「噛みあわない会話と、ある過去について」
「怒りは消えない。それでいい。」
帯にこう書いてたんです。
この言葉に強烈に惹かれた。
表紙はかわいいんだよね。
こんな可愛らしい表紙で、この強烈な言葉。
私は、本はどんどん増えてくから借りる派なんだけど、この本は、表紙の可愛さとこの帯に惹かれて、速攻で買いました。
これは…なんていうか…復讐の話。
短編集で、4つの話が入ってるんだけど、私は復讐の話だと思った。
あとタイトルがとても合っている。
まさに「噛み合わない会話」と「ある過去」の話。
すごい。
4作とも全然違う話なのに、全部そこに当てはまる。
何気に辻村さんの本はこれが初めてだったんだけど、この方の作品はどれもこんなに生々しいのだろうか。
他の作品もとても読みたい。
いつもまとめて書いちゃうけど、今日は短編一個一個感想を書こうかしら。
※微妙にネタバレしています。
1作目、「ナベちゃんのヨメ」。
これはな…なんだろう…個人的にはナベちゃんのヨメ以外全員に共感して読んだ。
女子グループのあのノリ、とてもわかる。
「ありえないよね!」とか「信じられない!」とか、一見怒ってるんだけどさ、ほんとのほんとは、楽しんでるんだよね。
正論振りかざして、失礼なことされた、常識から外れてるって建前言って隠して、「みんなで怒る」ことを楽しんでる。
ナベちゃんには戻ってきてほしい、友達を1人失うことについては本当に悲しい、寂しいって気持ちはあると思う。だけどそれって、自分にとって都合のいい友達として、ずっといてほしいってこと。
それが本心だろがΣ(-᷅_-᷄๑)!!
って、ちょっとイラっともするけど、そういうことあるよね〜って思いながら読んだ。
智子が影で「佐和ちゃん、ひどい」と言うあたり、めっちゃリアル。
女子グループあるあるすぎる。
こういう場合、現実では、佐和みたいな子はなかなか現れない。
現実でも佐和みたいに、「本人が幸せならいい」って思ってる子もいるかもしれない。でも普通言わない。言うと智子みたいな人に「ひどい」って言われちゃうからね笑。
女子グループは、空気読んで盛り上がってなんぼ。本心で何思ってるかは二の次、みたいなとこある…よね…?
だけど佐和みたいな人こそ、本当に友達なんじゃないかと思った。
佐和は性別が違うから、ナベちゃんと友達でいれなかったけど、ああやって受け入れてくれる人こそ本当に友達だよなーとか、思った。
ナベちゃんにも共感するな。
誰でもいいから付き合いたい的思考はどうなん?て最初思ったけど、ナベちゃんの好きなタイプは、「自分を一番に思ってくれる人」だったんじゃないかね。
そうなると、ある程度誰でもいいっていうのも仕方ないのかも。
ナベちゃんはそういう人を渇望してた。でも、誰もそうはなってくれなかった。そしてついに、そういう人を手に入れた。
そしたらさ、そりゃあその人を全力で大事にするよね。
自分の望みを叶えてくれなかった友人が何人怒ろうと、どうでもいいよね。
このお話は、ナベちゃんと女子たちが全然噛み合ってないんだけど、間に佐和がいるのでちょっと救われるというか…彼女だけが噛み合ってる。
2作目、「パッとしない子」。
「繊細すぎる」のと「無神経すぎる」のはどっちが罪なんだろうね。
ちょっと引用してみたり。
人の言葉をいちいち覚えていて、勝手に傷つくのはやめてほしい。こっちはそんなに深く考えていないのに、繊細すぎる。
この一文。
これ、とても引っかかる。
少なくとも、教師は絶対言っちゃいけない言葉だろって思う。
確かに、何でもかんでも「傷つきましたー」って言われちゃ、「傷ついたもん勝ち」になっちゃうし、コミュニケーション取れなくなっちゃうし、それはそれで困るんだけど、それにしてもこの一文はどうだろう。しかも小学校教師がね。
この先生はさ、子供傷つけて全く反省しない上に、その子供が繊細すぎるって責めてんのよね。こっちは深く考えてないのにじゃねーよ、深く考えろよ。
こういう先生が実際にいないことを切に願う。
子供の頃に受けた傷って治らないよ。取り返しがつかない。
私は日頃から、世の中にはとても鈍感な人ととても繊細な人がいるなあと思っていて。
その両者が出会ってしまうと、このお話のようになってしまうこともあるのかも。
私はとても繊細なタイプだと自認していて、実際に「この人は鈍感すぎて一ミリも分かり合えない」と思うことがある。まさに、「噛み合わない」。
この話の2人も全然噛み合ってなかった。
私は自分の性格上どうしてもたすくんに感情移入してしまうし、門の話は当人が忘れるわけないから、たすくんの言う通りなんだろうなって思うし、それを考えると、きっと先生が全部都合のいいように思い込んでんだろうなと思う。
そうすると、「噛み合わない」というよりは、「先生がひどい」という方がしっくりくるんだけど。
でも、この2人の主観しか出てきてない以上、たすくんがいろいろ思い込んで怒りを増幅させてるだけって可能性もあるわけだし、実際、先生は先生で考えや主張があって、そういえば自分が悪かったなあとか思ってない。
本当に、「噛み合って」ない。
3作目、「ママ・はは」
これは何なんだろう?ホラー?ファンタジー?
この三作目だけちょっと趣が違う。
ちょっと解釈に困った。
これもまさに、噛み合ってなかったなぁ…
これも、スミちゃんにとても共感して読んだ。
この、何を言っても無駄な感じ、とてもよくわかる。
大学のお金は出してくれて、旅行にも行ってて、なんか、話すと普通っぽく聞こえるのがまた辛いのよね。
自分でも、「学費出してくれてるし、一人暮らしも許してくれたし、いい親だ、文句言っちゃいけない」って、思うんだよね。
このお母さんはなんだかちょっとロボっぽい。
それがまたホラーっぽさを増幅させている気がする。
ほかの3作は、怒りをぶつけられる側が、ちゃんと動揺するんだよね。
このお話は、怒りをぶつけるってことがないんだけど、たぶん、あのお母さんに何言っても何も動じなかっただろうなって思う。
ああだから、「ママ」になったのか。
これは解釈なんかしなくていいのかも。
母はママになった。それだけ。
4作目「早穂とゆかり」
これはもう、ザ復讐なんじゃないでしょうか。
いじめた方はいじめたと思ってないっていうね。
なんとなーく、早穂の旦那さん浮気してんじゃね?って思わせる感じがにくいね。
無意識って怖い。
無意識のところにこそ、人柄が出るのかもね。
これはけっこう、気をつけよう…って思ったなぁ。
この話は、どっちにもあまり自分が重ならなくて、とても客観的な目で読んだ。
だけどこれも、こういうことあるよね…って思う。
この2人も噛み合ってないなぁ…
ゆかりは小学生の時と変わったけど、早穂は変わってないのかもって気がした。
あるよね、そういうの。ほんとリアルだと思う。
とりあえず…仕事は丁寧にしなきゃダメだな…
てな感じで一面白かった。
一個ずつ書くと長くなったな…
また辻村さん読んでみよう。
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