夢中第二次妖怪大戦前夜

この前不思議な夢を見ました。

そこは物の怪の世界で、大まかには日本妖怪と西洋妖怪の2種類がいる。2つの種族は表面上友好的であるが、腹の底では否みあっている。

自分は日本妖怪の側で、自分自身の姿は確認していなかったが、日本妖怪は生活用品を象った姿をしている。大方付喪神の類だろう。

ある日不自然に西洋妖怪の中でも有力な4匹に誘われて、学校をサボり誰かの家に行ったのだが、やはり不穏な空気を感じる。虎のような姿をした1匹が菓子や茶を出してくれたが、それにもかかわらず、安らかな心地などはせず、不思議な緊張感に包まれていた。

そして自分が用を足している内に異変は起こって、気づけば無数の西洋妖怪に取り囲まれているではないか。図体の大きいのから小さいのまで、血眼になって鋭そうな牙を剥き出している。

場は緊張感に支配されていて、下手に動こうものなら、一瞬にして自分の身体がただの肉塊に変わってしまうだろうと、そんな予感で頭がいっぱいだった。

精一杯の虚勢で、どうしてこんなことをするのかと聞くと、「お前らは我等西洋妖怪の醜いことを腹の底で軽蔑している。そのことがいよいよ我慢ならんのだ!殺してやる。」と言う。

確かに西洋妖怪はジメジメとした不気味な風貌だが、幾ら西洋妖怪が醜悪とて、そんなのは私の知ったことじゃない、そんなことで死んではたまらないので、同伴していたダルマ人形型の俊敏な友人に咄嗟に掴まり、空を飛びながら自分が通う学校に逃げ込んだ。

今にして思えば、その学校にも日本妖怪しか居なかったので、日本妖怪と西洋妖怪はもともと社会的にも分断されていたのかもしれないな。

私は日本妖怪の危機を感じ、学校で「西洋妖怪が徒党を組み、我らを打倒しようとしている。立ち向かえ!」みたいな煽動的な演説を鮮やかにかまして、学校中が西洋妖怪の打倒に向かって熱狂に包まれた。

たくさんの妖怪学生たちが、めいめいに何かを叫びながら、群れをなしながら、勢いよく校門を飛び出してどこかへ向かっていた。私は学校の高い所から、誰かと話をしながらそれを眺めていて、突然そこで夢が途切れた。

もし夢があのまま続いていたら、妖怪間の対立はどこまで発展していただろう。論争?それとも紛争?戦争?

そういえば、あの時の私は確かに、日本妖怪と西洋妖怪の衝突の必要性を、疑おうともしなかった。むしろ一種の爽やかな使命感に駆られていた。衝突し、勝利する必要があると本気で考えていた。

別に私に限らず人間みんな、ある種の排他性を抱えながら生きている。よく考えずとも、誰だって一緒に居て居心地のいい人と過ごしたいし、相容れない他者の雑音は生活の中では不快だ。不快な雑音からは距離を取るのが常套の手段だろうよ。日常レベルではそれ自体に善も悪もないし、好きな人は好き、嫌いな人は嫌い、それで別にいいと思う。

ただ、それがある程度の質量を持った集団規模まで膨れ上がったら?排他性それ自体が社会秩序に取って代わったら?

そう考えると、下手な怪談よりも怖いね。ちゃんちゃん。

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