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IT人材 2021年まとめと2022年トレンド予測:難航し続ける採用と定着

年始ということもあり、去年に倣って2022年版も書いてみたいと思います。主に人の流れの観点から採用と定着にフォーカスしながらお話をしていきます。

スタートアップの光と影

先立ってキャリアの地図2021が公開されました。企業名をクリックするとどこから人が入ってきて、更にどこへ行くのかが記載されています。規模感が分かりにくいところではありますが、日本の大企業の人材輩出感(インがなく、アウトだけある)、外資コンサルとスタートアップの吸引力が目立ちます。

2021年12月現在は外資コンサルは徐々にトーンダウンしている傾向があるようですが、資金調達が上手いスタートアップの勢力は凄まじく、中小企業はもちろん、サービスが当たって一般化してきたフェーズのベンチャーですら苦戦しています。

中の人とお話をしたりすると、一年で開発組織が100名くらい増えたりしているようで中々のものです。定着が課題になるところ、カルチャーの維持が課題になるところ、敢えて入れてから考えるところなど組織によって色々な悩みと姿勢があります。

一方でスタートアップにおける資金のショート話も耳にするようになりました。個人的にもお金の集め方が近い企業というのは研究対象として観察しておきたいところです。

いずれにせよスタートアップ界隈は資金調達が上手い会社さんが揃っており、スタートアップ各社が提供しているプロダクトやソリューションに需要もある状態です。特にtoB向けのものはDXの文脈に載せることで一定数の耳目を集めているようです。

他方、個人的に気になる事象として「小規模スタートアップに何故か居るVPoE」があります。PjMと兼ねているケースは少なくないようですが、10-20名程度の組織に置くには単価が高過ぎますし、収支的に人数が増えたり組織課題が見え始めてから考えれば良いのでは?と思ったりもします。

人材のさらなる流動化

従来の採用シーンでは短期転職はよろしくない、3年は居るよねという風潮がありました。私自身ベンチャー界隈に生息して10年になりますが、ベンチャースタートアップ界隈は株式投資に似たようなところがあります。終身雇用をしたいというベンチャーは2012年頃のサイバーエージェント以来、あまり耳にしていません(あるようであれば是非教えてください)。

生涯を保証してくれる企業がない中で、特にベンチャーに在籍するということは株取引のような側面が出てきました。事業の調子が無茶苦茶に悪くなった時や、経営方針がガラリと変わった時にそれでも尚在籍を継続する理由は何なのかが問われています。

  • 上がる見込みがある?

  • 株主優待(社員の場合は福利厚生)が手厚い?

  • 代えがたい経験?

  • 所属によるブランディング?

  • 社長が好き?義理?

人材が流動的な中途を中心としたベンチャー企業では、ある程度の流動さ具合は許容しているところもあります。

採用単価の高騰と定着の短さによる人月商売への影響

採用単価が高過ぎるのです。人材紹介では年収の35%の紹介手数料が一般的になり、40%というところもあります。時折、キャンペーンとして企業側から50%以上が提示されることもあり、極稀に100-120%というものも界隈を賑わせます。

加えて採用には間接的にブランディングのためのコストも入ります。テックブログにしてもボランティア精神では継続しません。

それでも儲かればペイできるのですが、2年居てくれたら良い現状を考えるとかなり成立条件が厳しくなってきました。特にSIerやSESで労力の提供に対しての人月清算(時間清算)をする場合、利益率が薄いために昨今の採用コストの増加はマイナスのニュースでしかありません。改善のアプローチとしては下記のものになるでしょう。

  • コアコンピタンスによる付加価値の追加

  • コンサルタントの投入による付加価値の追加

  • 人員の確保を目的としたオフショア

オフショアについては後述します。

新卒採用・育成への回帰

まとまった数の中途人材の採用・定着が難しいため、いっそ新卒の方が良いのではないかと考えています。カルチャーギャップを考えても、自社で育成を引き受けられるのであれば新卒の方が現実的な企業もあります。

未経験採用は微増しているものの、定着・活躍例がもう少し出てくればより拡大する可能性があります。しかし現段階では未経験者の入社後数ヶ月〜1年での退職が多いことからネガティブな感情を抱いている企業は少なくないため、採用市場の変化には年単位でかかるのではないかと思います。インフルエンサーやプログラミングスクールの掲げている売り文句に対する現実との期待値ギャップが浮き彫りに鳴り始めているため、供給量についても縮小するのではないかと懐疑的です。

