経営系大学院であったとしても、MBAの学歴では、博士課程で受け入れてもらえないという場合があります。
もし、修士止まりでなく、博士の進学までを視野に入れている場合は、専門職大学院から目指す博士課程に進学可能なのか?(指導教官に受け入れていただけるのか?)、をよく調べておいた方がよいと思います。

では、ワタシの場合、専門職大学院の学位から、なぜ博士課程で学位を取得することができたのかを、少しご紹介します。
博士課程に合格するには、指導を受け入れていただける、指導教官をどうするか?
これが、要件になります。

博士課程に合格して、さて、どの先生に指導を仰ごう?
という順番ではないということです。
先に指導をお願いしたい先生と下話をしたうえで、その大学院を受験することになります。

ワタシの場合、専門職大学院の指導教官が、同じ大学の別の専攻科にも籍を持たれていて、そちらで博士学生の指導教官として学内の認定資格を持たれていました。
このため、専門職大学院でしたが、修士のときの指導教官に、博士の指導もお願いすることができました。
ただし、博士進学の時は、指導教官がもう一つ籍を置いている研究科を受験して、合格というステップを踏みました。
なので、同じ専攻科からの修士→博士の進学ではないということです。

前にも書きましたが、専門職大学院に入学した時は、博士課程への進学は、全く頭にありませんでした。
修士の途中(1年目の秋頃)に、学ぶことが楽しく、このままもう少し研究を続けてみたい、、と思うようになってから、いろいろと情報を集めはじめました。
この想いを、指導教官に相談したときに、先生がそのまま指導することが可能とのお話をいただくことができたため、ワタシの場合は、博士課程に進むことができました。

指導教官からしてみると、地元の県庁職員の学生を預かるということは、学内のご自身のブランディングに、少しばかり効果があったことも、受け入れていただいた理由のような気がします。
最近の地方の大学が重視することとして地域連携が、大きな柱としてあります。

ワタシの研究内容は、県庁の実務に関連する課題を取り扱っていたので、指導教官はワタシ(=県庁職員)を指導することで、地域の課題解決に貢献しているというロジックです。
指導教官からは、大学内の様式が、ポンとメールで送られてきて、その大学内の地域連携の実績書類については、ワタシが代筆(=自分の研究内容の経過を記載)していましたのでw


ワタシはこのように、専門職大学院→博士課程という、イレギュラーな道をたどりましたが、同じ県庁の方で、専門職でない通常の大学院→博士課程という道をたどって、学位取得をされた方もおられました。

ワタシが勤めていた県庁では、大学院通学による時短勤務が認められていました。
当然、時短分の給与はカットされるのですが、その方は、この制度を利用して、専門職大学院ではない、普通の大学院で学ばれておられました。
修士課程の間は、所属も配慮されて、出先機関の楽な部署だったと思います。

夫婦ともに県庁職員で、一方がその制度を利用して、午前中だけの出勤が認められていたようです。
地方で夫婦揃って公務員というのは、世帯年収からみると、かなり恵まれています。
この方のように、半分の時短制度を利用しても、軽く世帯年収は一千万円を超えるでしょう。なので、ある意味、収入の担保もあったため、この時短勤務制度を利用することも可能だったのではないかと思います。

しかし、この方は、修士終了後、その反動で、なんだかめちゃくちゃ忙しそうな部署に飛ばされて、大学院通学のための時短勤務制度が使えない(多分、所属長が業務多忙や、人員不足を理由に認めない)職場になったと伺いました。

にも関わらず、その方は、そのまま博士に進学されて無事学位を取得され、ワタシと同じようにアカデミックに逃げた(転身した)ようです。

これは、博士課程が、理工系以外であれば、大学での実験という拘束がないため、忙しい部署に飛ばされても、大学に通学することなく、修了することが可能という、よい事例ではないかと思います。

余談ですが、ワタシのいた県庁では、例えば政策研究大学院大学のような、職場から国内留学や、コンサルや電通に派遣される制度がありました。こうした制度を利用して、東京で遊ばせてもらうと、卒業後の配属は、めちゃくちゃ変なところ(いわゆる体力勝負のブラック職場)に配属されるのが常でした。

これは、国の本省に派遣される場合も、県に帰任するときは、派遣先の省庁とは、全く異なる分野の部局(これも、なんだかブラックで、絶対に異動希望の調書に記載されないようなところ)に飛ばされていました。
こういう国内留学や、省庁派遣から戻ったあとのブラック職場配属で、何人も心や身体が破壊された方を見てきていましたが、人事課は、そうした配属を一向にあらためる気配はありませんでした。
ワタシのいた県の人事課は、職員=消耗品、という程度の認識だったと思います。

こうした人事課のやり方を見ていると、ちょっと考えれば、東京に派遣されるのは、その1年は楽しいが、帰任したら、体壊すリスクが大きい職場に飛ばされる可能性があるということがわかりそうな気がするのですが、毎年、希望者がとても多いというのは、見ていて正直、バカじゃないか?と思っていました。

余談が長くなりましたが、もし、地方公務員の方で、職場にこういう学位取得のための時短勤務制度があり、ご自身とは別に世帯の収入が補填できるのであれば、こうした制度を利用して学ぶのも一つの手です。

ワタシのいた県庁では、3月の途中に博士の学位を取得して、その月末にアカデミックに逃げた職員が、年度は別ですが2人いたことになります。
瞬間的ではありますが、行政職で博士号を持つ職員が在職していたということです。
学位授与後、10日程度で2人とも速攻で退職しているので、博士の知見をその県の政策立案に活かすことはできませんでしたが、、

博士号を取得できるということは、モノゴトをロジカルに整理し、新しい知見に結びつける訓練を積んだ結果にほかなりません。
これから、まったく明るくない地方の未来においては、博士号を持つ職員こそ、地方自治体は優遇して活用すべきではないかと思います。
(その前に、博士を持った行政職員の確保が必要ですが、、、ワタシのいた県では聞いたことありませんでした。博士課程進学で、学位取れず、満期退学(=学歴は修士)というのは、見たことあります、、、)

地元のことをよく知る、モノゴトをロジカルに整理できる能力をもつ職員に活躍の場を与えることが、地元のことを知らない東京のコンサルに高い委託料を支払うより、効果的な政策立案ができると考えます。

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