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昭和に流行った「夢の化学物質」たち【負の遺産】

※この記事は、もともと私の別のnoteで書いたものを、若干の推敲を入れて書き直しています。

昭和の時代、特に1970年代の高度成長期のあたりでは、
「こんな便利なモノはない」と大量に生産、消費された化学物質がありました。

それが、今日ではすっかり『厄介者』とされてしまっているもの。。。

3つの物質について書きます。どれも、”聞いたことはある”ものばかりです。

①「最強の断熱材」アスベスト(石綿)

②「優秀な絶縁油」PCB

③「堅牢な冷媒」フロン

もちろん、水俣病の水銀(アルキル水銀)やイタイイタイ病のカドミウムなども知られてますが、これらは”昭和に流行った”「夢の物質」ではありません。

①アスベスト(石綿)

「最強の断熱材」、鬼のように断熱材として吹き付けられまくった昭和の時代。。。それだけでなく、いわゆる”非飛散性”を含めれば、建材にアスベストを練りこむ「スレート」などは山ほど作られています。

アスベストの特徴は、それこそ「針」と形容されるほどの細く鋭い繊維であること。これにより、吹き付けた際には非常に密な感じで仕上がることから、主に断熱材として使われました。

しかし、ご存じのとおり、アスベストは『時限爆弾』でした。

特にアスベスト製品の製造を行っていた工場、断熱材の施工現場等に関係した労働者は、長くて30年という「時限爆弾」の後、中脾腫に…
もちろん、死に至る例も多々。。。

塵肺の奥に突き刺さる繊維状のアスベストは、現場で舞っていたら、並みのフィルターでは突き抜けてしまいます。現在でも、アスベストの除去現場において使われるマスクは、市販されている不織布や布マスクではなく、もっとちゃんとしたマスクを使っています。

肺にグサグサ突き刺さる感じは、想像がつかない…


②PCB

PCBは「ポリ塩化ビフェニル」のことで、こちらは「優秀な絶縁油」として、やはり広く使われてきました。コンデンサやトランスは代表例ですが、もちろん他にも用途はあります。

事の発端であるカネミ油症事件は、未だにそれを引きずっている方もおり、大変心痛く思います。

PCBは比較的早い段階で製造中止にできたものの、あまりの有害性に

「これに触れたものは全て汚染物扱い」

という驚愕の油です。

それどころか、絶縁性などの優れた能力から、広く使われていた時代があり、今日ではひっくるめてPCB廃棄物として、濃度によりますが処理期限が定められています。

処理期限の細かいハナシは割愛しますが、ストックホルム条約において、いわばリーディングカントリーとしてある日本が、今後いかに動いていけるのか。

同条約をもとに日本で決めた処理期限は、遅いケースで令和9年3月31日。

もはや世界中の関心事であり、日本がしくじるわけにはいきません。。。

なお、PCBだとピンとこない方は、「ダイオキシンの一種」だと思えば、やや近づくでしょうか。ダイオキシン類の1つである、コプラナーPCBはPCBの一種です。(感覚的には、コプラナーPCBとコプラナーでないPCBがあるということ。)

③フロン

フロンは、いわば「堅牢な冷媒」として、エアーコンディショナー(エアコン)等に大量に使われてきました。

フロンは温暖化に高い寄与を及ぼすだけでなく、成層圏のオゾンを破壊(オゾンホール)してきたことから、こちらもフロンとしての使用は全廃しています。

フロンは、ウィーン条約下のモントリオール議定書にて、オゾン層を破壊する物質の1つとして位置しています。さらに、化学組成を替えた「代替フロン」も出回りましたが、代替フロンも今では当該議定書による規制物質の仲間入りをしています。


以上、細かいことを書けばそれぞれキリがないぐらいですが、昭和の時代は戦争から這い上がり、経済を潤沢に…とした流れもあって、その頃はあまりリスク管理の感覚が無かったということです。

平成、そして令和と時代が流れるにつれ、リスク管理の考え方はどんどん浸透してきています。それでも、新しいマテリアルについては、十分な未来予測ができるほどのレベルにはありません。

※促進耐候試験等の手段はありますが、あくまでも仮想条件です。ですから、建材の耐久性等も基本的には参考値と思うべきです。

もし、数年後、いや10年以上先に「シリコン」が問題だと言われても、何の不思議もありません。「ウレタン」もですが、成形方法によっては非常に危ない要素がありますね。

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