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今、見直したい採用における企業と人材紹介会社との付き合い方

 最近よくご相談いただくのが「人材紹介会社との契約を考えているのですがどうすれば良いですか」「複数の人材紹介会社と付き合うのが大変そうなのですがどうすれば良いですか」というご相談です。

 私は昔の職場でインフラエンジニアの傍らでエンジニア採用担当窓口をしていた時期が長めにありました。特に人事採用担当が0人になった際には人材紹介会社との契約から担当していました。その縁もあり人材紹介会社の開発部長に収まったりキャリアアドバイザーの皆さんの教育担当をしたりしていました。こうした経験を元に、お話します。ターゲット年収的に上位概念であるヘッドハンターのみなさんとのお付き合いもある程度は応用できるかと思います。

人材紹介会社を巡る風潮、振返り

 スカウト媒体で直接スカウト送信するダイレクトリクルーティングが流行り始めたのが2016年頃になります。盟友メスライオン宇田川さんがダイレクトリクルーティングで名を馳せ始めた頃です。採用の際にスカウトというそれまではヘッドハンターくらいしかしていなかった行為が、ダイレクトリクルーティングによって一般化しました。よくある契約パターンがスカウトチケットを購入し、対象者と接触するというものです。

 次に流行ったのかTwitterを始めとするSNS採用でした。この方法は担当者の人件費を無視して「安い」と持て囃されたものです。ざっと検索をしてみると2018年頃から始まったようです。#Twitter転職 などのタグはまだありますが、ほぼ未経験者のものとなり、経験者採用では実を結びにくい印象です。LAPRASで構造化されつつあるかなぁといった具合です。

 並行して注目されてきたのが社員紹介(リファラル採用)です。紹介料がインセンティブとして払われる企業は多く、グリップが強いため社員が友人を紹介したくなる企業だと活発です。デメリットもありますが、それは下記をご参照ください。

 こうした採用シーンとセットで語られるのが所謂コスパでした。Twitter採用なんかは採用担当や役員が常時意識の高い投稿をしなければならないので、勤務時間を考えるとコスパは悪いのですが採用フィーとしては計上されないので「コスパが良い」として歓待されていました。紹介フィーを考えると人材紹介のコストは高いので、自然とこれらの採用チャネルが有難がられて来ました。

再び脚光を浴びる人材紹介会社

 冒頭のご相談は会社規模を問わず数社から頂くのですが、全く採用できてない企業という訳ではないのが興味深いところです。DXに取り組む大企業と、先の新しい採用チャネルから採用を始めたベンチャー企業、そして先の採用チャネルに傾倒して久しく紹介会社とご無沙汰だった企業の3タイプに分かれるようです。通して状況を聞いていくと、

 継続して積極採用中なものの、いよいよ人が居なくなって打つ手がなくなってきたので紹介会社を試してみたい

 シンプルにそういうことなようです。

 人材紹介各社も生き残りのために母集団をあの手この手で集めています。TVCM、WEB広告だけでなくFacebookやLinkedInのようなヘッドハンターのような動きをする会社もあります。複数社契約することで紹介機会を多く得られる可能性が高いのでオススメしています。ただし調子の良い悪いで波があるので、紹介が無いからと切ると困る時がやってくるので注意が必要です。

 また、人材紹介の価値は介在価値なので、彼らを味方につけると強力です。面接などで掘り下げられなかったことや、候補者が何を考えているのか別の視点で知ることができるのは有意義です。

人材紹介疲れ

 複数の人材紹介会社と並行してやり取りするとなると、1社1社真っ向から付き合うと疲れます。紹介者数が少ないとやり取りを辞めたくなりますし、2社目以降の接続が億劫になりがちです。人材紹介疲れを起こしたりします。

 大まかに人材紹介会社とやり取りするにあたり必要な業務は下記のようになり、多くの場合下から順番に実行することになります。

人材紹介会社

・契約
・求人票作成
・人物像擦り合せ
・書類チェック
・面談/面接日程調整
・進捗管理
・フィードバック
・内定出し
・内定承諾
・入社手続き
・支払い

 これを複数社と実施しようとした場合、担当者から見えるタスクの積み方は下記のようになります。4社と付き合おうとすると4倍の労力に見えるわけですが、これが「人材紹介会社と付き合うのは大変だ」と人材紹介疲れを感じるきっかけになってしまいます。

人材紹介会社 (1)

人材紹介会社疲れを回避するコツは共通化にあり

 ポイントは共通化できるところは共通化するということです。1社ごとではなく、他社と共有できるフェーズについては一緒だと思うことが重要です。そして業務フローをA社向け、B社向けなどと分けるのではなく、共通化してしまうことです。1社によってずっとコミュニケーションチャンネルを専有されるほど紹介されることはまずないです。