ミドル

引き続きスキルの現役感と、コミュニケーションの柔軟性があれば受け入れてくれる現場は増えていきそうな傾向にあります。若手に人気のスタートアップなどであっても、温和な感じさえあれば各種マネージメント職で可能性がある印象です。

一方、「開発職が言うことを聞かない。自由にさせすぎた。」という理由で2000年代前半の組織づくりをしてきたSIerの長をCXO/VPoEに据えるベンチャー企業も見られるのですが、サーバント型リーダーシップが好まれる現状では、人材の定着を考えると厳しいのではないかと考えます。

地方人材

リモートワークがコロナ禍の不可抗力で拡がり、2020年は様子見だった人たちが2021年に地方移住をし始めた傾向があります。都内で仕事を得てから地方に移住するのがよくあるパターンですが、企業によっては地方で採用しながらある程度の人数になると支店認定するというところもあるようです。

支店を作りつつ雇用を産むというのは地方自治体との友好関係にも繋がるためメリットは多いようです。支店展開がうまい知人の企業によると、地方自治体はコロナ禍で財政出動が大きかったため、税金が地元に落ちる動きは歓迎でしかないとのことです。取引先としての地方自治体職員を通した地元有力企業紹介もありうるため、支社としてアプローチするメリットは企業によっては大きく、東京本社雇用とは違う意味合いがあります。

地方移住の観点でよく耳にする地域としては、沖縄、広島、長野辺りですが、個人的に注目しているのは自治体の受け入れが特に手厚い福島です。前職の若手も移住し、シェアハウス運営やフリーランスエンジニアなどをやっているようです。

海外からの移民・オフショア

自社サービスをやられている会社さんであっても、オフショアを検討したいという声が一定数聞こえてくるようになりました。オフショアはフィリピンやベトナムでは待遇合戦が起きており、安さを求めての事業の成立は難しいため、あくまでも人員確保の一環として日本人よりやや安い金額だという心づもりで接することがポイントになってきています。

一方で選考して海外人材を日本に招き入れた組織についてはコロナ禍をきっかけに定着についての嘆きの声が聞こえてきます。日本を除いて大家族の地域が多く、変に引き剥がすとホームシックになる傾向があります。コロナ禍で気軽な帰省もできなくなったことから不協和音に繋がっていると理解しています。

改めて主張したいポイントですが、海外人材からして日本に移住し、働きたいと思っている方は随分と減っています。永住権が出るカナダか、景気の良いマレーシアやシンガポール、香港が人気です。移民を入れれば人員不足が解決するというのは10-20年前がラストチャンスだったのではないかと感じます。いよいよアニメと美味しいご飯、コンビニくらいでしかフックできなくなってきた感じがあります。

副業・複業業務委託人材

大流行するも良い人と巡り合うことが難しくなってきたフリーランスとは違い、可能性がある項目の一つが副業・複業による業務委託人材です。

働く側からすると、転職をするほどではないけれども他の事業に関わってみたいという要望にマッチするものです。企業側からすると、固定費が安く腕前が大手相当であるというメリットがあります。

働く側、企業側の双方のメリットしては入社前のマッチングを図れるというメリットがあります。このメリットを存分に活かしている企業が一部スタートアップであり、転職するにはリスクがあるので直ぐには踏み切れないがプロダクトや企業の世界観には共感しているような状況で副業から入ることにより、採用経路の一つとして成立しています。

大手企業を中心にマネジメントコストや情報セキュリティの観点で懸念されることのある副業人材ですが、活用しない手はないと考えています。

高度人材(博士、ポスドク)

私自身思い入れのあるテーマなのですが、これまで今ひとつパッとしなかったのが高度人材です。ここ数年は数学・情報・物理・生物・宇宙などの領域のうち、数学が強い博士人材はデータアナリストになる傾向があります。ただ専門分野の観点から見ると数学についての知識はあるとしても地頭で評価されての抜擢と言えます。給与は良いのでこうした道を行く人については幸せそうなので結構なことなのですが、非数学人材の専門性があまり評価・活用しきれていないというのが日本社会の現状です。

ここに来ていよいよ博士のキャリアが不人気となっており、大学や文科省で焦る向きも強く観測されるようになってきました。専門性を尊重した動きがそろそろ出てくるような動きを察知していますので、そのうち良いタイミングでお話しできればと思います。

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最後になりましたが、本年もよろしくお願い致します。

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