さよならを教える♯6 ∴ 別れという贈り物
私は彼に伝えた。「ショウイチさんは僕の話なんて何も聞いてなかった。ただ自分が話したいことを一方的に喋ってるだけ。あんなのは会話じゃないよ」と。すると彼はすかさず否定した。「俺はヤヨイの話をちゃんと聞いていたよ」と、過去を懐かしむように、何年も前に名古屋へ遊びに行ったことや、知人たちと集まって食事をしたことなどを語り始めた。
言われてみれば思い出せることもあったが、私の中ではそれらは遠い過去の出来事で、彼の印象はただ「嫌な人間」だということだけが全ての記憶を覆い尽くして居た。