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四国歩き遍路日記 37日目 60~64番

3月29日

朝4時ごろ、隣室の話し声で起こされてしまい、思わず壁ドンしてしまった。
朝食では若い夫婦と一緒のテーブルになり和やかに会話したのだが、その後部屋に戻るとき、その夫婦が隣室だったと判明しちょっと気まずかった。
 
6時半過ぎに出る。
ザックを宿に置かせてもらい、標高745メートルの横峰寺への山登りに出発。宿でもらった地図を頼りに、いわゆる「採石場ルート」を進んでいく。


途中、地図の縮尺とは違う相当長い区間があり、携帯も圏外なので、本当に正しい道なのかと不安で一杯だった。
整備された歩きやすい道とのことなので、こんな感じで舗装路がずっと続いてくれたら楽だなと思っていたが、やはり途中から険しい山道になる。

それにしても登っても登っても終わりがなく、この感覚は焼山寺以来で、自分はこの横峰寺登りをだいぶ甘く見ていたことに気付かされる。
まあでも、ザックがないだけマシだろうと思いながら登り続けて、10時ごろなんとか到着した。

このルートは裏門から入ることになるので、昔は正面の山門から入るルートから来ないと納経所で小言を言われることがあったらしい。自分の時はなにも聞かれなかったが、確かにお坊さんから厳格そうな雰囲気は感じた。
 
そして、時間の余裕はなかったが、奥の院である星ヶ森を目指す。ここも遍路に出たら絶対に来ようと思っていた場所の一つなのだ。1キロほどさらに登って到着。

例の鉄の鳥居が思ったよりもかなり小さかったのが意外だった。遠近感がバグって、借景みたいな効果になってるのがおもしろい。天気も良くなり、石鎚山もばっちり拝めた。

何気にこの鳥居は1742年に建てられたそうで、江戸時代の人と同じ景色を見てるのかと思うと感慨深い。ここで久しぶりに自撮りをした。

ふたたび横峰寺に戻って、先ほどのお坊さんに星ヶ森の納経をもらうと「石槌山は見えました?」と聞かれ「いやあ、もうよく見えました」と答えると、ちょっと嬉しそうに顔をほころばらせたのが印象的だった。

11時に横峰寺を出て、登ってきた道を下りていく。さすがに下りは早いが、登らされる部分もあるので、やはり位置エネルギーの無駄遣いである。

途中の分岐で61番方面に下りていく。ここからの道もまただいぶ長かった。

ようやく61番の奥の院の白滝に着く。ただ、昨年の豪雨の影響で道が崩れていて滝のそばまで行くことはできなかった。
ここから61番までは3キロほどある。もし昨日61番に行けてたらここには来てなかったので、この滝を見られたのも一つの縁だろう。

山から市街地の方に下りていき、神社の敷地を抜けてしばらく行くと突如コンクリートのでかい建物が現れた。これが61番香園寺だった。靴を脱いで建物に上がり、屋内でお経をあげるのは初めてだ。

納経所では「62番に行くことはおすすめしてません」みたいに案内していて、やはり対立してるんだなと思った。

ここの駐車場に仮設の建物があって、62番の代わりに納経できるらしい。新たにちゃんとしたお堂も作ってるみたいだった。

香園寺を出て、朝出た宿に戻りザックを回収した。昨日振りに背負ったので、だいぶ重く感じられた。

そして、63番吉祥寺に行く。
そこからさらに一時間ほど歩き、石鎚神社、64番前神寺とまわった。 

63番吉祥寺
石鎚神社

前神寺をでた時点で16時。まだ今日の宿まで4キロ強ある。
自分が疲れ切ってるせいか、ことさら街も人も疲れてるように見えて、夕暮れの中、トボトボと歩いていく。

伊予西条の駅の手前で、海軍カレーの幟を片付けていたカフェの店主がにこやかに挨拶をしてきた。その後、駅を渡る歩道橋の上で親子連れを見た。

この時の言い知れぬわびしさ、哀しさはなんだったろうと思う。無職独身中年の自分は、こうした社会のコミュニティーには一生属せないんだろうなという孤独感。
駅のコンビニで飯を買い17時20分、宿に到着。
 
激安のビジネスだが最低限のものは揃っていてコスパはめちゃ高い。こういうホテルがもっとあったらなと思う。

久しぶりの17時越え。11時間歩いて今日もくったくただった。まあでも、どうせ寝たらリセットされるので無事に着けばいいのだ。

 夜、スマホを見ていたら、80歳の祖母と18歳の孫が同じ大学(同志社)の院と学部に同時入学したという記事があった。祖母は50年以上にわたり仕事の傍ら「作業唄」の収集をしていたが、ガンで余命3年と宣告され、その研究成果を生きてるうちにまとめたいと院に入ったらしい。そのあまりの崇高な生き方に心が揺さぶられた。
(追記:この方は阪田美枝さんという方で、この後、無事研究を修士論文にまとめられて、83歳で亡くなったらしい)
 
西条セントラルホテル(素泊:2800円)

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