 1社1社と連絡を取るのではなく、HERP Hire、HRMOS採用、ジョブカン採用管理、といった採用管理システム(ATS)を導入し、各社にアクセスしてもらうというのと労力削減の近道となります。

 また、こうやって取り組んでいくと面談/面接日程調整が一番面倒なので、アシスタントさんにアウトソーシングしたりするのが効果的です。カジュアル面談のように接触回数が多く、担当者が決まっている場合は、カレンダーツールと連携した日程共有ツールを導入してみるのも良いかも知れません。

人材紹介会社 (2)

人材紹介との付き合い方

 採用担当を始めた頃、契約したらマッチする人を紹介してくれるものかと思ったのですが、そうではありませんでした。また、紹介フィーを上げたら紹介してくれるものかと思っていましたがこれも違いました。

 語弊を恐れずに言ってしまうとどの会社さんも本質は営業会社です。そしてどんなにHRTechやDBを謳っても担当者の脳による検索が本流です。

・いかに候補者に紹介しやすいか
・どういう人なら決められるのか
・真っ当に売りは立つのか

この3つが肝です。人材紹介会社との良い付き合い方は良き営業先であり続けることにあることです。

人材紹介との付き合い方: 候補者に紹介しやすい企業であること/フレッシュな情報のインプット

 紹介会社の中の人は複数社を担当するため、その記憶域はTwitterのようなフロー型が基本です。いかに担当者の脳に自社のフレッシュな情報をインプットし続けるかというのが重要です。Twitterでも影響力のある人は投稿数が多いですよね。どんなに良いことを言ったつもりでもたまにしか投稿しない人は忘れられます。

 個人的な施策としては定期的に複数の人材紹介会社を集めての会社紹介セミナーを実施したり、隔週でメルマガを打ったりしていました。特にメルマガは送信先の人材紹介会社内で回覧されたり社内システムに登録されたりすることが多く有用です。

・最近の事業ニュース(候補者へのネタ提供)
・最近決まった人とその特徴
・お断りされたけど良かった人の特徴
・最近決まらなかった人(理由を添えて)

 このあたりをメルマガにすると良いです。

人材紹介との付き合い方:どういう人なら決められるのか/有益なフィードバック

 候補者Xさんが居たとして、A社でNGになったとします。XさんとA社はご縁がなかったわけですが、XさんはB社、C社と継続して受けることになり、紹介会社YはXさんをサポートし続けることになります。この際、「何を理由にご縁がなかったのか」というフィードバックが肝になります。ここで理由を曖昧にされるとXさんにも紹介会社Yにも学びがありません。単に「A社はなんだか分からないけどダメだった」となるだけです。

 Xさんにとっては何を改善するべきかという学び、紹介会社YにとってはXさんはどうご支援するべきか、そしてA社にはどういった人を紹介するべきかという3つの学びが人材紹介ビジネスには必要です。ここを無碍にするA社からは離れていきます。

 私が紹介会社との窓口も兼ねていた際は「練習だと思って紹介してください」と訴えて回ったことがありました。尋常じゃなく時間は溶けましたが、根気よくフィードバックしたことでよりフィットした方を紹介していただけるようになりました。何よりその時の各社担当者さんとは未だにFacebookで交流が続いていたりするのは良い結果だと思っています。

人材紹介との付き合い方:真っ当に売りが立つ/紹介フィーをディスカウントするものではない

 自社他社問わず採用に関わる際に私とお付き合いのある紹介会社さんをお繋ぎするのですが、少なからず紹介フィーをディスカウントする企業さんが居られます。

 紹介フィーが適正かどうかという議論はありますが、自社に営業組織がある場合、彼らを想像してみてください。営業職を想像すると、他社より露骨に売上が立たない会社に紹介するには相応の理由が必要ですよね。複数名決められる、他社で受け入れてくれない方を引き受けてくれる、バーターで別の取引がある、実績として会社名を紹介すると無茶苦茶箔がつく…それくらいの理由がないとどの営業職も無闇にディスカウントしませんよね。

人材紹介会社からも学ぶ

 私がよく確認する項目として同じくらいの規模の会社でうまく行っている企業にはどういう施策をしているのかということです。そこから真似できることを検討することも重要ですが、経営層や現場に苦戦しているポジションがどういう状況で何をすべきなのかを報告・相談することにも使えます。

 こうした情報交換は担当がつかないタイプの媒体や、自力で頑張るしかないSNS採用などでは得られないものです。是非こうした側面からもお付き合いすることをオススメします。

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