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面接官を大切に - 非人事・ITエンジニアをリクルーターにする際のアンチパターン

 これまでITエンジニアの採用シーンは人事採用担当の力だけではどうにもならず、経営層を含めた全社での協力体制が不可欠であるとお話してきました。

 採用とは候補者の気持ちを揺さぶり、自社へ訴求しなければなりません。勢い、自分の気持ちが動くこともあれば気力も体力も消耗します。ややもすると面接官は疲弊し、退職に繋がります。急に自分探しの旅に出る人も居ます。私自身反省すべきケースもありました。反省して欲しいケースもありました。

 今回は折角採用に協力してくれた貴重な非人事、特にITエンジニアを面接やカジュアル面談に引き込む際の注意事項を、アンチパターンを交えながらお話します。

対人コミュニケーションが苦痛でない人を選ぶ

 基本のキです。技術トークでアピールするにしても、技術判断させるにしても、人と話すことが苦痛な人を選択してはなりません。候補者からしてもその辛さは感じるものです。TwitterやSlackで積極的に話している人であっても、それは面接で求める対人コミュニケーション力ではありません。

退職を考えていない人を選ぶ

 退職が頭を過ぎっているときに候補者から「〇〇さんはどうしてこの会社を選んだんですか?」と質問されてしまうと、訴求できるはずもなければ、そのまま面接官退職の後押しになります。上長は定期的に1on1を行い、上長から面接に立てて良いか、継続して依頼してよいかを確認する必要があります。私の場合、エンゲージメントが下がっていることを察知したら、面談設定後でも極力交代調整を依頼していました。

面接練習/面接官研修

 必須です。

 何を聞いて良いのか・質問で回答して良いのか分からないのが普通のエンジニアです。手掛けている業務にしても、プレスリリース前の新規事業だったり、情報統制の手前、言ってよくないものもあります。この序盤で躓くと面接官を引き受けた人達の心象がよくありません。

 面接官マナーについてもインプットが必要です。こちらについては近日中に別途お話する機会がありますのでそちらに譲ります。オフライン面接だけでなく、オンラインでのマナーもインプットするべきです。

 昨今のTwitterではマナーというと揶揄されがちですが、候補者を不快な思いにさせないレベルのマナーは必要です。先立ってずっと髪をいじっている面接官が出てきたことがありますが、逆の立場だったら人事面接で落ちます。

 将来の自社の顧客になる可能性も踏まえ、気持ちよく終えるテクニックや言い回し、その前提となる心構えは浸透させるべきです。神とか言っちゃうのは論外です。人の人生を遊ぶような面接官は、自社のレピュテーションリスクを避けるためにも採用現場から外すべきです。

技術より事業、ヒトよりもコト

 何でフックするかというのは以前もコンテンツにしましたが、重要な問題です。特に指摘しないままにしておくと、面接に立った本人が自身の技術力披露に終始するケースがあります。仮に候補者が「面接官さん凄い!」となった場合、2パターンの展開が考えられます。

 1つは下記コンテンツで言うところの「ヒトでフックする」ことができた場合です。これはつまりその面接官が辞めたらその候補者も辞めます。ITベンチャーでよくあるCTOが辞めたあとにハーメルンの笛吹き男と見紛うほどに採用した社員・部下を抜いていくケースがありますが、あれがワーストケースとなります。あなたのために採用したんじゃないんですが、という気持ちになれます。

 2つ目は入社後、もしくは新卒の場合はインターン中に「思ったより大したことない」「他社の方が凄い」と思われた場合です。やはりその候補者は離職したり辞退したりします。

