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11 - 別の星・2

「真由さんは。。。別の過去生で、人柱として亡くなっています。
チョコちゃんはもう一度、別の過去生で真由さんと一緒にいたことがあるそうです。」


先ほどの宇宙船の話からまたかけ離れた話題に、思わず「ん??」とみんなで顔を見合わせてしまいました。


「何処だろう。。。地球に似た星の。。。住んでいた村で、大きな洪水に何度も見舞われたことがあるそうです。そこの神様のような存在に、『お嫁さんになる人を差し出せ!』と言われた時、真由さんが『私が行きます』と言った途端、洪水が止んだそうです。」


「真由さんは村のために命を捧げてくれた人。チョコちゃんはその時、『人柱を差し出すくらいなら、村人全員で死んだ方がいい』って止めたそうです。でも、結局そうはならなかった。みんなで、泣きながら、でも自分じゃなくてよかったって心の中で思いながら、真由さんを見送ったんですって。」


「そして。。。その見送った村人の中に。。。なんと、メグさんと私(千華さん)も居たそうです!」


思わぬ展開に、弾けたように私たちは笑い出してしまいました。一体、誰がそんな奇妙な話を信じられるでしょうか?


「私たち、同じ村人だったの?」


素っ頓狂な声を上げて、メグが笑いを堪えながら息も絶え絶えに言いました。


するとチョコがウォウウゥ〜ッと千華さんにまた話しかけました。


「その時、真由さんがどれだけ愛が深くて、人の為に自分を犠牲にするのも厭わない人だったか、というのを、みんなわかってなさすぎた!って、チョコちゃんがちょっと怒ってます。」


確かに、チョコがちょっと上目遣いでウゥ〜ッと唸っていました。その様子がますますおかしくて、私たちは暫くお腹を押さえて笑い転げていました。


「チョコが!チョコが怒ってる!」


その展開が面白くて、まるでよくできたお芝居を見ているようでした。
するとチョコからの言葉を読み解いた千華さんが、一気に言葉を続けました。


「真由さんには、今生、とにかく自分の幸せを追求して生きて欲しい。使命は幸せでありながら達成できるもの。自分の幸せだけを考えて生きて。母船のために、星の仲間のためにやろう、なんて、もうしなくていい。真由さんが純粋に楽しむだけでいい。何かのために、というのを全部外して。お母さんのために、お父さんのために、そういうのももう、全部要らないから。

もう、真由さんの魂に犠牲を強いないで!」


そう言われて私はとても嬉しくて、でもちょっと困ってしまって、半分笑って半分泣いていました。というのも、ここ数年、認知症を発症した母と、元気にまだ仕事を続けながら母を支える父のことが、いつも気にかかっていました。高齢の二人の様子を伺うために、1年に何度も東京とNYを往復する生活を続けていた私は、そのチョコの言葉に驚きを隠せませんでした。


(こんな小さな可愛らしい生き物が、なんてことを言うのだろう。この子は一体何を知っているのだろう。。。?)


私のその思いを見通したかのように、千華さんが言いました。


「ね。このワンちゃんは。。。この方は一体、なんなんでしょう。この部屋の、誰よりも霊性が高い、高尚な存在です。」


すると今度は、メグに近づいたチョコが、またウォウウォウと声を上げました。つゆみおばちゃんがすぐに気づいて、


「メグちゃんにも話しかけてるわよ。きっと何かあるのじゃないかしら」
と言いました。みんなが期待をして千華さんを振り返ると、


「ああ、チョコちゃんはメグさんともご縁があるのね。
あと、メグさんと真由さん、今生で一緒にやることがあるみたいです。」


と教えてくれました。具体的なことはわからないけれど、二人でできることがある、というのを聞いて、メグも私も特別なご褒美をもらえたかのように、背筋をピンと伸ばして目を見合わせました。


「なんだろう!嬉しいなあ」
思わずメグが声を上げました。

そしてまた千華さんに歩み寄って、ウォフウォフと語りかけているチョコの言葉を、丁寧にすくい上げるように、千華さんは言いました


「チョコちゃんが。。。自分はこんな風に犬だから、真由さんを直接助けることができない。それが一番悔しい、って言っています。チョコちゃんは、この過去生では男の子で、その時真由さんに想いを寄せていたみたいです。真由さんのことが、大好きだったんですね。」


そのチョコの想いを聞いた時、また私の目から涙が溢れました。


「魂レベルで共鳴しあってるんですね。チョコちゃんは、とても賢い。
犬じゃない。本人も犬のつもりはないんです。でも体は犬なのはわかっていて、そこに葛藤がある。」


それを聞いた時、私はなんて残酷なんだろうと思いました。全てを覚えていて、全てをわかっていても、伝えることも表現することも、新たに行動を起こすこともできない自分。過去も未来も見渡せるのに、自由の効かない自分。


でもそれは、チョコの、いくつもある前世の一つで行ったことにより、償わなければならない、そして今生犬として生きることで学ばなくてはならない、彼女が選択した道なのだと、千華さんが教えてくれました。また、犬として生きることで、無償の愛を学ぶことも今生の彼女のお役目なのだということも。だからこそ、今生ではその愛を学べるところ・・・つゆみおばちゃんの元にやってくることを、チョコ自身が選んだのだと。


「こうやってチョコちゃんがチョコちゃんでいられるのは、つゆみさんがいるからです。犬のくせに!という扱いをせず、ひたすらに愛情を注いで、そのままのチョコちゃんでいさせてくれる。犬としてとても幸せな一生を送ることができている。それがチョコちゃんにとってなによりのことなんですよ。」


それを聞いて、つゆみおばちゃんも声をくぐもらせながら言いました。
「とんでもない。。。こちらこそ、ありがとう」


するとそれに応えるように、チョコがウォウと一声鳴きました。


「『こちらこそ!これからもどうぞよろしく、大好きですよ、お母さん!』って言っていますよ、チョコちゃん!」


つづく。

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