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デビル・フレンド14 性質

キュミルは1人を階段から突き落とし、もう1人の肋骨を、3本折る重傷を負わせたとの事だ。

詳しい事は調査中としながらも揶揄われたのが発端で相手を階段から突き落とし、それを注意した聖職員に腹を立て、攻撃してきたと言うのだ。

その後も、彼女を取り押さえようとした聖職員に噛み付き抵抗を続けたそうだ。

さすがに手に負えないと治安維持部隊に出動を要請。

隊員が彼女を取り囲んだ所で、両手をあげ降参して大人しくなったと言う事だ。

当然キュミルにはこれから何度も取り調べが入るだろうが、既に悪魔として申請を済ませて居るのと、教会側が身元の保証をしている為、逮捕勾留とまではならなかった。

当面の間は、外出規制がかかり教会の敷地外には一切出れなくなる。

何より、この暴力事件は “最後の審判” に大きな影響を与えるだろう。


私は既にキュミルに悪魔祓いを強制するべきで無いかと考えてた。

これは改心するまで永遠と神の言葉を聴かせ続け、悪魔を追い出すと言うものだ。


人が悪魔になる原因は大まかに3つに分けられる。

一つは、呪われた物を食べて悪魔と化す者。
二つ目は、魔術や儀式を用いて自ら悪魔と契約する者。
最後に、呪いを受けた者から生まれる子供達だ。

特に、親が悪魔であった場合、子供は生まれつきその呪いを受け継ぐ。
そうした場合、悪魔祓いを行っても完全には完治しない。

儀式により悪魔の力を弱めることは可能だが、根本的な治癒は不可能だ。

生ある限り、永遠にこの儀式を受け続けることで苦痛を味わうことになる。

神の卸言葉は、悪魔には酷い苦痛をもたらす。
その苦痛を悪魔に呪われた人間も感じるので、精神的にも肉体的にも酷く疲弊する。

その苦しみに耐えることができず、多くの人々は悪魔として魔導を生きる選択をする。


キュミルの強い悪魔的エネルギーを思うと、恐らく彼女は産まれながらの悪魔だ。

私はシスター・アンジェに、現段階で集められた全てのキュミルに関する情報を伝え、調査がまだ進行中であることを告げた。

また、キュミルがおそらく先天的な悪魔であるという私の推測も彼女に伝えた。

シスター・アンジェは「そうですか」と、一抹の寂しさを声に込めてつぶやいた。


私は悪魔を憎みエクソシストとなった。だがその道を歩む中で、教会で神の説く愛を学んだ。

私の心には、悪魔への深い憎しみと、悪魔の呪いに苦しむ人々への深い慈悲、そしてさらには悪魔自身に対する一縷の同情さえ宿っていた。

主は如何なる罪も許し、すべての存在を愛する。

神が悪魔に対して何を感じているのだろうかと考えると、私の中の悪魔への憎悪が、微かに揺らぐ感覚がした。


私はキュミルが待つ教室へ戻った。

そして、出来る限り優しく「一緒に帰ろう」と声を掛けて彼女の手を引いた。

その手に力は無く、ただただ弱々しかった。

こんな彼女が暴力事件を起こしたなどと、とても信じられない程だった。

これも、私が知る彼女の一部の顔に過ぎない事を良く理解して居たので、もっと彼女を知る必要があると感じた。

それが、私の任務で有り役割だからだ。

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