見出し画像

【KLDマガジン】補助金依存の再開発は何が問題なのか!?~元再開発コンサルの禊レポ~

※この記事の収益はKAWASAKI LOCAL DOORの運営資金に充てさせていただきます。

先日、元再開発コンサルの宮本氏を講師とし、「禊☆Night」というオンラインイベントで過去関わってこられた再開発の赤裸々な現実を語っていただきました。→4/18まで閲覧可能な見逃し配信

画像1

(あまりの赤裸々さに最後はみんなで手を合わせ、今後の宮本氏のご多幸を祈願しておわりました。)

そして上記「ハムハウス」はそんな宮本氏の新たな挑戦です。ぜひご賛同の方はクラファンにご協力ください!

さて詳細な内容は上記見逃し配信か宮本氏に講演オファーをぜひにということで、この記事の無料部分ではいくつかの一般的な論点をダイジェストしつつ、有料部分では個人的な体験や見解も書いていきます。投げ銭してね☆

各地で生み出される「まちをだめにする」再開発

再開発=まちになにかすごい良いことが起こる!という幻想もまだまだ覚めやらぬ昨今。ハコを作ればそれでいい、という発想は人口増加時代のセオリーで止まってしまっている幻想です。まず、これからは絶対的に人口が減るのです。以下は川崎市の人口推計です。

川崎市人口推計

まだ人口が増えている川崎市ですら、人口減少のスタートは推計上2030年頃と間近になっています。(図は川崎市総合計画より抜粋)

さて人口が増え経済もガンガン伸びている時代は何事もどんどん増やせばよいとなりますが、もはやそうはいきません。費用対効果の高い分野に投資をしていかないと、地域経済や自治体財政を沈没させることになってしまいます。

そして全国には、「なんとか再開発で一発逆転だ!」と力んでそのまま莫大な負債となった再開発がいくつも既に存在します。例えばその1つが青森市のアウガの事例です。

 華やかな表舞台に反して、実際には開業当初から大幅な赤字だったのだ。開業初年の2001年の売上高は計画を大幅に下回り約23億円であり、約2億5000万円の赤字だった。2008年になると第三セクター・青森駅前再開発ビルが巨額の債務を抱え、経営難に陥っていることが明らかになる。

凄まじい赤字を計上し市長2人の首を飛ばしただけではなく、青森市職員給与の削減にまで至っています。(正直、福祉分野の職員とかさすがに気の毒としか・・・)

その他「アルネ津山」「ココリ」など類似事例の枚挙には事足りません。

止まらない物件供給過多問題、共同住宅でクロージングの合意形成は可能か?

最近も商業施設とタワーマンションを複合化した再開発が盛んに行われていますね。特に地方部などで商業施設部分のテナントがスカスカであっても、タワマンの部分は順調に売れている様子も見られるようです。

旺盛なマンション需要でもありますが、国交省のデータを見ると将来の深刻な課題も見えてきます。次の資料をいくつか抜粋してみます。

まずマンションストック件数ですが、順調に上昇を続けています。

国交省住宅ストック数

一方、今後築40年~50年のマンションがどんどん増えてくると予想されています。20年後には404.6万戸が築40年以上になる計算です。

国交省建築時期別ストック数

一方、マンションの建替えは年間10件程度しか行われていません。ありえない仮定ですが、この10件が全て1000戸を有していたとしても、1万戸にしか届きません。10年でも10万戸。今後の404万戸がどうにかなる気がしません。

国交省マンション建替件数

このことからは、今現在の空き家問題が一軒家だけでなく、近い将来マンションにも波及していく公算が高いということが分かります。みんな突然に建替決議をしはじめるとは考えにくいですもんね。

さらに戸数の多いマンションは将来相続などで権利関係が複雑化することが予想されますし、住民に年金生活が主となる高齢者が中心となれば解体及び解体費捻出の合意形成も困難となるでしょう。

要は、最後は多額の税金でケツを拭かざるを得ない可能性が20年先には十分に見えてきているということです。再開発の場合、作るのにも補助金として多額の税金が、そして壊すのにももしかするとかかってくると。将来世代へのツケをちゃんと見積もれているのかどうか、です。

再開発の費用対効果は何か?国と都市で持つべき視点の違い

こういった状況を踏まえると、再開発の費用対効果をいかにしてみるべきなのでしょうか?例えば国交省は補助金に対する民間投資誘発効果や経済波及効果などを、予算の根拠の一つに掲げていたりもします。

それも確かにそうなのですが、あくまでも国レベルの目線だから成り立つ話です。国内企業に支出したお金は国内に回るわけですから、諸説ありつつも、財政出動は景気対策として全く無意味とは言えません。

しかし、都市の目線からしたらそれは成り立ちません。再開発で受注する企業、商業施設に入るテナントは域内企業ばかりといきますでしょうか?おそらく大部分が東京に本社がある大企業に流れていってしまいます

また、再開発で出来上がったマンションも投資用であったりと住民がいるとは限らず、また市内からの転居など人口増(税収増)に寄与しない場合もあるわけです。そして人が増えたとしても公共サービスの使用量も増えますから、税収が増えればそれでいいとも単純には言い切れません

再開発の結果は都市の目線からはややもすると、多額の市費を投入したけれど、どこにでも見られるありきたりな景観をつくり、域外企業ばかり活発にし、税収はさほど上がらず、また公共サービスへの負担が増える・・・というような結果をもたらす恐れすらある、ということです。

「大きくつくるしか解がない」ゼネコン・ディベロッパー側の苦悩

ではなぜそんな再開発をやってしまうんだということになりますが、民間側からするとやむを得ない面があります。よりコンパクトで持続可能性や地域経済循環に優れた開発の形態があったとしても、現実的にその手法を選択することは難しいのです。

現行制度の中では大きく作った方が有利であり、容積率・補助金・公共床という三種の神器を最大化することにより(つまり建物を大きく作ることで)事業収支を確保していく方に持っていかざるを得ないのです。

さらに言えば、持続可能性や地域経済循環についてビジョンを語るよりは、目先の事業完了時の最大効率化(まちの見た目をきれいに、地価をあげる、マンションを売りぬく)の方が、ステークホルダーの関心が強いとも言えるのではないでしょうか。

ここから先は

1,911字 / 2画像

¥ 500

この記事が参加している募集

イベントレポ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?