 これらを防ぐためには下記のような対策が必要です。

・全社で基本となるシナリオを用意する
・自社のウィークポイントを認め、大きく見せすぎない
・単一のヒトでフックするのではなく、グループや事業の魅力に寄せていく


面談/面接回数

 多すぎないか、偏らないかに注意を払う必要があります。頼みやすい人に集中すると疲弊が始まります。本業にも影響するため、週の上限面接数を設定するのも良いでしょう。

面談/面接の時間帯

 これはかなり重要です。候補者の予定ありきで進めることが多いため、負担になりやすいポイントです。

 作業時間の真ん中にドンと設定されると「集中力が切れる」と苦情になりやすいです。集中力が切れている時間帯を本人と話しながら決めるのがおすすめです。

 業務時間外の面接は最重要課題です。一般的な中途の候補者は就業後の19時以降を希望します。学生の場合でもインターン都合、授業都合で稀に業務時間外になることがあります。これに対してコアタイムを設けているフレックス制、あるいはフルフレックスの場合が実に都合が悪い。もし「フレックスなので面接に合わせて勤務します」と行ってくれる柔軟性の高い面接官エンジニアが居たら、ブラックサンダー持参で参拝したほうが良いです。普通は無茶苦茶苦情を言われます。辛い。個人的には面接を入れて良い日時をカレンダーに入れ、その範囲で人事に調整して貰っていましたが、悪くない方法でした。

 併せてジャッジラインを人事・面接官同士で揃えたり、次の面接官に繋げる際の連携をしたりすることも必要です。時間を割いて会ったものの「どうしてこの人を通したの?」となると信頼関係を揺るがします。

 時間が来ても候補者が現れないビデオ面接ってトップ画みたいになりますよね。ドタキャンもストレスを産みます。来ない場合の連絡体制・何分は待つ・ドタキャンn回した人は専攻から外す・人事で再度受け取るなどの内部工夫が必要です。

 そういえば緊急事態宣言以後、日中のビデオ面接が増えましたが、きっとお昼休みや有給を駆使されているんですよね!

ノウハウの共有/内定承諾を称える文化の形成

 自社の何が良かったのか、どういう点が響いたのかをポジティブに共有する文化を作っていきましょう。内定承諾報告と共に投稿できるSlackチャンネルなど良いです。スタンプやコメントで称える空気とセットにできると良いですね。

採用活動の承認と評価への組み込み

 ITエンジニアが採用活動に関わるということは、キャリアの上で非常にプラスになることの一つだと思います。チームビルディングの第一歩ですし、自身の関わっている活動が何物かを理解し、その魅力を語って候補者の気持ちを動かすという活動は視座を上げるためにも有用です。しかし、ここに至るには経営層や上長の当座の承認と評価が必要です。

 まずは採用活動に参加することを上長が承認することです。業務を犠牲にしていると捉えている上長がいる場合は、協力体制などできるはずがありません。良い採用をしたいのであれば投資として部下の時間を割くべきですし、割きたくないのであればSESでも業務委託でも受託でも良いでしょう。採用はゴールではありません。過程です。

 その上で何かしらの評価を残さなければただのボランティアです。ボランティアが通用するのは面接官になって1ヶ月くらいのものではないでしょうか。評価の仕方にもよりますが、何かしら面接官としての功績を記載し、上長が認めるのが良いでしょう。

 全く別のインセンティブという手段もありますが、何を褒めるのかは注意が必要です。最近NPSも話題ですが、評価を上げるために適当な耳障りの良い面接をする人も出てきます。

 採用は入社がゴールではありません。定着からの活躍がゴールです。ややロングタームではありますが、採用実績を評価するのであれば入社後半年〜1年経過してからの定着率や、当人の活躍を見てすることが現実的なのではと考えます。

面接官のメンタリング

 あまり話題になりませんが重要項目です。面接の質問には強い言霊があります。候補者だけでなく面接官自身に跳ね返ってきた時、非常に危ういです。注意しましょう。

まとめ

 現職のLIGですが、語源はLife Is Goodの頭文字だそうです。Life Is Goodってなんだろうなと1ヶ月働いてみたのですが、私なりに「機嫌よく働く」と解釈しました。お仕事なので大変なことも大なり小なりありますが(8年ぶりに英語で仕事してます)、それでも互いがフォローしながら機嫌よく働けるような環境であれば、自然と合流したくなるものです。

 今回お話した人事と非人事(特にエンジニア)が共に作る採用活動にしても、お互いに気持ちよく仕事を依頼し、ノウハウも気持ちよくシェアし、感じの良い面接へと繋げることによって新入社員と共により機嫌よく働ける職場に繋がるのではないでしょうか。


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