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デビル・フレンド15 不可逆

教育施設を出て、住居が隣接されてる小さな教会に帰る途中で、食事の準備をしてなかった事に気付いた。

門を出たすぐ近くに良く行くパン屋と、そこに併設されてる喫茶店が有る。

この喫茶店は食事メニューが豊富で、熟練した職人が作る洋食はどれも美味。私はキュミルと一緒にここで夕食をとることに決めた。

キュミルはエビフライ定食を選び、私はオムライスを注文した。

キュミルは、酷く落ち込んでいた。

食事の最中も、ため息の様な声になって聞き取れない、やるせ無さを発するだけで、普段の元気な笑顔は影を潜めていた。

それでも彼女が食事を口に運ぶ度に、私は少しばかり安心した様な気がした。

「美味しい?」と私が問いかけると、キュミルはうつむきながらも、「うん」と小さく頷いた。

私はこれからも一緒にいて、彼女を見守り支え続ける事になる。

彼女との別れ方は既に決まってる。

彼女が悪魔と決別して人として生きる姿を祝福し見送るか、人を害する悪魔として、命の終わりを見届けるかのどちらかだ。

それがエクソシストに課せられた使命だからだ。


食事を終えた後に、2人で明日以降に食べるパンを何個か買い帰路についた。

事件の事は、何度も聞かれて疲れてるだろうから何も聞かなかった。

教会に戻ると私達はすぐにお互いの部屋に戻った。


私はエクソシストの為に用意された専用の聖書を開いた。

この聖書には悪魔検証についての項目が、ま纏められており“Devil’s Revelation Ritual”(悪魔の啓示の儀式)の手順を再確認した。



彼女が酷く怯え苦しむ姿を想像しただけで心が痛かった。

悪魔祓いで、彼女を救いたいと言う気持ちと、何処か諦めの様な思いが交互に何度も、私の中で浮かんでは消えて行った。


寝る時間が近づき私は電気を消した。
真っ暗な闇に包まれ、窓にかけられたカーテンから僅かに月の光が透けて居た

完全な静寂が部屋を満たし、一日の終わりを静かに告げた。


深夜に喉の渇きを覚え目が覚めた。

手元のテーブルに置いてる水差しに手を伸ばすと空である事に気付いた。

私はベッドから起き上がり、部屋の扉をそっと開けた。

足音を立てぬよう、階段を降りてキッチンへと向かった。そっと水差しに水を注ぎ、再び私の部屋へ戻る道すがら、かすかにキュミルの部屋から、うめき声が聞こえた気がした。

耳に感じた、その声にすら為っていない悲しげな音は、何とも言えぬ寂しさが滲んでいた。

その声を聞いた瞬間、私の心は何とも言えない悲しみと寂しさで一杯になった。

彼女が何を感じ、何を思っているのか私にはわからなかったが、それが私を更に悲しくさせた。

自室に戻りコップに水を注ぐと、勢い余って水がコップから溢れ出てしまった。

そんなに多くは溢して無いものの、小さな丸いテーブルの外にゆっくりと水が延びていき床に落ちた。

その水を拭き取るのが面倒に感じて、私は水を飲んで、すぐ横になった。

目を閉じるとポタポタと水が垂れる音が聞こえて、どんどん大きくなる様にはっきりと耳に飛び込んでくる。

それが、堪らなく煩わしく感じたが眠気には勝てず、不快感を感じたままゆっくりと眠りについた。


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