企業訴求、志望動機としての社会貢献性/出会い系・パパ活・マッチングサービスを例に
24新卒の就活が解禁されました。ベンチャーなどであれば既に内定を持ち、いわゆる終活状態の方も居られる頃合いかと思います。今回は企業が候補者に訴求する際や、志望動機の際によく目にする「社会貢献性」についてお話をします。
友達を売ろう Sell Your Friends
先だってTwitterにてFREINというサービスのWebサイトが話題になりました。2021年にも炎上したことがあり、弁護士見解と共にまとめられた記事も存在しています。運営会社を見ていくと高級交際クラブ、ラウンジ、パパ活を運営している会社です。従業員総数は133名、男性53%に対し女性47%とあり、役職者も38%が女性とあります。この数字だけ見ると、それなりの規模のベンチャーであり、男女比についてはかなりな優等生と言えます。ただ、会社概要をクリックしてもグループ名以上のことは良く分かりませんでした。FREINはその会員を集めるための友達紹介システムで、登録URLを友人やSNS宛てに送るアフィリエイトシステムとのことだそうです。
以前、新卒で別のパパ活サービスに内定を貰い、インターンもしている方とお話ししたことがあります。この方はそのパパ活サービスに入社する気だったので、どういう動機なのかを聴いたことがあります。すると「パパ活サービスは社会貢献性が高いんです。お金が必要な女性と、お金のある男性のマッチングなんです!」とすらすらと返ってきました。新卒採用では候補体験を計画した候補者ジャーニーマップを作り、サービス共感や自社のウリを就活生にインプットしていくわけですが、おそらくそれがしっかりとしているのでしょう。きっちり染まっていましたね。
FREIN関係の方にはお会いしたことはありませんが、社員数情報が真実なのであれば同等の候補者体験を展開しているのではないかと推測しています。下記のような本を出されているのですが、大筋で先の方のロジックと同じ展開をされているようです。取り敢えず注文してみました。
出会い系サービスとマッチングサービスの違い
一般の方は出会い系サービス、マッチングサービス、パパ活サービスの違いはあまり意識したことがないかも知れません。私自身、2012年から6年間マッチングサービスに関わって居たこともあり、思い入れのある業界ですので掻い摘まんで歴史をお話ししたいと思います。
以前はガラケー時代からの出会い系サービスが台頭していました。今でもいくつか残っているサービスはありますが、基本的には「出会えない系」と揶揄されることもあり、サクラが存在しています。全盛期の出会い系サイトで働いていたエンジニアと話したことがありますが、ピーク時にはサクラのアルバイトが24時間交代で勤務していたそうです。出会い系サービスはポイントを購入するタイプのものが多く、お相手(女性)のプロフィールを開くのも、メッセージの送信、受信したメッセージの開封などにポイントが消費されていきます。待ち合わせなどをした際に、「今どこ?」「私は○○に居るよ」「××に移動したよ」などと無意味な移動を繰り返すことで「ポイントを削る」作業をサクラはしていたそうです。
これに対し、アメリカで流行っているマッチングサービスを日本に持ち込み、差別化を図ったというものです。マッチングサービスが日本で始まったのは2012年2月のOmiaiが最初です。ポイントなどの機能も有していますがそれはヘビーユーザー向けで、月額費用を払うことによって基本機能の利用ができるというものが主流です。お相手に対してアプローチをし、先方からもアプローチが返ってくればマッチングしたと見なされ、メッセージがやりとりできるようになります。
出会い系サービスとの差別化として、下記のような取り組みをしていました。
プロフィールの監視
メッセージの監視
ユーザーによる通報システムの運用
マッチングサービスには婚活を意識したものと、よりライトなデーティングと呼ばれるものが存在します。婚活と断言してしまうと結婚相談所のように独身証明書の提出が必要となります。これは民法732条(重婚の禁止)の規定を避けるためと言われていますが、サービス利用ハードルが上がってしまいます。
こうした背景から結婚を真剣に意識しているという点では下記のような並びになります。
更にここに似たようなフリをして存在しているのがパパ活サービスです。マッチングサービスが売春などを禁止し、サービスによってはサイトパトロールもしながら排除していくものがある中で、黙認したり奨励しているのがパパ活サービスです。元マッチングサービスの中の人としては別物であると区別して考えて頂きたいところです。そして、パパ活には往年の出会い系サービス由来のものもあります。
グレーをホワイトにするイノベーションと、グレーゾーンで継続するサービスの違い
スタートアップやベンチャー界隈で時折危うさを感じるのが、法律違反とイノベーションをごちゃ混ぜにしているサービスがあることです。
電動キックボード、ドローンなど、社会に新しい価値を設けるに当たって政治家などに対するロビイング活動をセットで実施し、法的にグレーゾーンなものをホワイトにしていく活動と、サービス展開をセットで実施するのがあるべき姿だと感じています。マッチングサービスでも晩婚化、少子高齢化といった社会課題にしたいし、下記のようなことを実施しています。
【候補者】企業選びの条件
少なくとも下記の点は確からしい企業に、契約書や労働条件を確認した上で入社する必要はあると思います。
反社会的勢力ではない
法人登録してある
納税している
必要な届け出を提出している
行政指導を受けていない、もしくは過去に受けたが改善した
【候補者】その社会貢献性はどこに向かうものか?
キャリア相談頂く中で、訳ありの企業に入社してしまっている方も多々居られます。行政指導を受けても改善する気が無いサービスなどもあります。入社の後悔などから新卒や新入社員が1年程度で全員辞めるサービスの話も複数耳にしています。
何かしらのお金が回っており、納税をしているのであれば何かしらの社会貢献になっているとは言えます。その一方で、(特に久しぶりに会った)友人、知人、親族などに対し、後ろめたい気持ちを持つことなく仕事について説明できるというのは要素としては必要なのではないかと考えています。これは情報商材界隈にも言えることだと捉えています。
【企業】就活生の「社会貢献性」離れに企業はどう対応するべきか
ここ2年ほどの動きとして、就活生の中で「社会貢献性」離れが起きているというお話があります。2010年代後半の就活シーンでは、各社こぞって自社のサービスがいかに「社会貢献性が高いか」をアピールしていました。MVV (Mission Vision Value)に社会貢献性が高いものを掲げると、若手を中心に共感して頂けた時代です。
それが2020年代になり、「自社サービス企業が口々に『社会貢献性」を謳っているが、比較したときに優劣が分からない」「顧客の課題解決をするクライアントワーク(コンサル、SIer、SES)に関わるのが確実な社会貢献では無いか」という話が出てきています。個人的な見解としては、社会貢献性を候補者訴求にしていくには手垢が付きすぎていて厳しくなってきたのでは無いかと考えています。
私は採用のコンサルティングに入る際、ワークショップ形式で採用に関係する人や、マネージャー以上を集めて自社のウリをディスカッションする場を設けることがあります。自社の社員が何が良いと思って働いているのか、強みになりそうなものは何かを整理し、訴求していくことで社会貢献性に頼らないアプローチもできるようになると考えています。
おまけ
余談ですが、現在の日本の転職関連サービスはマッチングサービスの類に着想を得たものが多いです。合わせて御覧ください。